ジャンル:魔法少女育成計画 お題:最弱の夕日 必須要素:暗黒の瞳 制限時間:30分 読者:129 人 文字数:1524字 お気に入り:0人
[削除]

狂い咲きのあと

 コートを一度撫で、ベルトの色を差し替えた。魔法で作る衣装は、美々の気分に合わせて細部を変更することができる。些細な変化ではあったが多少気が紛れた。しかし――服の内側で未だ鈍痛を訴えている大量の生傷を忘れるには、この程度の慰めではどうしようもない。

 首を巡らせ、天井と床がそれぞれ崩落したフロアを見渡した。戦闘は既に終わっている。過剰量のアドレナリン(それと、少々のカンナビノイド)で明滅していた視界は、とうの昔に正常な色彩を取り戻している。
 一息ついてからこうしてこの惨状を眺めていると、こんなに散らかしてどうするんだという冷静な疑問が胸を過ぎる。いかに人気のない廃墟だからといってもこれは流石に問題になるのではないだろうか。

そんなことを考えながら、せめてこれ以上壊さないよう気を遣いながら跳躍し、床に開いた大穴に飛び込む。一階下の、元々は巨大ショッピングフロアでも収まっていたのであろう広大な空間――そこには沢山の元魔法少女達と、その中心に今も意識のある唯一の魔法少女がいた。鼻を掠める濃厚な血の匂いに息が詰まる。失敗した。着替えてからこんな血塗れの部屋に来るべきではなかった。ここを去る前にもう一度、匂いを消すために魔法を使わなければならないだろう。

 肉と脂と血の中心――最も凄惨な元戦争現場に、目当ての魔法少女を見つけ出す。向こうはとっくにこちらに気づいていたようで、まだ動く方の手をゆるゆると振られた。手を振り返す気にはなれない。腕を持ち上げるのも億劫そうな、力の無い動き。否――魔梨華自身に気の萎えはない。彼女の腱があまりに深く断ち切られたせいで、修復が追いついていないのだ。

「おー、美々か」
「一応挨拶でもしとこうかと思って。まだそんな状態なんですかあなた」
「急ぐんでしょ? ならいいよ、先帰っちゃって」

 潰れた目を見る。槍を構えた魔法少女が一人居た気がする。恐らくはそれに抉られて、魔梨華の片目はぽっかりと暗黒を覗かせていた。尖った刃物で目を潰されたとなればもう少し進んで脳を損なっていてもおかしくはないだろうが、会話が出来ているあたりその辺りは無事らしい。
 美々が一人で着替える分の時間を置いてなお、袋井魔梨華は酷い有様だった。それだけ乱暴に戦ったのだ。自分の身を護る、攻撃を躱す事など一切頭にないような猪突猛進さだった。魔梨華にしては珍しい。性格から想像するより余程普段の彼女は慎重で、無理な勝利よりもやりたいことをやって勝つことを重要視する。
――じゃあ、滅茶苦茶に傷つきながら勝つのが、今日のこいつのやりたいことだったんだろうか?

「やっぱ陽が少ないですか。全然、目もまだ治りそうにない」
「そうやね、いっそ陽が沈んじゃえば夜向きのに花を替えられるんだけど」
「あんたを嫌いなやつが、今のあんたを見たら」

 自分が少し笑っているのに気付いて、襟口を寄せて口元を隠した。だが魔梨華には表情がばれていたようだ。右半分の顔がホラー映画もかくやという状況でありながら、器用に楽しげに哄笑してみせる。

「追加のお客さんは大歓迎だ。なんなら美々が呼んできてくれたっていいんだよ」
「仕事があるって言ったでしょう。ただまあ、その辺で嫌いな魔法少女に会ったら言ってやってもいいかもしれませんね」
「なんて?」

 腕時計を見る。もうここを発たなくてはならない。ブーツの踵をかつんと鳴らし、破壊され尽くした窓へ歩み寄った。また手を振る魔梨華に小さく片手を挙げ、痛んだ喉で声を張る。実際のところ、今日は楽しかった。
「最弱状態の袋井魔梨華が居るから、殺すならぜひどうぞって」
「はは。嫌いな奴に言うのかよ、それ」

同じジャンルの似た条件の即興二次小説


ユーザーアイコン
作者:カッツェニキ ジャンル:魔法少女育成計画 お題:刹那の故郷 必須要素:変なにおい 制限時間:30分 読者:137 人 文字数:1611字 お気に入り:0人
☆スタイラー美々魔法少女はモチーフによって目には見えない部分で他者と差が出ることがある。単純な運動能力だけの話ではない。五感や、直感、そういった部分もだ。例とし 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雨七 ジャンル:魔法少女育成計画 お題:黄色い関係 必須要素:ボールペン 制限時間:30分 読者:158 人 文字数:688字 お気に入り:0人
☆スタイラー美々 スケジュール帳の上でペンを走らせる。やれ「15時にA市、魔法少女2人、ヘアスタイル」とか「18時にB市、魔法少女1人、内密に」とか、そういった 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:カッツェニキ ジャンル:魔法少女育成計画 お題:黄色い関係 制限時間:30分 読者:132 人 文字数:1018字 お気に入り:0人
☆太陽は時々、痛いくらいに黄色く光る時がある。普通に過ごしていてその痛いほどの黄色さを感じないのは、きっと、見慣れすぎて感覚が麻痺しているからなのだろう。生きて 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:エピローグと新作 ジャンル:魔法少女育成計画 お題:小説の会話 必須要素:豊胸手術 制限時間:30分 読者:100 人 文字数:1222字 お気に入り:0人
☆スタイラー美々そもそも、噛み合わないのだ。なのになぜ美々が袋井魔梨華と一緒にいるのが普通になっているのか。これがわからない。特に最近はそう思う機会が増えている 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:エピローグと新作 ジャンル:魔法少女育成計画 お題:不幸な雨 必須要素:「うー遅刻遅刻!」 制限時間:30分 読者:114 人 文字数:1688字 お気に入り:0人
☆スタイラー美々「うー遅刻遅刻!」雨の日はあまり好きじゃない。雨の日はいつもより目覚まし時計の音が小さい気がするからだ。それに、曇りや雨だと体調にも影響が出る。 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:ト・ヘン@まほいく依存症 ジャンル:魔法少女育成計画 お題:臆病な草 必須要素:スマホ 制限時間:30分 読者:754 人 文字数:1239字 お気に入り:0人
犬吠埼珠……魔法少女たまは魔法少女になるための試験が始まってもやることがわからなかった。 魔法少女になるためにはマジカルキャンディーを集めることが条件だ。そし 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:ト・ヘン@まほいく依存症 ジャンル:魔法少女育成計画 お題:今度の冬休み 制限時間:30分 読者:1402 人 文字数:1006字 お気に入り:1人
魔法少女「シャドウゲール」、本名は魚山護は人小路家に仕えるお嬢様学校の学生だった。名前の通り「主人を護れるように」と主である人小路庚江と同じ学校に通学し、同じ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:ト・ヘン@まほいく依存症 ジャンル:魔法少女育成計画 お題:ドイツ式の喪失 制限時間:30分 読者:822 人 文字数:1345字 お気に入り:0人
大量破壊が可能な魔法少女「魔王パム」。彼女が魔法の国の命令で殺してきた魔法少女は数知れない。 今、パムが一人の魔法少女を殺した。首が180度曲がっている。苦し 〈続きを読む〉

匿名さんの即興 二次小説


ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:刀剣乱舞 刀さに お題:裏切りの笑い声 制限時間:30分 読者:3 人 文字数:1729字 お気に入り:0人
はらりと解かれた風呂敷から、取り出された笹の包み。 かさかさと音をたててた中から出てきたのは、餡子の塊がふたつ。 茶をすすりながら、二人でつまみあげる。 甘い 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:刀剣乱舞 刀さに お題:私が愛した社会 制限時間:15分 読者:8 人 文字数:856字 お気に入り:0人
――みて。 主は、指をむけた。 それはひどく美しい光景だった。 人が見れば、それはただの見晴らしのいい丘から見下ろした街並みだ。 特別な遺産もなければ、世界一 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
ユウダチ ※未完
作者:匿名さん ジャンル:刀剣乱舞 刀さに お題:冷たい小雨 制限時間:15分 読者:7 人 文字数:472字 お気に入り:0人
さっきまでは、本当に暑かったんだ。8月初旬。夏の真っ只中であり、降水確率は0%手のひらで輪を作り空にかざして覗き込むが、括られた輪の中には白い雲はなかった。本丸 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:文豪ストレイドッグス お題:やわらかい平和 必須要素:クリスマス 制限時間:15分 読者:9 人 文字数:817字 お気に入り:0人
鼻唄を唄いながら、モミの木に飾りつけをしていく。ふわふわの白い綿や、キラキラの紐や、つやつやの玉や。おおよそ、こんな人を幾人も殺めてきた手で触るものではないであ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:第五人格 お題:興奮したハゲ 制限時間:15分 読者:13 人 文字数:751字 お気に入り:0人
こつこつこつ靴を鳴らしながら夜道を歩く薄暗い、小さな道こつこつこつ同じ音が鳴る今のは自分ではない。後ろから聞こえた音。普通の通行人だろうとそのまま進むこつこつこ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:刀剣乱舞 刀さに お題:壊れかけの帰り道 制限時間:1時間 読者:9 人 文字数:3154字 お気に入り:0人
頬を撫でる、生ぬるい風。 足下はまっくらでなにも見えない。 手にもつのは、あのひとがくれたたった一つの提灯だけ。 すぐにゆらいで消えてしまいそうな灯をかかげ、 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:刀剣乱舞 刀さに お題:部屋とYシャツと高給取り 制限時間:30分 読者:11 人 文字数:1888字 お気に入り:0人
人生で、特に高望みということをしていた覚えはない。 こんなもんだろうと自分の力に見切りをつけて、平坦に、平凡にやってきたつもりだった。 なのに、どうしてこうな 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:刀剣乱舞 刀さに お題:たった一つの第三極 制限時間:1時間 読者:17 人 文字数:2775字 お気に入り:0人
二極化、というのはどんな世界でもわかりやすい。 赤と白、または北と南、どちらかが正義あるいは悪。 ところが現実というのはそこまではっきりしている事などなく、覗 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:忍たま乱太郎 お題:ワイルドな船 制限時間:15分 読者:10 人 文字数:454字 お気に入り:0人
はぁ、と熱い息が頬にかかり、その小さな躯の限界を知らせる。世間一般、深夜と呼ばれる時間。本当なら、鍛練に使う船の上、夏の暑さに犯された頭は、穏やかに呼吸を乱すひ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:刀剣乱舞 刀さに お題:地獄床 制限時間:30分 読者:13 人 文字数:2046字 お気に入り:0人
宗三くん、と言えば彼はなんですか、とけだるげに返してきた。ベッドサイドでずりおちた肩の着物を手でなおす仕草は、いつか色っぽいなとしみじみと感じたあのころを思い 〈続きを読む〉