ジャンル:おそ松さん お題:重い地獄 必須要素:桃太郎のストーリーを自分流にアレンジ 制限時間:30分 読者:33 人 文字数:813字 お気に入り:0人

独りよがりなタップダンス

チビ太の屋台で呑んだくれた帰り道に、一松は奇妙な卵を拾った。吐こうとした電信柱の影に、白地に青のぶちの入った卵に貼り付けられた付箋と「お優しい方、どうか拾ってください」と書かれた丸文字を見てしまった一松は、持ち前の真面目さと律儀さを遺憾なく発揮して、松野家に持ち帰ってしまったのだった。

卵は丸くつやつやしていて、時たまカタリと動く。どうやら温めた方が動くようなので、炬燵で卵を抱えながら蜜柑をもそもそ頬張る生活をしていた。「にーさーん!卵っすか!?誰の!?」「…知らない。拾った。」「じゃあ、一松にーさんがお母さん!!」「は?」どうやら十四松の中では一松イコール卵の母親 という方程式ができてしまったようだ。「一松、ママになんの?わはは〜〜」なんて缶ビール片手に一松ににじり寄って来たおそ松は、足をもつれさせて一松に倒れこんでしまった。ぐしゃ。 「あ」


一松は粉々になった卵の殻と、中身のどろりとした緑色の粘液を洗面器に入れて、抱えて泣いていた。一松はこういう、ひたすらにマッチを売る可哀想な少女の話だとか、主人を待った従順な犬の話だとかに弱いのだった。一松は残骸を眺めながら流れてくる涙をべろりと舐めた。「一松。ご飯だぞ」カラ松が声をかけてくる。何も言わずに洗面器に頬をすり、と擦り付ける。ああ、可哀想な子。「…食べなければ、死んでしまう」そんな声が聞こえてきて、一松は怒りが喉の奥をどろり、溶かすような心地になった。「なんでそんなこと言うんだよ!!当てつけかよ!!守ってやれなかったオレは、、くそぉ…」わかっている。完全なる八つ当たりをしているなんて。「お前のせいじゃあ、ないだろう」そんなことも知っている、気づいている!一松は喉をひゅーひゅーと鳴らすと、再び洗面器に頬を擦り付けた。次は猫になって、あなたに会いたいな、という声が聞こえた気がした。誰か俺のために、俺を断罪してくれ。許してくれ。赦さないでくれ。

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