ジャンル:血界戦線 NL お題:急な窓 制限時間:30分 読者:56 人 文字数:1563字 お気に入り:0人

天邪鬼のキスは二回目から


「私はあなたが嫌いです」

 あいつはすました顔で、そんな風に言う。

「あなたの顔を見ていると、むかむかします」

 憎々しげに言う。

「私の方を見ないでください」

 ふいっと顔をそむける。


 そんなに、嫌悪を表面に出さなくても。

「いいじゃねぇかよ…」

 オレは一人ごちる。
 俺が嫌われているのは分かる。
 そんなん、あいつの様子を見てれば一目で分かる。

 だけど、だけどだ。
 いざ、正面切って言われると、どうしても堪えてしまう。

 そりゃそうだ。
 だってオレは、あいつの事が――


「ザップさん、何ぼーっとしてるんですか?」

 唐突に声をかけられる。
 ぼーっとしていたオレは、一気に現実に引き戻された。

「あ? あぁ? あー……あぁ」

 声をかけてきたレオナルドに生返事をしつつ、オレは目を向けていた先から、顔を背けて太陽の差し込む窓辺に目を向けた。

「あぁ? ってなんですか!! 適当な返事にもほどがあんだろあんた!」

 食って掛かるレオナルドを適当に手であしらいつつ、オレは頬杖を突いたまま窓を見る。
 先ほどまで、オレが目を奪われていた女から目をそらすために。
 オレがあいつを見つめていたことがばれないように。

 すると、窓を見ていたはずの視界に、唐突に影が差した。

「何、見てるのよバカ猿」

 影は逆さにこちらを見ている皇・チェインだった。

「あぁ?! てめぇが勝手に視界に入って来やがったんだろうが、失せろクソ犬!」

 何かを思うよりも先に口が勝手に動く。
 次から次に、こいつをののしる言葉が口をつく。

 頭の中が、吐かれた言葉と共に真っ白になっていく。
 そして、脳裏には先ほどのこいつの姿が浮かぶ。

 スティーブンさんと楽しそうに会話をするチェインの姿。
 俺に向かって見せたことのないその笑顔。
 とても嬉しそうなその笑顔を思い出すだけで、胸が締め付けられる。

 そんな俺の頭ん中なんて知らないだろうチェインは、ふん、と鼻を鳴らした。

「あんたの、あんな視線に私が気付かないわけないでしょ」

 言って、肩をすくめる。

「私の事を、あんなにずっと見て」

「はぁ!? 自惚れんじゃねぇよ、馬鹿が」

 オレは瞬時に吐き捨てる。
 本当はそんなことが言いたいんじゃないのに。
 言葉は勝手に、俺の手を離れたナイフのように、鋭く飛んでいく。

「もっかい言ってみなさいよ」

 チェインがそう言うのと、それは同時だった。

 俺を逆さに見たまま、チェインは目を閉じた。

 なんだ、やんのかコラ。

 と、思った次の瞬間には、唇に何かが触れていた。

「――!?!?」

 言葉も出ないまま驚くオレ。

 よくあるチュッという効果音よりは。スッという擬音がよく似合うそれは、落ち着いて思えばキスだった。

 って、キス……!?

「おま、な、に、してんだよ…!」

 だって、お前はあの人が好きだったんじゃ……!
 ほら、あの人もこの異様な光景を驚いてみてるじゃねぇか…!

 見た先のスティーブンの旦那は、一瞬驚いた顔をした後で、呆れたようにため息を吐き、そして言った。

「チェインくん、気持ちは分かるが職場でラブシーンとはよくないな」

 肩をすくめた彼は、にこっと笑って言った。

「外へでなさい、二人とも」

 いった瞬間追い出された俺とチェイン。
 長い廊下の片隅で、言葉も出ない俺に、チェインは言った。

「何呆けた顔してるのよ。もう一回キスしないと分からない?」

 そう言って、再び顔を近づけてきた。

「いい加減、気づきなさいよね、バカ猿」

 今度のキスは、ちゃんとチュッという音を立てて、俺の唇に吸い付いた。

-END-

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