【キャリ裕】愛猫2
「にゃあ」
それはとても可愛げが無さ過ぎて逆に可愛く思えると見せかけてやはりそうでもない成熟した男の声色だった。
キャリバーの口から発せられた猫の鳴き声でよく表現される声にその場の空気が凍り付いた。流石に笑い飛ばしたくても何故か出来ない謎のプレッシャーに押しつぶされそうになる。
『裕太』
何処からともなく呼ぶ声は確かに今、裕太の近くにいる男のものだが問題は声がした方向だった。なんの根拠も確証もない。だが、裕太は足元で長い尻尾を揺らめかせている猫が発したものだと感じたのだ。
しゃがみ込み可能な限り視線の高さを猫に合わせて裕太が問う。
「もしかして、キャリバーさんですか?」
そんな裕太にボラーと内海にまたしても衝撃が走り、それぞれ顔を見合わせたあと憐れみを込めた視線で裕太を見詰めた。
「おいおいおいおい。裕太まで壊れちまったぞ」
「大丈夫か?今日は家に帰って休もう、な?」
「ちょっと二人ともそんな目で見ないで下さいよ!?」
『裕太』
「というか、俺以外声聞こえてない?」
裕太はふといつしか自分しかグリッドマンの姿を声を認識できていなかった頃が脳裏を過っていった。
「結局原因は分からないが、猫とキャリバーの精神が入れ替わった。それで相違ないな」
『そ、そうだ』
「そうだ、そうです」
これも懐かしいやり取りに裕太の目が何処か遠くを見つめる前に中身が猫のキャリバーがしゃがんでいる彼の肩口に額をグイグイ押し付けだした。
「キャリバーさん!?」
『裕太、俺はこっちだ』
「そうだった、ってうわ!」
単純な力では裕太がキャリバーの力に敵うわけもなく、そもそも大人と子供では例に漏れず大人の方が力がある。ゆえに中身が猫であるキャリバーの押される力に裕太は多少踏ん張っていたものの呆気なく尻餅をつく羽目になった。
裕太が尻餅をついても尚、額と頭を押し付け擦り付ける中身が猫のキャリバー。よくよく見れば目を細め何か譫言めいたものを口ごもっているようだ。
『随分懐かれたな』
「懐かれた?」
そんな二人を傍で座り尻尾を揺らし眺める中身がキャリバーの猫の丸い目が何かを思うようにこちらも細められた。
「あ。猫が頭突きしたり頭を摺り寄せるのは一種の愛情表現だってさ」
「ヴィット、お前猫のこと詳しいのな」
「ネットで調べた」
「だと思ったぜ」
「愛情表現……」
未だに額と頭を押し付けてくる見た目はキャリバー、中身は猫の相手に裕太の眉が困ったように顰められた。
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