ジャンル:DD! お題:恥ずかしい血痕 制限時間:30分 読者:117 人 文字数:1522字 お気に入り:0人

13話ネタバレ有りなデリミラ ※未完

「ううーん……いや、でもなあ……」
「おはようございま……どうしたの? デリックさん」
「ああ、ミラ。おはよう」
 いつも通りにバーの扉を開くと、店長は頭を抱えて唸っていた。良く言えば個性的なこのバーは、開店前の時間という事を差し引いても人の気配はない。開店しても、この店長の知人以外はあまり来ないのだけれど。現状、それでも客が来るのはひとえにこの店長の人徳のみだろう。
「あのさ、ミラ……雇ったばかりで申し訳ないんだけど……」
「……?」
 ひどく重たい口を開いた店長は、それでも言葉に迷っている様子だった。素性は言えないと話した時ですら、笑ってそれでも良いと答えたこの人にしては珍しい。客の来ないこの店で、自分や弟の素性を探る者が来た覚えはないが何かあったのか。それとも、いまテーブルに広がっている紙に自分の素性でも書かれていたのか。
「給料、もう少し待ってくれても良いか?」
「へ? ああ、そっか。給料日だったっけ」
「明日だけどな」
 見たところ、テーブルの上には請求書しか無いようだ。どこかからの手紙や書類の類は見当たらない。
「経営、厳しいの?」
「物価がなぁ……あと家賃も」
「ふーん……」
 断わりを入れてから広げられていた請求書を1枚ずつ目を通す。いつも使う缶詰も、けして安いものではない。塵も積もれば山となる。請求額はそれなりに上るだろう。
「このままだとバーも畳むかもしれないな……せっかく来てくれたのに、ごめんなこんな話して」
「ううん。いいよ。それより、今来てる請求ってこれで全部?」
「え? ああ、うん」
「これちょっと借りていいかな?」
「良いけど……そんなものどうするんだ?」
「ありがとう。少し出てくるから、後で返すね」
「へ? ミラ?」
 軽く計算しただけでも結構な額だ。退職金はこの二階建てバス型のバーを建てる際に使用したと話していたので、貯蓄の類は期待できないのだろう。まとめた請求書の束をポケットに仕舞って店を出た。まずは銀行だ。


「ただいま、デリックさん」
「おかえり……いきなりどうしたんだ、ミラ」
「ちょっとね。はい、これ返すよ」
 持って出ていった請求書の枚数と同じ数だけの領収証を店長に手渡す。開店時間はとっくに過ぎているが、やはり客の姿はない。目を白黒させる店長の隣を通り過ぎ、グラスを磨く作業に入った。
「ミラ、これ、どうして」
「あのね、デリックさん。私も、好きなんだ」
「へ?」
「この店が」
「あ、うん。店の方か」
 今のところ、いつまでここに居られるかは分からない。本当なら、キリルが通うこの店から離れた方が良いのだろう。大きく成長したたったひとりの家族がこれから先の人生を幸せに生きるためには、自分が居てはいけないだ。彼の今の暮らしを、幸福を阻害する要因になりかねないのだから。それでも、偶然とはいえ出会えた幸運に縋りたくなるほどには焦がれていた。10年触れずに生きてきた人の温もりを、願い続けた家族の元気な姿を、こんなにも早く手放したくなどないのだ。
「お給料も、ここの維持費も、必要なら私が負担するから。もう少しだけ、一緒に頑張ろうよ」
「でも、それは流石に……」
「お金の事はさ、お店が軌道に乗った後に返してくれれば良いよ」
 いつかこの店が流行る日が来るかは分からない。その時に自分がここに居られるかも分からない。だけど、一緒に暮らすこともできない家族と唯一繋がることのできる場所だ。再会を果たした思い出の場所でもある。誰とも繋がりを持つこともなく、思い出なんてどこにも作らなかった自分の最初で最後の思い出なのだ。金で買えるなら、いくらでも出そう。
「私にとっても、

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