ジャンル:千銃士 お題:今日のゲストは本 制限時間:1時間 読者:32 人 文字数:1053字 お気に入り:0人

異国情緒の不整合 ※未完

 買い出しの途中、ふと立ち寄った骨董屋で妙なものを見つけた。店先に並ぶ種々雑多なガラクタの傍にぽつりと置かれた紐で束ねられただけの古い紙束。どこかで見たような異国の言葉で綴られたそれに、僕はひどく興味をそそられていた。
 黒いインクで書かれた象形めいた文字は音律も文法範疇もまるで理解が及ばない。けれどそのインクの独特の深い色、有機的な軌道に何かを感じた。
「……ねえキセル、これ読める?」
 僕の隣で壷をのぞき込むキセルにページを見せる。すると、二、三度の瞬きを経て反応があった。
「うん……これ、俳諧の本だね」
「ハイカイ?」
「風景とか気持ちとかそういうのを決まったリズムで表現する風流な遊びで……昔の人は良くやったんだよ。ふふ、懐かしいなあ」
 手にしたひとくくりの紙をしげしげと眺めては息を吐き、めくってはまた微笑む。キセルがこんな風に笑う姿なんてもしかしたら初めて見るかもしれない。
 聞きなれない言葉、見慣れないインクの連なり。それの良さを知りたくて、ほんの少しだけ背伸びをする。そっと紙をめくるキセルの手元を覗き込むけど、僕にはちっとも分からない。
「……それ、面白いの?」
 まるで無教養な僕の声に、キセルは軽く首肯する。ふと、読んでいたページを少しさかのぼり、ちらとこちらに目配せをする。
『―――あふことの 絶えてしなくば なかなかに 人をも身をも うらみざらまし』
「え?」
 キセルが指差すページの一節を諳んじた、そう理解するまでには少しだけ時間がかかった。まるで意味すらとらえられない音の流れの中、精々僕には恨みという言葉ぐらいしか聞き取れなかった。その呪文のような、唄のような言葉がハイカイだとでもいうのだろうか。
「……お前が憎い、ってこと?」
「え、えと……そういう事じゃなくって」
 言葉が分かったところでその意味を理解できなくては元も子もなかったんだ。ただ、キセルの愛する"風情"を理解できないのが悔しかった。キセルたち日本人の持つ風流とやらがなんだか憎らしくなってきた。
「……もう帰んない?」
「えと、ごめんね……面白くなかったよね」
 本を元あった場所に戻し、僕たちは冷やかしを諫めるような店主の目から逃げるように店先を後にした。
 でも、あのキセルの唄うような詠み方が不思議と耳に心地よかったのは確かだった。
「帰ったら、その……意味、教えてあげるね?」




「キセルも詠めるの?そのハイカイってやつ」
「え、た、多分……でも、あんまり上手じゃないけど」

同じジャンルの似た条件の即興二次小説


ユーザーアイコン
作者:秋月蓮華 ジャンル:千銃士 お題:今年のローン 制限時間:1時間 読者:44 人 文字数:885字 お気に入り:0人
【最優先順位】「ローンが組めたとしても……」僕、エセンが執務室にマスターの様子を見に来ると彼女は執務机に座って考え込んでいた。レジスタンス側の希望であり、僕達貴 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:ちち@銃 ジャンル:千銃士 お題:禁断の脱毛 制限時間:15分 読者:78 人 文字数:571字 お気に入り:0人
※ベスシャル? 事後【小さな事】 毛を抜くのが楽しいことが、度々ある。ただし、自分の毛では無いところがミソだ。 それは、大体疲れている時。疲れている時の中でも、 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:しげち@水匙待機 ジャンル:千銃士 お題:俺と同性愛 制限時間:2時間 読者:74 人 文字数:1954字 お気に入り:0人
創作マスターいます。マルガリータ→レオポルト。親愛エピソードネタバレあり。「マスター、ちょっといい?」 衛生室で脱脂綿を作っていると、ひょこりと金髪の青年がが顔 〈続きを読む〉

過去分詞の即興 二次小説


ユーザーアイコン
作者:過去分詞 ジャンル:千銃士 お題:とてつもないむきだし 制限時間:30分 読者:33 人 文字数:1066字 お気に入り:0人
目を覚まし、ベッドに放られたワイシャツを羽織って冷たい床に足を付く度、ここがどこなのかを再確認する。かつて俺がいたレジスタンスの宿舎とは違う、暗澹としたひどく 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:過去分詞 ジャンル:千銃士 お題:今日のゲストは本 制限時間:1時間 読者:32 人 文字数:1053字 お気に入り:0人
買い出しの途中、ふと立ち寄った骨董屋で妙なものを見つけた。店先に並ぶ種々雑多なガラクタの傍にぽつりと置かれた紐で束ねられただけの古い紙束。どこかで見たような異 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:過去分詞 ジャンル:千銃士 お題:最後の慰め 制限時間:30分 読者:34 人 文字数:970字 お気に入り:0人
戦闘の最中、視界の端で被弾したキセルが力なく膝を折る姿を見た。あたりに散らばる黒いプラスチック片とおびただしい量の血痕。痛みとは違う何かに呻く声。僕は近くにい 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:過去分詞 ジャンル:千銃士 お題:夏の彼氏 制限時間:15分 読者:34 人 文字数:582字 お気に入り:0人
古い宿舎は風通しはよくとも設備は悪い。基地付近の異常気象によって引き起こされる暑さにキセルと僕は窓の下の陰を奪い合うように、譲り合うように寄り添う。 手持無沙 〈続きを読む〉