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煙みたいに食べられない

 部屋からは遠く、海沿いの工業高校地帯が見えている。川底に散った砂金のように夜ごと光を放って、街の高台に部屋を借りて正解だった、と永四郎は微笑んで煙草に口を付けた。出勤や晴れた日に、自転車で下り坂を風を切って駆け下りることに憧れて選んだが、仕事帰りや買い物のたびに自転車をひいひい押すことになろうとは。少し考えれば分かったのに。正解と不正解の間をふらふらと彷徨いながら、この街の灯りの一つになる煙草の火を点滅させた。
 匂いが、同じだった。あの人の煙草をひと箱くすねた。あの人、とはつまり、永四郎の恋人で、いまだにどう呼んだものか――尋ねようとして、肩を抱き寄せられるたびに言葉が掻き消えることを繰り返していた。ちょっとしたものをくすねて、返して。試し行動のひとつ。何の欠陥か、楽しみか。悪癖をまだ咎められないまま、この煙草で何本目だったか……。ベランダの、非常の際は蹴破ることのできる仕切りはヤニで黄ばんでいる。何本目かは分からないが、この沁みついたヤニの色が証拠だった。炭酸飲料の入っていた瓶を灰皿代わりに使っているが、いい加減に灰皿の一つでも買えばいいのだ。恋人は毎週のようにやってくるのだから。だから、合鍵の一つでも渡せばいいのだ――。何を迷う。煙草のひとつ。合鍵のひとつ。愛してるのひとつ。いいじゃないかそれくらい、と天秤はいつも左右に振れている。携帯端末はさっき震えていた。眼下の道に、見慣れた長髪の人影を見つけて、悠々と煙草を消した。高台に建つアパートからは、いつも恋人の姿をすぐに見つけることが出来た――愛ゆえに。やがて階段を上がり、ドアを叩いた男を出迎える。その胸元に飛び込みたい気持ちを強くつよく押さえつけて、永四郎はいつも通りの表情を心掛けた。
「あ、たばこ」
 こんなところにあったのか、と呟く恋人の胸元はいつものような煙草の匂いは薄かった。
「この前お酒飲んだときに忘れてたんですよ」
 禁煙出来てよかったじゃないですか、と苦笑いのふりを作る。きょとん、と音がしそうな表情で、恋人――大曲は首を傾げた。お前、何言ってんだ、と。
「お前が取っていったんだろ」
 別に気にしていない、と言い添えた大曲は煙草を片手にベランダへ向かった。つい先程まで永四郎が煙草を吸っていた場所に出るや否や、大曲は煙草に火をつけた。
「お前のほうが、俺の匂いがしてんなあ」
 満更でもない、と顔に張り付けて、恋人は煙を吹きかける。永四郎はまた、応えるべき言葉を捕まえきれないで、煙は指をすり抜けて夜へ溶けていった。

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