ジャンル:DD! お題:つらい故郷 制限時間:30分 読者:22 人 文字数:1426字 お気に入り:0人

張り込み中の小噺 ※未完

「故郷、か」
「うん?」
「いや、ほら。あの二人がさっき観てた映画でさぁ言ってたじゃん。故郷に帰って、恋人と結婚式を挙げるんだーってさ」
「ああ、あの死んだ警官がな」
「そうだけど他にもうちょっと言い方ってもんねえのかよ」
 今日も今日とて張り込みだ。フェーズ1の容疑者の自宅が見える位置にある立体駐車場に停めた車内から様子を覗き、仕掛けてある盗聴器越しに中の会話を聞く。どうやら今回もハズレだったらしく、容疑者の男は恋人とふたりのんびり映画鑑賞していた。映画の内容は悲恋もので、ようやく両想いになった幼馴染と結婚する直前に主人公は亡くなるのである。それだけなら、多分あまり気にせずよくある物語と片付けていただろう。だが、主人公の男は警察官だった。愛する人と共に生きる事より、目の前にいる小さな子供を守るためにその身を犠牲にしたのだ。現在進行形でその職務の真っ最中な警察官である自分にとって、他人事ではない。
「結婚式さ、故郷の田舎で挙げたいって話してたじゃん。あの主人公。家族はみんなもう死んでるから、待ってる人も居ない筈なのに。戻りたいものなのかなって思って」
「そこは人によるんじゃないか?」
「そりゃそうだろうけど。俺にとってはさ、ミラやじいちゃんと過ごした場所だから楽しい事もつらいことも沢山あった場所だけど……別に戻りたいとは思わないんだ。だから、結構その感覚は不思議でさ。だからちょっと聞いてみたかったんだ」
「ふうん」
 ダグの視線が窓から外され、手元のあんぱんへ映る。もぐもぐと咀嚼した後、ブラックコーヒーで飲み込んだ。彼にとっては窓越しに見える映画より手元の食事の方が優先度は高いのだろう。
「ダグは?」
「うん?」
「故郷に帰りたいって思う?」
 ダグの口元へあんぱんがもう一口運ばれる。何か考えているのかいないのか、常と変わらない表情でさらに一口あんぱんを齧った。
「そうだな……俺は場所に対するこだわりが薄いから、あまりそうは思わない」
「そっか」
「ああ、でも」
 残りのかけらを口に運んで、ブラックコーヒーをひとくち。ごくりと音を立てて飲み込まれれば、食事は終わりだ。ダグの視線が窓ヘ向く。
「隣にお前がいるなら、別にどこだっていいよ。俺は」
「……は?」
「こいつ、多分シロだな。次いくか」
「え? ああ、うん。そうだな。じゃあ次こいつは?」
 故郷の話からなぜ自分の話になったのか。話の飛躍に少々ついていけないものの、今は仕事中だったと思い出し頭を振る。
「うん。丁度2ブロック先だし……近いな。このまま行くか」
「おう!」
「ところでヴルーベリ巡査」
「うん? なんだよダグ」
「一応あれ、俺としては告白のつもりだったんだけど。分かってる?」
「…………は?」
 捜査ファイルを手にしたまま、ダグの横顔を見上げる。いつもと変わらない、何を考えているのかいまいち分からない顔だ。
「ダグは俺の事好きだったの?」
「好きだよ。お前が考えてるよりずっとね」
 こんな会話の最中に発進させた車は、平日昼間の街中を走り出した。ムードも何もあったものではない。
「こんな時に言う?」
「別にどんな時だっていいだろ」
「いや、でもさぁ……確かにそうだけど」
「だろ? それで、返事は? イエスかはいで」
「それどっちも同じじゃねえ?」
 笑いながら二つの太陽に照らされた街を見遣って、再びダグを見上げる。やはり、表情は変わらない。

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