ジャンル:ロビジュナ お題:殺されたガール 制限時間:15分 読者:124 人 文字数:1601字 お気に入り:0人

【ロビジュナ】嘘だらけのこいびと

「付き合ってもらえませんか」

俺の言葉に、アルジュナは目を丸くして、え、と一つの音を呟いた。






俺とアルジュナは同じ大学で違う専攻を持つ学生だった。それが、バイト先が一緒だったという理由だけで、もともとの接点が濃かったわけではない。
アルジュナはこちらが気後れしてしまうほどに折り目正しい優等生であったし、俺はのらりくらりと波風立てない程度に真面目だったり不真面目だったりを手のひら返して生きている人種だった。俺はアルジュナが、俺と寝る女たちと同じように恋に狂う姿など想像できなかったし、例えば失恋に涙を濡らすことも単位が足りそうになくて冷や汗をかくこともないのだろうな、とも思っていた。
それはバイト先での挨拶程度の関係が、大学生活にも持ち込まれたときも同様だった。こんにちは、ロビンフッド、と、平坦に紡がれる音声に、AIかよ、と思ったことを、今でも覚えている。
だから、同級生たちが、お堅いアルジュナと知り合いかよ、と言ってきたときも、あまり深く考えていなかった。男にしては綺麗な顔だよな、という流れから、お綺麗な顔を歪ませたいという濁った願望に続いていった時も、俺は止めはしなかった。俺はその場で、確かに傍観者だった。
お前ならあいつを落とせるんじゃねえの?と、今ならテーブルをひっくり返して胸倉を掴みたくなるような賭けを持ち出されても、俺は「まぁ、やってみっか」くらいにしか思わなかった。俺の前で掛け金が積み上げられ、俺は、学生にしては大金となるだろうそれを、じい、と見てから、アルジュナを半年以内に落としてみせると宣言したのだ。

それからの俺はバイト先が一緒になったのも何かの縁だろうと理由をつけて、徐々に親交を深めていった。
俺が質問したことに、いちいちアルジュナは真面目に答えていた。
本当は地元の大学に進学する予定だったこと。けれどもそこは親族や、自身を知っている教授も多く、贔屓されたくなかったこと。実は自炊が苦手なこと。甘いものが好きなこと。小さい頃は外で遊んでばかりで、よく親に叱られたこと。
その一つ一つを告げるアルジュナの小さな唇の動きを、存外に俺は愛らしいと思っていた。

そしてどの流れだったのかは忘れたが、俺はアルジュナと二人でキャンプに行くことになった。
お坊ちゃん育ちだろうと思っていたけれど、なかなかどうしてアルジュナは森の中がやけに似合っていて、てきぱきとテントを組み上げていた。それに、川に釣りに行った際、空っぽだった俺のバケツに、そっと魚を入れてきた。
秋口だったせいか思ったよりも冷え、予備として持ってきた毛布に二人して包まったとき、ふふ、とアルジュナが柔らかく声を零した時の感動を、どう表したらいいのだろう。
少なくとも、このひとの心をもてあそぶようなことは、してはいけなかったのだ、と思ったのだ。
黙ってしまった俺を不思議に思ったアルジュナが俺の名前を呼んだ。それはこの世から見える一等星みたいな煌きで俺の心臓を討った。

しばらくして、俺は同級生たちに賭けから降りることを伝えた。皆はまぁ男だしなぁ、と俺の悪癖である女遊びが収まったことを気にしていたようで、難なく賭けはご破算。

そうして、俺は、今、アルジュナに、改めて告白をした。筈だ。
その、筈なのだ。




「ですから」

アルジュナが、まるで寄り添うように俺に体重を預ける。柔らかな髪が俺の首筋に触れる。けれどもそこにはチョコレートのような甘さもココアのような香りもない。ただ一つ、涼やかな、百合のような空気が匂い立っているだけ。

「私を落としたと、確認する方がいらっしゃるでしょう?これくらいで騙せますか?」

アルジュナの言葉が俺の足を、手を、その場に縫い留める。
俺はどう返答すべきなのか分からず、ただ脳裏に過ぎる過去の自分の言葉の息の根を止めたくてたまらなかった。

同じジャンルの似た条件の即興二次小説


ユーザーアイコン
作者:ツナ缶 ジャンル:ロビジュナ お題:清い年賀状 制限時間:30分 読者:230 人 文字数:927字 お気に入り:0人
思えば誰にも住所なんて聞いていないし、誰かに教えた覚えもない。アルジュナは頭を抱えた。このアルジュナとあろうものが恥ずかしい!新年の風習はこの国出身でないとは 〈続きを読む〉

梟光司の即興 二次小説


ユーザーアイコン
作者:梟光司 ジャンル:ロビジュナ お題:生きている黒板 制限時間:15分 読者:27 人 文字数:1534字 お気に入り:0人
「何してるんです?」「…………何も」アルジュナが俺の部屋にやってきた。ガッタンゴットンと荒々しくひっくり返して掃除をしたばかりの俺の部屋にやってきた。両隣が空き 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:梟光司 ジャンル:謝罪探偵すまないさん お題:オチは風 制限時間:15分 読者:39 人 文字数:1286字 お気に入り:0人
「探偵さんはさがしものもとくいですか?」アルジュナがそう言いながら探偵事務所を訪ねてきたのがついさっき。探偵さんはアルジュナにあたたかいココアを出して飲むように 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:梟光司 ジャンル:ロビジュナ お題:小説の会話 制限時間:15分 読者:39 人 文字数:1434字 お気に入り:0人
「いや、」俺が言いよどんでいると、アルジュナは少し俯き、眉を下げた。こんな時にどういう反応をすればいいのかと迷っているようでもあったし、裁きを待つ罪人のようでも 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:梟光司 ジャンル:ロビジュナ お題:有名な喜び 制限時間:15分 読者:29 人 文字数:1238字 お気に入り:0人
俺がアルジュナと出会ったのは、ある意味で偶然を重ねた上での必然だった。サーヴァント時代の記憶を有していると気付いたのは、物心も着く前だった。むしろ生まれ落ちた瞬 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:梟光司 ジャンル:FGO お題:鈍い奈落 制限時間:15分 読者:56 人 文字数:793字 お気に入り:0人
あぁ痛いなちくしょう。なんだってほんと、オレなんかが世界を背負っちまったんだろうな。平凡が服着て歩いてるような現代日本の中流家庭の次男でさ、こんな血とか煙とか剣 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:梟光司 ジャンル:FGO お題:群馬の極刑 制限時間:15分 読者:88 人 文字数:810字 お気に入り:0人
拝啓、お元気でしょうか。この手紙を読む頃、貴方はどうしているでしょうか。この手紙を受け取ってしまったということは、つまり、私はもう生きてはいないということでしょ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:梟光司 ジャンル:カルジュナ お題:光の仕事 制限時間:15分 読者:70 人 文字数:1527字 お気に入り:0人
後に残されたカルナではあったが、はっと正気に戻った後に慌てて車に舞い戻り、あのタクシーを追え!と声を荒げたのだった。「もう見えないよぉ~ムリムリ~!」「アルジュ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:梟光司 ジャンル:カルジュナ お題:団地妻のオチ 制限時間:15分 読者:64 人 文字数:1370字 お気に入り:0人
さて、カルナは今日も今日とてアルジュナと共に登校する。アルジュナとカルナは文系理系クラスで正反対に位置しているとはいえ、同様の特別進学コースに在籍しており、なお 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:梟光司 ジャンル:ロビジュナ お題:素晴らしい外側 制限時間:15分 読者:65 人 文字数:1611字 お気に入り:0人
申し上げましょう、申し上げましょう。この僕の言葉で事足りるのであれば。えぇ、時間は大丈夫です。今はちょうど休憩時間ですから。刑事さんたちも、つい先日までこちらに 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:梟光司 ジャンル:カルジュナ お題:神の夕飯 制限時間:15分 読者:75 人 文字数:1435字 お気に入り:0人
「何故あやつに執着する」信長は特盛の豚骨ラーメンを今まさにすすろうとしながらカルナに問いかけた。カルナはというと、こちらも特盛の、味噌バターラーメンの麺をすすれ 〈続きを読む〉