ジャンル:刀剣乱舞 獅子さに 女審神者 お題:魅惑の計画 制限時間:30分 読者:23 人 文字数:1193字 お気に入り:0人

本丸第一乳牛消費委員会活動


「ねえ、獅子王、これって……」
 審神者の声には、迷いがあった。進んでもいいものかどうか。歩みを止めるべきなのではないか。そんな逡巡が読み取れる。
「いいや主、これは、やらなきゃいけないことなんだ」
 翻って獅子王の言葉には、決然とした響きがあった。何があっても突き進む。頼りがいさえ感じられる強さがある。
「俺は明日非番。しかも本丸全体休。主も休み。……いいか主、これは、やるべきことなんだ」
 わかるだろう? と反駁をもって、獅子王は審神者に問いかける。
「でも、」
「でももだっても、もういい! 主、――やりたくないのか?」
 覚悟を問う獅子王に、審神者はぐっと言葉を飲み込んだ。やりたいかやりたくないかの二択であれば――素直に、やりたい。
 審神者の表情の変化に気付いた獅子王は、「おっし、その意気だ!」と審神者の背を軽く叩く。
 二人が向かうのは厨。時刻はもう深夜になろうという頃合い。


 少し経緯をさらおう。
 遡ること数ヶ月前、審神者の本丸に乳牛が導入された。絞りたての牛の乳が飲んでみたいという、幾振りかの刀剣男士の共同出資による企画だと、審神者は知っていた。自分も前世紀らしい経験がしたいと思った審神者は、快くそれを了承した。
 商売気のある刀の何振りかは、一頭の乳牛のもてはやされぶりと乳の飲まれぶりを見て考えた。商いになると。
 そうして一頭、また一頭と牛は増えてゆき、ついには中規模の牛舎が営まれるまでになった。搾乳と餌やり、牛車の掃除が新たな内番として(純粋業務として?)審神者に上申されたとき、事件は起こった。
 多頭飼育による本丸での乳牛事業経営は認められない。そんな趣旨の戒告文だった。上からは商売を固く禁じられ、自家で製作し消費するだけであれば容認すると説明された。
 別に資金回収だけが目的ではないから、商売として成立せずとも、本丸内と主の親交のある本丸だけで細々と流通しようという動きもあった。
 だが問題はそれだけではなかった。
 増えすぎた牛による、本丸消費量を易々と凌駕する圧倒的な生産量。飲んでも飲んでも追いつかないという事態が現出した。
 牛を食べればいいだろうと思うものたちもいたが、大きくなるまで育てた刀にとっては、牛を自ら殺して食べることに、罪悪感を抱くものもあった。食べられない。飲みきれない。どうするのか。


「乳牛加工……楽しいね」
「おう! 生クリーム大量に作って、ケーき作って食べる! 夜中に!!!」
 獅子王の他に、この時間帯でも楽しそうに生クリームを泡立てる酔狂な刀が何振りかいた。鶴丸国永、御手杵、愛染国俊、山姥切国広、小豆長光。甘いものが嫌いじゃないものたちだ。

 ふわふわと泡立てられる生クリームは、参加した刀剣と審神者の胃に収まり、翌朝は胃もたれした寝不足の面々が死屍累々と廊下に転がっていたという。

同じジャンルの似た条件の即興二次小説


見つかりませんでした。

伊勢 靜の即興 二次小説


ユーザーアイコン
作者:伊勢 靜 ジャンル:刀剣乱舞 獅子さに 女審神者 お題:魅惑の計画 制限時間:30分 読者:23 人 文字数:1193字 お気に入り:0人
「ねえ、獅子王、これって……」 審神者の声には、迷いがあった。進んでもいいものかどうか。歩みを止めるべきなのではないか。そんな逡巡が読み取れる。「いいや主、これ 〈続きを読む〉