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【ロビジュナ】嘘だらけのこいびと

「付き合ってもらえませんか」

俺の言葉に、アルジュナは目を丸くして、え、と一つの音を呟いた。






俺とアルジュナは同じ大学で違う専攻を持つ学生だった。それが、バイト先が一緒だったという理由だけで、もともとの接点が濃かったわけではない。
アルジュナはこちらが気後れしてしまうほどに折り目正しい優等生であったし、俺はのらりくらりと波風立てない程度に真面目だったり不真面目だったりを手のひら返して生きている人種だった。俺はアルジュナが、俺と寝る女たちと同じように恋に狂う姿など想像できなかったし、例えば失恋に涙を濡らすことも単位が足りそうになくて冷や汗をかくこともないのだろうな、とも思っていた。
それはバイト先での挨拶程度の関係が、大学生活にも持ち込まれたときも同様だった。こんにちは、ロビンフッド、と、平坦に紡がれる音声に、AIかよ、と思ったことを、今でも覚えている。
だから、同級生たちが、お堅いアルジュナと知り合いかよ、と言ってきたときも、あまり深く考えていなかった。男にしては綺麗な顔だよな、という流れから、お綺麗な顔を歪ませたいという濁った願望に続いていった時も、俺は止めはしなかった。俺はその場で、確かに傍観者だった。
お前ならあいつを落とせるんじゃねえの?と、今ならテーブルをひっくり返して胸倉を掴みたくなるような賭けを持ち出されても、俺は「まぁ、やってみっか」くらいにしか思わなかった。俺の前で掛け金が積み上げられ、俺は、学生にしては大金となるだろうそれを、じい、と見てから、アルジュナを半年以内に落としてみせると宣言したのだ。

それからの俺はバイト先が一緒になったのも何かの縁だろうと理由をつけて、徐々に親交を深めていった。
俺が質問したことに、いちいちアルジュナは真面目に答えていた。
本当は地元の大学に進学する予定だったこと。けれどもそこは親族や、自身を知っている教授も多く、贔屓されたくなかったこと。実は自炊が苦手なこと。甘いものが好きなこと。小さい頃は外で遊んでばかりで、よく親に叱られたこと。
その一つ一つを告げるアルジュナの小さな唇の動きを、存外に俺は愛らしいと思っていた。

そしてどの流れだったのかは忘れたが、俺はアルジュナと二人でキャンプに行くことになった。
お坊ちゃん育ちだろうと思っていたけれど、なかなかどうしてアルジュナは森の中がやけに似合っていて、てきぱきとテントを組み上げていた。それに、川に釣りに行った際、空っぽだった俺のバケツに、そっと魚を入れてきた。
秋口だったせいか思ったよりも冷え、予備として持ってきた毛布に二人して包まったとき、ふふ、とアルジュナが柔らかく声を零した時の感動を、どう表したらいいのだろう。
少なくとも、このひとの心をもてあそぶようなことは、してはいけなかったのだ、と思ったのだ。
黙ってしまった俺を不思議に思ったアルジュナが俺の名前を呼んだ。それはこの世から見える一等星みたいな煌きで俺の心臓を討った。

しばらくして、俺は同級生たちに賭けから降りることを伝えた。皆はまぁ男だしなぁ、と俺の悪癖である女遊びが収まったことを気にしていたようで、難なく賭けはご破算。

そうして、俺は、今、アルジュナに、改めて告白をした。筈だ。
その、筈なのだ。




「ですから」

アルジュナが、まるで寄り添うように俺に体重を預ける。柔らかな髪が俺の首筋に触れる。けれどもそこにはチョコレートのような甘さもココアのような香りもない。ただ一つ、涼やかな、百合のような空気が匂い立っているだけ。

「私を落としたと、確認する方がいらっしゃるでしょう?これくらいで騙せますか?」

アルジュナの言葉が俺の足を、手を、その場に縫い留める。
俺はどう返答すべきなのか分からず、ただ脳裏に過ぎる過去の自分の言葉の息の根を止めたくてたまらなかった。

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