ジャンル:メギド72 お題:つらい失踪 制限時間:30分 読者:24 人 文字数:1932字 お気に入り:0人

灰燼 ※未完


 勇敢か臆病かと問われたら臆病だったといえるだろうし、誠実か不実かと問われたら誠実であったといえるだろう。だから前線基地に舞い込んできた噂に対してフォカロルが発した第一声は「まさか」だった。優秀な兵士には褒美として休暇が与えられ、家族や知人と会うことが許される。王都に家族を呼ぶか、自分が故郷に出向くかは人によって異なるが、彼は自分が故郷へ出向く方を選んだ。
 ――母が脚を悪くしていて、妻が世話をしてくれているんです。
 ――子供の世話もあるのに、ほんと感謝の気持ちでいっぱいなんですよ。
 そう笑っていたのはつい一週間前のことで、フォカロルは思わずカレンダーを撫でた。彼がこちらへ戻ってくるのは明後日の予定だ。
「アイツが強盗でとっ捕まったってのはどういう意味だ?」
「いや、噂なんで詳しくは分かりませんが、王都からはすぐに代わりの騎士を向かわせるということです」
 通知書を差し出してきた部下を一瞥してから、フォカロルはその紙の束を流し読みした。簡単なことをわざわざ回りくどく記述している文章に時間を割く余裕などない。顎へ手を添える。考えるときのクセだ。今後のこと。そして、あの部下のこと。
 この“地獄”にやってくる新人がどんな人物かは分からないが、せめて少しは扱いやすい人材だといい。そんなことをフォカロルは思った。


 騎士の名を伝えればフェニックスは少し目を見開いたが、動揺しているわけではなさそうだった。
「ヤツはどうなった? 死刑か?」
「お知り合いですか?」
「質問に答えろ、死刑かどうかを聞いている」
「ええ、残念ながら」
 フェニックスの唇はそう動いたが、彼はちっとも残念そうではなかった。
「それは残念だ」
 フォカロルも、同じだった。
 彼が強盗で捕まったと聞いたとき、フォカロルはまさか、と思った。思ったどころか口に出していた。だが事情を知れば知るほど、彼を庇うことは出来なくなっていた。
 帰省したはずの男は何故か村に滞在することなく、近隣の村に住む住人の家へ侵入した。金品を漁っているときにその住人が帰宅。パニックになった男は思わず一家を殺害し、色々なものを奪って逃走した。何が奪われたのかは男が既に捨ててしまったか壊してしまったかして行方不明になってしまったのでどうしようもなかった。だが「不法侵入の挙げ句殺人、強盗」となれば死刑をもらってもオツリが来る。
「ヤツの家族はどうなった?」
「連絡がつかないんですよ。村の名前が存在しないんですから」
 馬鹿言うなとフォカロルは鼻で嗤う。処刑人の情報収集能力はその程度なのかと言いたくなるのを堪えた。この小言はきっと言葉が意味する以外の余計なニュアンスを含むような気がして、吐き出す気になれなかったのだ。
「存在しないわけないだろう。何なら案内してやろうか」
 少しばかりの皮肉を込めたフォカロルに、フェニックスは意外な反応を見せた。
「それは助かります、こちらもお手上げだったんですよ」



 村に、否、村だった場所に到着するなり鼻腔を殴りつけてきたのは強烈な炎の残骸だった。モノが焼けたという悪臭に思わず顔をしかめるが、そのおかげでこの周辺には野生動物どころか幻獣すら寄りつかないらしい。
「幻獣に村を焼かれて、家族もろとも皆殺しにされたようですね」
 フォカロルの後をついてきたフェニックスが淡々と説明を投げた。村の奥、全て全てが黒く燃え尽きた中で、やたら鮮やかにその色彩を主張するものがあった。フェニックスが中身を物色する。おい、と声を荒げたフォカロルに、フェニックスは中身を見せてきた。ふわふわの熊のぬいぐるみだ。つい先日、コルソンがこれと似たようなやつを連れ歩いているのを見た気がする。
「お土産に買ったお菓子も玩具も、焼け野原となった村では役に立ちません」
 続いて取りだしたのは木でできた人形だった。くりくりとした黒い目。とんがった鼻だけが赤く塗られていて、大きく弧を描く唇は彫刻刀で彫られている。腕と脚は紐なので、机か棚の上に置けば可愛らしくお座りしてくれることだろう。
「貴方の言うことが確かなら、彼の喪失感というのは相当なモノでしょうね」
 最後に取りだしたのはクッキーと紅茶の缶だ。どちらも一級品で、この場にシトリーが居れば取り扱っている店の情報も得ることが出来たかもしれない。だが、それは不要なものだ。
「……金品なんて奪ったところで、意味なんてないでしょうに」
 呆れたようなフェニックスを見て、フォカロルは何も言わなかった。らしくないとは思ったが、それはきっとフォカロルも例外ではないだろう。
 熊のぬいぐるみが、うつろなめをこちらに向けていた。

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