ジャンル:DD! お題:疲れたピアノ 制限時間:30分 読者:120 人 文字数:1170字 お気に入り:0人

クリスマスの話 ※未完

ピアノの旋律が遠く聞こえる。人々のざわめきと、煌びやかなイルミネーションも建物の隙間から見えた。おそらく、どこかでクリスマスパーティーでも行われているのだろう。一日中演奏していて疲れはしないのかと心配になるが、よくよく考えてみればひとりで演奏しているとも限らない。途中で交代くらいするだろう。
「やっとひと段落ついたな」
「そうだね、お疲れ様」
「ミラも、お疲れ様。むしろミラの方が疲れただろ? ずっと注文途切れなかったし」
「楽しかったから大丈夫だよ。でも、少しだけ疲れたな」
 ピアノの旋律が止んで、別の曲へと変わる。アップテンポな曲が続いたので、今度は落ち着いた曲調だ。
「そろそろ客も来ないだろうし、店仕舞いにするか」
「そうだね。夜は冷えるから」
 路面のオープンカフェは、この時期とても寒い。ミラの提言でヒーターを設置しているが、それでも壁の無い空間には風が入り込むのだ。そのため、昼間は兎も角として夜に人は少なる傾向にある。
「折角のクリスマスなのに、一日中働かせて悪かったな」
「いいよ。それに、キリル達だって今日は仕事だし。ひとりで居るよりは働いてた方が気も紛れるから」
 小さく笑って、ミラは閉店準備を進めていた。俺の方も、ヒーターの電源を消して順番に片付けていく。ムーディーな曲が届くこの空間では、ムードも何もないいつも通りの作業だ。
「中に戻ったら何か淹れるよ。何飲みたい?」
「良いの? そうだなぁ……温かいものがいいな。甘いやつ」
「オーケー。デリック特性ホットカクテルを楽しみにしててくれ」
「うん」
 具体的な希望ではなく、こうして曖昧な内容のドリンクを頼んで来るのはミラなりの甘えだと最近気付いた。そして、希望通りでも予想と違っても、いつだって嬉しそうに笑うのだ。両手で大切そうに包まれるグラスにうっかり嫉妬してしまいそうになるほどに、彼女は昇華された甘えを口に含む。その瞬間が俺は好きだ。閉店後の店内で二人きり、グラス一杯を飲み干すまでのその時間が。
「はい。お待ちどうさま」
「ありがとう。今日はどんなカクテル?」
「リンゴと蜂蜜とベリーと……あとまあ色々だな!」
「ふふ、名前は無いんだね。いただきます」
 closeの看板を立て掛けた店の奥で、ミラと向かい合う。ホットカクテルは二人分作っていたので、カップに息を吹きかけるミラをそっと眺めながら自分のカップを手にした。
「……美味しい」
「そりゃあ良かった」
 カップからひとくち飲み込んだミラがほっと息を吐いた後に笑顔を見せた。雪解けのような、春の陽射しのような温かな表情である。
「ありがとう、デリックさん。良いクリスマスプレゼントだったよ」
「喜んでもらえて良かった……いやクリスマスプレゼントこれで終わりじゃねえよ?」
「え、そうなの? 」

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