ジャンル:ロビジュナ お題:小説家たちの唇 制限時間:15分 読者:70 人 文字数:1450字 お気に入り:0人

【ロビジュナ】その男、脅迫につき。

「あなたにとって、私なんて火遊びにもならないのでしょうね」

どんなことが原因だったのか、もう覚えていない。けれども売り言葉に買い言葉。それが私を躍起にさせて、言わなくていいことまで言ってしまった。
私は視線をつい、と下げて、自分の靴先を見た。茶色の革靴の先がほんの少し汚れていることに気付いた。それを今すぐに磨きたいと思った。今、ここから離れられるのならば、なんでも。
ロビンフッドの顔を見ることができない。きっと呆れた顔か、それとも面倒臭い顔をしているのか。

「な、スマホだして」

ロビンフッドが言う。
私はノロノロとスマートフォンを取り出して、ロビンフッドに渡す。きっと、連絡先を消されるんだろうな、と思った。だって、彼は今まで私とツーショットの写真すら撮ったことがなくて、アプリのトーク履歴をぽんと消すだけで私とのつながりを断ってしまうことができる。
彼は専門学生で、私は大学生で、学校も生きてきた環境も違って、お互いを繋ぎとめるものも決して多くない。共通の友人だって、ビリーくらいのもので、彼だって、専門学生なのだから私に構う暇すらないだろう。切って捨てられて、おしまい。そう思えるくらいには、私はなにもロビンフッドとの間に残せない。
私は男で、ロビンフッドも男で、彼はもともと女性が好きで。
だったら私と恋人になったことがそもそも間違いだったのではないだろうか。
だからこんな、街灯の少ない夜道で、私は泣きそうになりながら、彼からの断罪を待っている。

「アルジュナ」

ロビンフッドが私の名前を呼ぶ。私は、その声に、ゆっくりと顔を上げた。きっと見下すみたいな冷ややかな瞳だと思っていたその先で、彼が穏やかに瞳を細めていた。その口元に、私のスマートフォンがある。赤くランプがついているけれど、私はそれが何を意味しているか分からない。

「俺は、アンタが思っているよりも、ずっとアンタを愛しているよ」

私が呆然としているのにも構わず、ロビンフッドは続ける。

「俺は、アンタの面倒くさいところも完璧でいたいところも、周囲を愛していることも、愛されるだけの分を返そうとするところも、努力してるところも、俺なんかに摑まっちまったところも好きだ」

今まではっきり言われたことの無い言葉たちが、彼の口から流れている。私はそれを心に留められるほどの余裕もなく、ただ茫然としているまま。

「ロビンフッドは、」

そんな甘やかな声で、優しい瞳で、どうして私の手を取るのだろう。

「病める時も健やかなる時も、どうしたって卑屈になったときも、一人きりで泣こうとしているときも、そういうアルジュナを愛し続けることを、今、ここで、アンタ自身に誓うよ」

ぼろ、と私の瞳から水滴が零れる。ロビンフッドは私のスマートフォンを操作して、赤いランプを消してから私に差し出した。
録音が完了しました、という文字が表示されていて、私は何も分からないまま、それを握らされる。

「俺がいつか、しょーもない女に摑まったとか、別れたいとか、そういうことを言い出したら、これを使って脅すんですよ」

ボタンが押されると、彼の言葉が再生される。私への愛の言葉。私を愛していると、告げる声。

「『私を愛していると言ったでしょう』って、俺を脅すんですよ」

脅す、だなんて。そんな物騒な言葉を使うのに、ただただロビンフッドの声も瞳も優しく、私はただぼろぼろと泣き続けるまま、彼の手のひらの温かさと、唇のぬくもりを感じていた。

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