ジャンル:うたわれるもの お題:突然のブランド品 制限時間:15分 読者:30 人 文字数:961字 お気に入り:0人

ハクの日オシュハク

「ハク殿、これを」
 そう言ってオシュトルが手渡してきたものは妙に洒落た時計である。時計なんて別にスマホがあればいいだろうと思うのだが、社会人たるもの、時計がなければ格好がつかないという固定概念みたいなものがあるのだろう。——そういうわけでハクは時計を持っていなかった。くれるならもらう。自分のためにと用意されたものならばもらって損はない。ハクは無言で頷いて渡された時計を手に取った。
 革のベルトは黒く、文字盤は算用数字で書かれている。しかし字体が縦に長く、ところどころに宝石らしき石が散りばめられていた。ベルトの裏にブランド名が書かれている。それを目にした瞬間、ハクは硬直した。
「なぁオシュトル」
「如何した」
「値段は聞かんぞ。……どうして自分にこれを?」
 ハクの言葉にオシュトルはふむと顎を指先で撫ぜて口元を緩ませる。
「今日がハク殿の日ゆえ、何か贈り物をと思ってな」
「自分の日ぃ?」
 なんだそりゃ。ハクはそうぼやいて今日の日付を思い出す。
 八月九日。それが何故ハクに繋がるというのか。まさか単純に語呂合わせでハクだと読めるからというわけではあるまいな、とハクはオシュトルをじとりと睨んだ。睨まれた当のオシュトルは素知らぬ顔で涼しい表情を浮かべている。オシュトルのことだ、きっとこの単純な考えを持っているに違いない。ハクはそう確信を得た。根拠はない。だが、オシュトルとの付き合いの中でハクは、オシュトルは案外単細胞で、脳筋で、単純な思考回路を持っていることを知っている。それらがハクにそう思わせたのだ。
「お前がくれるってんならありがたくもらうけどさ、そうほいほいと人に物をやるもんじゃないぞ」
 特に自分みたいな奴には。ハクはそう言ってオシュトルからもらった時計を左の手首に巻きつけた。その様子を、オシュトルはじっと見つめている。何をするでもなく、何を言うでもなく。ただハクの動作の一つ一つを見逃すまいとじっとハクを見つめている。
「どうよ」
 巻き終えたハクにオシュトルは綺麗な笑みを向けた。ハクがまた新たにオシュトルが渡した物を身につけた。それがオシュトルには嬉しくて快感だった。オシュトルは艶やかな笑みを浮かべると恍惚な表情を受かべて呟いた。
「あぁ、よく似合っている」


ハクの日おめでとう。

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