ジャンル:カルジュナ お題:私の儀式 制限時間:15分 読者:48 人 文字数:1786字 お気に入り:0人

【カルジュナ】ラッキーストライク!3

「言い訳はあるかね」
「………無い」
カルナは両手を後ろ手に組み、足を肩幅に開いて質問の主を見ていた。
ジェロニモは他のメンバーと同じく、カルナへの「勉強」の先生であり、カルナが頭の上がらない人の一人である。
カルナがジャムに呆然とし、アルジュナを誘拐犯の好きにさせてしまったところを、フィンとディルムッドがそれぞれ車とタクシーで追いかけたのだが、途中で撒かれてしまったようで、現在の本拠地になった、ホテルのスイートルームに戻ってきた。
スイートルームには開けられたままのトランクがあり、そこからはアルジュナがこのバカンスのためにと持ってきた、カルナ用の日焼け止めが覗いていた。自分のものだけを持ってくれば良かったのに、とカルナは思った。ちがうことを考えている自覚はあった。思考が奔放と化し、現状から逃避している。アルジュナと二人きりのはずのスイートルームは、今や作戦会議室に様変わりしてしまった。
「ボスが拐われてから一時間三十九分。そろそろ向こうから何かしらの要求があってもおかしくないと思うんだけど」
「静かなのが不気味よね」
「……助けに行かないのか」
「何処へ?」
切って捨てられるように返答され、カルナは押し黙る。
バカンスだからと、アルジュナを縛るGPSつきのピアスを外させていたのもカルナであり、二人きりを強請ったのもカルナだった。それは言い換えれば、自分がそう願ったとしても、結果的にはそうならないだろう、と思っていたからだ。アルジュナのことだから他にも護衛を潜めているだろう、だとか、他の面々とて完全に二人きりにはさせないだろう、だとか。
けれどもそれは全てカルナがこの現状を甘く見ていたということだ。完全に二人きりであるならば、自分自身がアルジュナを守らねばならなかったというのに。
と、そこに不意に聞こえるビープ音。玩具のようなチープな呼び出し音が聞こえ、ジェロニモが視線だけでビリーを促した。部屋に引いてあるシックな電話機から、耳を劈くような電子音がしているというアンバランスさは、今の自分たちを表しているようにも見えた。
自分たちは生まれも育ちも年齢も国籍も信条も違う。だが、アルジュナというたった一人の下に集うということで初めて一団となる。烏合の衆ではなくなる。霧散した霧でも、有象無象の塵芥でも、掃いて捨てられる路傍の石でもなくなるのだ。
「ハロー!」
『やぁやぁ諸君! そろそろ私が必要かね!』
受話器を取ったビリーの耳に、聞き馴染みのある声。ビンゴ、と言いながら肩を竦めれば他のメンバーは通話相手が分かったようだった。
『困ったものさ。麗しい御婦人方とショッピングを楽しもうとしていたところ、なんと我らがボスが逢引きしていくのを見かけてしまってね!』
「ワァオ、駆け落ち? 若い恋人には飽きたみたい?」
『情熱的な女性だったように見受けられる。なんといってもあの四百四十CCと、改造マフラーの線の鋭さから察するに相当な馬乗りさ!』
「つまり?」
ビリーの問いに、通話口の向こうで一瞬だけ沈黙が走った。
フィン・マックールの思考が繋がった音。それは無音という、世界からの断絶だ。
『私が彼らを見たのがシラク―サの三十七号線ストリートから十七キロメートル地点。その時点で時速八十キロメートルのロートルバスと比較するにバイクの時速は百十八キロメートル。そこからハイウェイ入り口までを二分三十一秒で通過すると仮定し、その間に私の「小鳥たち」がハイウェイの出口に包囲網を敷いた』
さらさらと淀みなく紡がれるフィンの言葉を、キッドは左利き用の万年筆で速記していく。それをエレナが方眼紙と地図にトレースし、ロビンフッドがパソコンに位置情報を落とし込みながら監視カメラのアクセス権限を壊し始める。
目の前で、自分を置いてけぼりにしたまま進んでいく世界のスピードに、カルナは目を見開いたままに硬直する。自分もそこに入っていかなければならないのに、喉が張り付いてしまったかのように空気を通さない。
ガチャンッ! とビリーが受話器を置き、カルナを見る。
「さて、行こうか」
「……何処へ」
「何処って、おかしなことを聞くね、カルナ」
ジェロニモがビリーの言葉を続ける。
「地獄に決まっているだろう」
一斉に立ち上がったメンバーが、スイートルームを飛び出した。

同じジャンルの似た条件の即興二次小説


見つかりませんでした。

梟光司の即興 二次小説


ユーザーアイコン
作者:梟光司 ジャンル:カルジュナ お題:恥ずかしい彼女 制限時間:15分 読者:39 人 文字数:1433字 お気に入り:0人
「ッッ――ラァッ!」来る、と思ったのは、決してカルナの思い違いではなかった。鮮烈な赤。血よりももっと明度の高い、林檎や苺のような緋色。それが眼前に迫り、カルナは 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:梟光司 ジャンル:カルジュナ お題:戦争と悪人 制限時間:15分 読者:45 人 文字数:1468字 お気に入り:0人
従業員の顔が一瞬で青褪め、道を開けた。というよりも、脱兎のごとく逃げ出した。カルナとビリーは一気に走り出し、ピアノの乗るステージの横を通り抜けて二階への階段に足 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:梟光司 ジャンル:カルジュナ お題:もしかして凡人 制限時間:15分 読者:32 人 文字数:1258字 お気に入り:0人
ガゴンッ!と車体が揺れ、カルナが一瞬だけシートから浮く。咄嗟に庇ったベレッタをセットし直しながらフィンを見ると、どうやら運転席から何かを外へと投げているようだっ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:梟光司 ジャンル:カルジュナ お題:愛のプレゼント 制限時間:15分 読者:46 人 文字数:1297字 お気に入り:0人
「大層なご登場なこって」「いつもはデスクワークばかりだからね。たまに現場に戻ると良い刺激になる」「まぁいいや、カルナが君と行くと申し出た」「そうか」フィンはウィ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:梟光司 ジャンル:ロビジュナ お題:見憶えのある水 制限時間:15分 読者:35 人 文字数:1403字 お気に入り:0人
最初の感想は「誰だあれ」だった。俺はロビンフッドの中でも出来の悪い方だと自負しているが、その中でもまぁまぁ頑張ってきたとも思っている。魔力も電力も不足したカルデ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:梟光司 ジャンル:ロビジュナ お題:小説家たちの唇 制限時間:15分 読者:41 人 文字数:1450字 お気に入り:0人
「あなたにとって、私なんて火遊びにもならないのでしょうね」どんなことが原因だったのか、もう覚えていない。けれども売り言葉に買い言葉。それが私を躍起にさせて、言わ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:梟光司 ジャンル:カルジュナ お題:私の儀式 制限時間:15分 読者:48 人 文字数:1786字 お気に入り:0人
「言い訳はあるかね」「………無い」カルナは両手を後ろ手に組み、足を肩幅に開いて質問の主を見ていた。ジェロニモは他のメンバーと同じく、カルナへの「勉強」の先生であ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:梟光司 ジャンル:没カルジュナ お題:初めての宿命 制限時間:15分 読者:42 人 文字数:980字 お気に入り:0人
バタンッ!と大きくドアが閉まる音が響いた。マリーとアルジュナは肩で息をしながらドアに背をつけ、顔を見合わせる。どちらともなく瞳が弧を描き、笑みとなった。「先程の 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:梟光司 ジャンル:カルジュナ お題:限りなく透明に近い命日 制限時間:15分 読者:65 人 文字数:1539字 お気に入り:0人
さて防犯ブザーで呼ばれるのは、何もむくけき男だけではない。カルナはアルジュナの元にはせ参じた三人を見やってチベットスナギツネの形相となった。「うちの子に何か御用 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:梟光司 ジャンル:カルジュナ お題:かたいオチ 制限時間:15分 読者:66 人 文字数:1572字 お気に入り:0人
「ニューーーーヨーーークヘ、行きたいか~~~~!」「「「ウォォオオオオ!!!」」」赤白青の三色帽子をかぶり、ギターをマイクに見立てて叫んでいるのは信長。その隣で 〈続きを読む〉