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幸せは甘い味

※統合後の柚子視点。スイパラ的な所に行く柚子(+三人)の話。遊矢も少しだけ出てくる。

(柚子、頼みがあるの。ちょっとだけで良いから体を貸して)
(あの……柚子。瑠璃と同じお願いなんだけど、少しだけ私と意識を交代してもらえないかな?)
(私もだ柚子!あんなものを見せられたらじっとせずにはいられない!)
瑠璃、リン、そしてセレナからのお願いがあったのはテレビで放送されていたあるコマーシャルを見てからだった。
それは舞網に全国的に有名なスイーツ食べ放題の店が新規オープンするという内容のもの。

そんなわけで私は今、遊矢を誘って例のお店に来ている。
別にデートってわけじゃないけどね。遊矢もこういう甘いもの大好きだし。一人でこういうお店に行くのも……正確には一人じゃないんだけど。
妙に遊矢がソワソワしているのは、きっと同級生がいないか確かめているのよ、うん。

(柚子、あのチョコレートムース美味しそうよ!あれもとりましょ)
(ど、どうしよう……ケーキってこんなに種類があるの?とりあえずあの果物が一杯乗っているのを……)
(くっ、この中から精選していくなど私にはできない!端から端まで全部とっていこう)

瑠璃はこういうお店に行き慣れているのか割とスムーズに選んでいく。
逆にリンは色とりどりの甘い世界に魅了されっぱなしで、普段の彼女からは想像できないくらいの慌てよう。
セレナ……甘いものは別腹というけれど、さすがの私でもそんなに食べることはできないわよ!

お皿には瑠璃が選んだチョコレートムース、リンがチョイスしたフルーツタルト、そしてセレナには後でまた取りに行くからと言い聞かせシフォンケーキを選抜してもらった。

遊矢と話してみて分かったけど、どうも私が見たり聞いたり、触れたりととにかく「感覚」は私の中の三人にもしっかり伝わっているみたい。もちろん味覚も例外じゃない。
だけどどうやって伝わっているのかじっくり聞いてみたら「モニターに柚子の見ているものが映し出されて、肌に直接変化はないけど刺激がある」という、所々間接的な感覚共有方法らしい。
食べ物は口のなかで今私が味わっているものがそのまま伝わってくるけど、五感それぞれにズレがあるから「何とも言えない違和感」はどうしてもでちゃう……とこっそり瑠璃は教えてくれた。

それを聞いて、私は三人にものすごく申し訳ない気持ちになった。
だからこのスイーツ食べ放題のお店で、甘い幸せを直接見て、触れて、そして味わって欲しかった。

「さぁ食べましょ。まずは瑠璃からね」
そして私は瑠璃と意識を交代させる。この深い水の底に沈んでいく感じは中々慣れない。
どこかから光が漏れ出ているような不思議な空間。
目の前にはチョコレートムースが一すくいスプーンにとられる様子が映し出される。そしてじわじわと口の中一杯に感じるチョコレートのとろける甘味、ココアパウダーのほろ苦さ。ちょっと大人向けのチョコレートムースの味。

(ああ、美味しい……)
チョコレートムースを瑠璃はとても気に入ったようだった。

そして意識はリンに交代したようだった。映し出されるキラキラ輝くフルーツタルト。
イチゴの甘酸っぱさ、ブルーベリーの酸味とプチンとした歯触り、下に敷かれたカスタードクリームのまったりとしたコクと滑らかさ、土台のタルトのバターの風味……

(こんな、こんなに美味しいものがこの世にあったのね……)
リンは始めてのタルトの味に感動しているみたい。本当に良かった。

(よし、次は私だ)
セレナのシフォンケーキが映し出された。
ふわふわと夢のように柔らかく、そのまま口のなかで溶けてなくなっちゃいそう。バニラの香りが口のなかを、鼻をすーっと通っていく。シンプルで奥深い味。

(次は紅茶の味のものがほしいな……)
次に食べるものをもう考え始めているセレナ。本当に嬉しそうね。

(そう言えば、柚子は何を食べたいんだ?私が取ってきてやろう)

いけない、私の分を取ってくるのを忘れてた。何を食べようか……

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