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石を投げるの何でかな

 夕食を食べ終えた子どもらは、今日のお手伝いのご褒美にもらったホットココアの温かなマグを抱えて、そろりそろりと談話室へ向かった。ジャックやナーサリーの目当ては絵本だ。随一の童話作家、アンデルセンの未公開未発表の新作を片手に、手ごろなサーヴァントの膝にまつわって絵本を読んでくれとねだるのが、子どもらの最近の遊びである。元来子ども好きのアーラシュや、気さくな燕青あたりは二つ返事で引き受けるが、絵本を読むことは苦手なようで子どもらにも「ここはこう」「そんなんじゃない」と指差されている。そこで目を付けられたのがヘクトールだった。ちょうどその場にいたのが悪い。
「おかあさん、読んで!」
 まずは身軽なジャックがヘクトールの膝に飛び乗り、もう片膝にはナーサリーが小さな手を乗せ、決定打はジャンヌオルタサンタリリィ(以下ジャンタちゃんという)だった。本を持っている両腕と胸の間へ顔を出して、「ご本!読んでください!」と元気よくはきはきと「お願い」する。見て見ぬふりも出来ないヘクトールは「オジサンそんなに絵本読むの上手じゃないんだけどなあ」とぼやきながらも、三人を膝に乗せて、今夜もページを開くのだ。
「むかーし、むかし、あるところに……」
 どうしていつも「むかし」で「あるところ」なんだろう、などとジャックが茶々を入れる。ジャンタちゃんも同じ疑問を抱いている。ナーサリーは野暮な問いは発さず、物語に目を輝かせる。
 「ねえ、何でおかあさんはアキレウスに石を投げるの?」
 絵本に飽きたジャックがヘクトールの髭を見上げた。絵本に落としていたオリーブの色の目をジャックに向け、ヘクトールは「どうしてだと思う?」と尋ね返した。ジャンタちゃんは恐る恐る、「嫌いなんですか?あんなにきれいなのに」と声を上げる。物語に目を輝かせていたナーサリーは、ヘクトールが持ったままの絵本のページをちょっと前に戻して、まじまじと絵に見入った。
「嫌いっていうか……」
「きれいなのに?」
「はぐらかしたら嫌よ、ちゃんと教えてね」
 ぶどう色の目をヘクトールに向けて、ナーサリーは大きく瞬きをした。約束をしろ、と真摯なまなこは雄弁に語る。さしものヘクトールも目を反らして頬をぽりぽりとやり、ため息をついて観念した。六つの目の怪物なんて、ヘラクレスでもあるまいしヘクトールにそんな逸話はない。むしろ多くの弟妹を持ち、子どもさえいた。生前はもちろんのこと、今も子どもには強く出られない男だ。
「やっぱりね、あいつに殺されちゃったから、身体が強張ったり、いろいろ具合がうまくないわけよ」
 きみらも英霊で、マスターを守るサーヴァントと見込んでるんだから、茶化さないでちょうだいよ。ヘクトールは絵本を閉じた。三人とも、大きく頷く。
「もしもあいつが敵になっちゃったとして、いや、あいつみたいに決定的な相手がオジサンの前に現れて、マスターを守るのがオジサンしかいなかったら」
「そんなこと、ないよ」
「もしもの話さ、もしもそんなことになったら大変だろ?」
「そうね、フソクのジタイってこともあるかもしれないわ」
「そう、だからその『もしも』に備えて――」
「練習してるんですか?」
 そう、と頷いたヘクトールに、ジャンタちゃんが「すごい!」と歓声を上げた。居心地の悪そうなヘクトールは再び絵本を開いた。
「ほら、オジサン恥ずかしいんだから勘弁してくれよ」
「練習かあ、わたしも練習したらおかあさんみたいになれるかな?」
「ほら、絵本の続き、読んであげるから、ほら」
 そうね、とナーサリーが頷いた。彼女は本当に、絵本が大好きだ。
 存外付き合いのいいヘクトールは、欠伸をかみつつ、子どもらがうとうと舟を漕いだら絵本を閉じてあっという間に抱え上げてナーサリーのベッドへ三人を放り込んでしまった。こういうアフターケアをするから目を付けられるのだ、馬鹿な男め。空っぽのマグも、キッチンへ戻してしまう。さあ、みんなおやすみ。
「あんたもだよ」

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