ジャンル:Fate/Grand Order お題:調和した彼 制限時間:30分 読者:36 人 文字数:1649字 お気に入り:0人
[削除]

石を投げるの何でかな

 夕食を食べ終えた子どもらは、今日のお手伝いのご褒美にもらったホットココアの温かなマグを抱えて、そろりそろりと談話室へ向かった。ジャックやナーサリーの目当ては絵本だ。随一の童話作家、アンデルセンの未公開未発表の新作を片手に、手ごろなサーヴァントの膝にまつわって絵本を読んでくれとねだるのが、子どもらの最近の遊びである。元来子ども好きのアーラシュや、気さくな燕青あたりは二つ返事で引き受けるが、絵本を読むことは苦手なようで子どもらにも「ここはこう」「そんなんじゃない」と指差されている。そこで目を付けられたのがヘクトールだった。ちょうどその場にいたのが悪い。
「おかあさん、読んで!」
 まずは身軽なジャックがヘクトールの膝に飛び乗り、もう片膝にはナーサリーが小さな手を乗せ、決定打はジャンヌオルタサンタリリィ(以下ジャンタちゃんという)だった。本を持っている両腕と胸の間へ顔を出して、「ご本!読んでください!」と元気よくはきはきと「お願い」する。見て見ぬふりも出来ないヘクトールは「オジサンそんなに絵本読むの上手じゃないんだけどなあ」とぼやきながらも、三人を膝に乗せて、今夜もページを開くのだ。
「むかーし、むかし、あるところに……」
 どうしていつも「むかし」で「あるところ」なんだろう、などとジャックが茶々を入れる。ジャンタちゃんも同じ疑問を抱いている。ナーサリーは野暮な問いは発さず、物語に目を輝かせる。
 「ねえ、何でおかあさんはアキレウスに石を投げるの?」
 絵本に飽きたジャックがヘクトールの髭を見上げた。絵本に落としていたオリーブの色の目をジャックに向け、ヘクトールは「どうしてだと思う?」と尋ね返した。ジャンタちゃんは恐る恐る、「嫌いなんですか?あんなにきれいなのに」と声を上げる。物語に目を輝かせていたナーサリーは、ヘクトールが持ったままの絵本のページをちょっと前に戻して、まじまじと絵に見入った。
「嫌いっていうか……」
「きれいなのに?」
「はぐらかしたら嫌よ、ちゃんと教えてね」
 ぶどう色の目をヘクトールに向けて、ナーサリーは大きく瞬きをした。約束をしろ、と真摯なまなこは雄弁に語る。さしものヘクトールも目を反らして頬をぽりぽりとやり、ため息をついて観念した。六つの目の怪物なんて、ヘラクレスでもあるまいしヘクトールにそんな逸話はない。むしろ多くの弟妹を持ち、子どもさえいた。生前はもちろんのこと、今も子どもには強く出られない男だ。
「やっぱりね、あいつに殺されちゃったから、身体が強張ったり、いろいろ具合がうまくないわけよ」
 きみらも英霊で、マスターを守るサーヴァントと見込んでるんだから、茶化さないでちょうだいよ。ヘクトールは絵本を閉じた。三人とも、大きく頷く。
「もしもあいつが敵になっちゃったとして、いや、あいつみたいに決定的な相手がオジサンの前に現れて、マスターを守るのがオジサンしかいなかったら」
「そんなこと、ないよ」
「もしもの話さ、もしもそんなことになったら大変だろ?」
「そうね、フソクのジタイってこともあるかもしれないわ」
「そう、だからその『もしも』に備えて――」
「練習してるんですか?」
 そう、と頷いたヘクトールに、ジャンタちゃんが「すごい!」と歓声を上げた。居心地の悪そうなヘクトールは再び絵本を開いた。
「ほら、オジサン恥ずかしいんだから勘弁してくれよ」
「練習かあ、わたしも練習したらおかあさんみたいになれるかな?」
「ほら、絵本の続き、読んであげるから、ほら」
 そうね、とナーサリーが頷いた。彼女は本当に、絵本が大好きだ。
 存外付き合いのいいヘクトールは、欠伸をかみつつ、子どもらがうとうと舟を漕いだら絵本を閉じてあっという間に抱え上げてナーサリーのベッドへ三人を放り込んでしまった。こういうアフターケアをするから目を付けられるのだ、馬鹿な男め。空っぽのマグも、キッチンへ戻してしまう。さあ、みんなおやすみ。
「あんたもだよ」

同じジャンルの似た条件の即興二次小説


ユーザーアイコン
作者:工藤 ジャンル:Fate/Grand Order お題:ゆるふわな動機 制限時間:30分 読者:132 人 文字数:856字 お気に入り:1人
ベディヴィエールに避けられている。ガウェインは壁にもたれかかりながら腕を組んだ。 ガウェインとベディヴィエールは恋仲である。そして、昨日は彼と、はじめて体を結 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
似顔絵 ※未完
作者:桜鬼@猫注意報(・ω・) ジャンル:Fate/Grand Order お題:調和した絵画 制限時間:30分 読者:192 人 文字数:761字 お気に入り:0人
「何してるの?」 おやつの時間になると、ある一定の女性陣が集まる食堂が、何故か何時もよりも騒がしい。集めた資材を片付けるべく近くを通った少女は、素朴な興味で入口 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:ギギ ジャンル:Fate/Grand Order お題:自分の中の黒板 制限時間:30分 読者:185 人 文字数:849字 お気に入り:0人
俺なんてただの数合わせのためにたまたま選ばれた一般人だから、きっとすぐになんでもない日常に戻っていくのだろう。そう思いながら、俺は自分の中の黒板の前でチョークを 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:ギギ ジャンル:Fate/Grand Order お題:わたしの嫌いな秀才 制限時間:30分 読者:266 人 文字数:521字 お気に入り:0人
私は、藤丸立香という少年が嫌いだ。多くの優秀な魔術師、多くの優秀なスタッフが集まるこのカルデアで、ただ1人だけの凡人。だというのに、多くのサーヴァントの精神を繋 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:ギギ ジャンル:Fate/Grand Order お題:煙草と天井 制限時間:30分 読者:299 人 文字数:931字 お気に入り:0人
ロビンフットはカルデア内の喫煙室の壁にもたれかかり、煙草をくわえてぼんやりと天井を見上げる。現在、喫煙室には彼だけである。好んで喫煙するサーヴァントは彼以外にも 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:ギギ ジャンル:Fate/Grand Order お題:アブノーマルな出会い 制限時間:30分 読者:254 人 文字数:760字 お気に入り:0人
「はじめてドクターにあったのは、この部屋だったんだ」ベッドに腰かけたマスターが、ゆっくりと話し出した。僕がカルデアに召喚されたのは昨日。昨日はそれはもうすごい騒 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:ギギ ジャンル:Fate/Grand Order お題:煙草と極刑 制限時間:30分 読者:213 人 文字数:634字 お気に入り:0人
「これは没収です」ぐしゃり、と。煙草の入った箱を握りつぶしたのはナイチンゲールだ。没収というか、それはもう握りつぶしているのだが、とは誰も言わない。ナイチンゲー 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:胡散気な夏 ジャンル:Fate/Grand Order お題:男同士の友人 制限時間:30分 読者:408 人 文字数:620字 お気に入り:0人
お前の友の話を聞かせてくれ、と言われた。レイシフトが終わってカルデアに帰ったすぐの事だ。マスターたる青年と、他にも何人ものサーヴァント達が大きなテーブルに集ま 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:夏遠なつと ジャンル:Fate/Grand Order お題:煙草と同性愛 制限時間:15分 読者:15 人 文字数:712字 お気に入り:0人
煙草の臭いは好きじゃないけど、好きな人が吸うとときめくってあるしまゃない? エリちゃんの言葉に私はふと首を傾げた。「なにそれロビンのこと?」「はあ?」「エリちゃ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者: ジャンル:Fate/Grand Order お題:怪しい作家デビュー 制限時間:4時間 読者:18 人 文字数:1150字 お気に入り:0人
レオニダスにはいくつか習慣があるが、そのうちの一つが日記だった。学生時代から欠かさず書いてきた日記はレオニダスにとって書くことに意味があり、どんなに忙しくても一 〈続きを読む〉

匿名さんの即興 二次小説


ユーザーアイコン
語らい ※未完
作者:匿名さん ジャンル:刀剣乱舞 お題:可愛い恋 制限時間:15分 読者:4 人 文字数:319字 お気に入り:0人
付喪神として意識を持ち始めた頃の俺は、周りの物事全てが珍しく輝いて見えた。あれは何、これは何と周りの付喪神に聞いて回った。周りの者たちは何でも聞く俺が面倒にな 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
【腐】無題。 ※未完
作者:匿名さん ジャンル:ツキウタ。【腐】 お題:穏やかな男 制限時間:15分 読者:9 人 文字数:1536字 お気に入り:0人
****「おっ邪魔しま~す。」――変な癖で、ついつい人様の車に乗ると言ってしまうんだよなぁ~。と、眠気とその場の雰囲気で少し飲んだ微酔いで、心地の良い疲労感でふ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:ヒプノシスマイク お題:免れた夜風 必須要素: 制限時間:30分 読者:31 人 文字数:1525字 お気に入り:0人
高校を出てから住み始めた家は横浜にあって、だから全然ゴミの日を覚えられないで二年か三年くらい、多分そう、三年近くは経っている。ゴミを溜めているなんてことはなく 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:Fate/Grand Order お題:平和と祖父 必須要素:北海道 制限時間:15分 読者:54 人 文字数:929字 お気に入り:0人
埼玉以北には行かないと誓った日もあった。 厚い雲に覆われて日が届かない地にいる。おろしたてのダウンをかき抱いて、セイコーマートから走る。はやく温かいホテルのロ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:Fate/Grand Order お題:アルパカの四肢切断 必須要素:ジャケット 制限時間:2時間 読者:8 人 文字数:1657字 お気に入り:0人
型落ちの薄型テレビでは夕方のニュースが流れている。民放だ、たわいも無い内容で本当にくだらない。アルパカふれあい牧場の取材カメラと差し出されたマイクに、ふっくらと 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:うつたか お題:空前絶後の失望 制限時間:15分 読者:7 人 文字数:618字 お気に入り:0人
「高崎ぃ!」バタバタと、宇都宮が騒がしく在来の部屋に駆け込んでくる。「どうしたんだよ、そんな急いで」珍しく焦る様子の宇都宮に視線が集まる中、高崎はなだめるように 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:BanG Dream! お題:それいけ昼下がり 制限時間:15分 読者:12 人 文字数:992字 お気に入り:0人
「だからさ、こう、耳をぴょこぴょこってさせたの」「わかんねえよ! なんでそれが祝ってることになるんだ……」 時刻にして、昼を少し回った頃。いいかげんおたえへのツ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:アイドルマスターSideM お題:黄色い償い 制限時間:30分 読者:27 人 文字数:960字 お気に入り:1人
315プロダクション所属プロデューサーの俺が、葛之葉雨彦が事務所前の掃除をしているのだ、という話を事務所待機中の紅井朱雀に話したのは偶然だった。そういや朱雀、前 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:KーPOP お題:人妻の屍 必須要素: 制限時間:30分 読者:19 人 文字数:352字 お気に入り:0人
気がつくと、隣に女が寝ていた。いや、正確には死んでいた。口元に泡を吹かせていた。僕は怖くなった。身に覚えがない。すぐ横に酒があった。数本の酒が乱雑に置かれていた 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:名探偵コナン(夢) お題:調和した俺 制限時間:4時間 読者:20 人 文字数:1256字 お気に入り:0人
ちょう わ てう- [0] 【調和】( 名 ) スルものごとの間に釣り合いがとれていること。ものごととものごとが互いに和合していること。 「 -がとれる」 「 〈続きを読む〉