ジャンル:DD! お題:3月の虫 制限時間:30分 読者:46 人 文字数:1076字 お気に入り:0人

この愛を銃声よりも高らかに響かせて

 例えばこの少しばかり小さくて、誰よりも明るく輝くこの相棒が何の変哲もない人だったとしても。多くの人がそう誤解するように、ただ頭が悪いだけの人物だったとしても。それでも彼が彼である以上は、それ以外になにも要らないのだ。
 例えば彼がこの世界を救う核だったとして。自分の望みである貧困と格差をなくすには、彼の存在が世界に捧げられればそれが叶えられるのだとしたら。それでもやはり自分にとって彼は必要不可欠で、求めずにはいられないのだ。
「お前は最高のパートナーだよ、キリル」
 その言葉を声に出して伝えられたら、運命はどう変わるのだろうか。誰もが彼に惹かれ、彼の肉体、頭脳、美貌、その細胞のひとつに至るまでを多くの者が求めて手を伸ばすような現状で。純粋で優しいが故に御しやすい彼を、誰かが手中におさめてしまうことはきっと容易い。
「ヴルーベリ巡査には、悪い虫がつきやすそうだな」
「はあ? なんだそれ。虫の季節じゃないだろ今」
「うん。そうなんだけど。まあ、なんていうかさ」
 いつだったか、そんな会話をしたのだ。彼は終始納得いかないような、理解しきれていない表情を浮かべていたが。春を待つ虫が、あたたかな光に誘われて外へ出るように。彼の存在そのものが春の到来だと思い込んで近寄ろうとする人間は後を絶たないのだろう。自分もそのひとりであるが故に、簡単に想像ができてしまう。
 けれど、自分は彼を選んで彼は自分を選んだ。ダブルデッカーシステムに便乗した形ではあるものの、多分お互いが引力のように惹かれ合ったのだ。結果的に、お互いが唯一無二のパートナーになったのだからもうこれから先の人生において彼の手を誰かがとることはできない。させはしない。どんな人間にも、人間離れした者にも、どれだけ彼を愛そうとも。彼に愛されるのはこの世でただ一人、自分だけいれば充分だ。
「さて、迎えにいきますか」
 タイミングを見計らい、施設へと足を踏み入れた。計画通りに事が進むかどうかは今の時点では分からない。けれど、彼が自分を救い出してくれたように。今度は自分が彼を救い出すのだ。自分にとってのヒーローである彼に似合いの相棒であり、胸を張って彼のヒーローとなるために。そして、もう二度と手放せはしない彼を再び手の届く場所に繋ぎ止めるために。そして、多くの人に愛されている彼を誰より愛しているのが自分のだとあらためて主張するために。見苦しいこの嫉妬心を彼は笑うだろうか、それとも照れるのか。まだ伝えきれていないこの想いを伝えた時の反応を想像し、銃撃と爆発音をBGMに小さく笑った。

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