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可愛い失踪





靴がない。特異点が蹴ったのだろう。ベッドの下と部屋の隅を見たが珍しく整頓されていて探す余地はなかった。
寝床も冷えている。昨日は帰らなかったのか?
「ん……」
艇は曇り空を飛んでいる。今日は甲板にいないはずだ。ならキッチンで朝でも作っているのか。珈琲を飲むついでに探しに部屋を出た。
スリッパを履かない習慣はこういう時に不便なのかもしれない。素足で歩くと木の床が湿気を吸うのがよく分かる。やや不快な匂い。雨が降るのだろう。
キッチンをノックしてノブを回したが誰もいなかった。当てが外れた。珈琲は飲みたいが先に何かを履いておきたい。これが見つかるとまたうるさくなるだろう。
部屋まで戻ったら特異点が着替えていた。
「おはよう」
「ああ。いい朝だな。俺の靴が見当たらないんだが、鬼ごっこは楽しかったかい?」
「靴?」
寝ぼけて蹴ったのかなと見回したがそれは俺も確認した。どうやら心当たりはないらしい。同居人の悪戯ではなかったか。
スリッパ借りてくるから座っててと言って出て行った背中を一瞥してから横たわった。今日は遅い朝になりそうだ。

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