ジャンル:カルジュナ お題:やば、宇宙 制限時間:15分 読者:201 人 文字数:1427字 お気に入り:0人

【カルジュナ】バンドマンx一般人

ゲリラライブも大盛況のうちに終了。メンバーのテンションも(主にアストルフォが)上がり調子。マネージャーが頭を抱えていても気にしない。何故なら皆、インディーズの苦しみをも自分たちで乗り越えてきたのだから。

「後悔しないわ、闇夜のオール、振り上げ掲げて!夜道に、お気をつけあそばせ!」

アンコールで即興的に歌いながらアストルフォが拳を突き上げる。キーボード担当のジークフリートが珍しく楽しそうに笑うもので、ギャラリーから黄色い悲鳴が上がった。
虹色に光るライトの下で飛び跳ねるのはなにも肉体だけではない。煌く瞳、湧き上がる心、飛び交う未来への希望。そういう、どうしようもない何かを振り上げて歌っている限り、自分たちは無敵なのだ。それが、アストルフォがカルナに明るく言い放った、結成当初からの信条だった。



「いや~、大成功だったね~!」
「よく言うぜ、あそこでトチってたの、気付いてたからな」
「王様、ひどーい!終わり良ければ、すべてよし!だよ!」
「こらこら暴れるな」

移動用に自分たちで所有しているミニバンに詰め込まれながら帰路を急ぐ。

「カルナ卿も、ご機嫌だな」
「分かるか」
「わっかる~!」

シャルルマーニュとアストルフォが後部座席でコーラスした。ゲリラライブが終わった直後、ギャラリーのファンたちが口々に叫んだのだ。「カルナ、がんばれ!」「お幸せに!」「なにも悪いことなんかしてないぞー!」と。この国の同性カップルは確かに厳しい状況に立たされることも多い。しかし、カルナはそうして大々的に公表することで世間を味方につけたのだ。
思ったよりもうまくいった、とカルナは胸中で少しばかり安堵する。
自分の夢、とまではいかないが、やはりどこかで音楽を楽しむ気持ちがある。それと同時に、恋人を、アルジュナを手放したくないと心が叫ぶ。そのどちらをも選ぶことはできない。取捨選択するにはカルナは若いのだ。

「あっ!」

ミニバンは運転手をジークフリートとして進んでいた。カルナの、アルジュナと同棲中のマンションの前に来た瞬間、アストルフォが声をあげた。

「アルジュナ卿だ!」

マンションの入り口で、夜も遅いというのに。
街灯と、エントランスから零れる光がアルジュナの肌を浮かび上がらせている。長い手足のシルエットと、僅かな光でも端正だと分かる顔立ち。
カルナはジークフリートが横づけしてくれた車から転がるように飛び出し、アルジュナの元へと駆け寄った。

「アルジュナ!」
「カルナ」

アルジュナは、いわゆる一般人だ。明日は仕事があるというのに、こうしてカルナを待っていてくれた。カルナはそれに嬉しさを覚え、思わず両腕を広げて抱き締めようとする。が、カルナに与えられたのは恋人との甘いひと時ではなかった。

「こ、の、馬鹿がァアッ!!!」
「「「!!??」」」

思い切り振りかぶったアルジュナの拳がカルナの鳩尾を綺麗に捉え、埋め込まれる。
思わず車の中のメンバーも固まった。蹲るカルナの前で仁王立ちをしたアルジュナは、腕を組んで宣誓する。

「実家に、帰らせていただきます!!!」

言うが早いか隠れていたキャリーケースを引っ張り出し、偶然通りがかったタクシーを拾い、颯爽と去っていったアルジュナ。
カルナが呆然とそれを見送り、しばらくしてから車の中のメンバーを振り向く。
メンバーも、これまたどうしたことかと顔を見合わせたのだった。

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