ジャンル:DD! お題:意外!それは百合 制限時間:30分 読者:69 人 文字数:1188字 お気に入り:1人

花を添えた午後休み

「ユリってさ、やっぱり百合の花が好きなのか?」
「……名前に入っているから?」
「うん。やっぱり名前に入ってるものって目につきやすいし、人からもよく貰ったりしない?」
「そうね。……確かに、マックスからよく貰うかな」
 そんな風に答えると、キリルは「やっぱそうかー」と言って笑った。つられて私も笑う。今は人が出払っていて、オフィスに二人きりだけれどなんだかここは笑顔が増えたように感じる。
「百合の花、香りも含めて私は好きだよ。でも、」
「でも?」
「花の中でも香りが強い方だし、花粉が飛びやすいでしょう?」
「うん」
「だから、お見舞いには向かないと思うな」
「え、いや、別にダグの見舞いに選ぶとかそういう事じゃ……」
 休憩のために淹れた紅茶をひとくち飲み込んで告げれば、キリルは分かり易く狼狽した。多分、この後に続く言葉はそれぞれの好きな花で、最後に彼の相棒がどんな花を好むのかという話題になるのだ。
「ダグさんの好きなものを訊きたかったんでしょう?」
「う……その通りです」
「多分ね、それは私よりキリルさんの方がよく知っているんじゃないかな」
 ダグラス・ビリンガム。階級は巡査部長。好物はあんパンとブラックコーヒー。誕生日は9月12日。血液型は……そういった、表面上のプロフィールならすぐに出てくる。多分、このオフィスの人間なら誰でも。けれど、彼が時折見せる柔らかい表情だとか相棒にだけ囁く小さな声の言葉の甘さだとか、そういったものを受け止め続けている人が持つ情報量には遠く及ばないのだ。
「あなたしか知らない彼の事、多分たくさんあるんだよ。ヒントはきっとその中にあるんじゃないかな」
「うーん……そっかなぁ……」
「難しく考える必要はないと思うよ。多分、キリルさんが選んだものがダグさんの好きな物だろうから」
「へ?」
「好きな人から貰う物は、それがお花でもチョコレートでもコーヒーでも、何だって嬉しいでしょう?」
「確かに、そうかも!」
 ガッツポーズを決めながらキリルが立ち上がったタイミングで、ディーナとケイがオフィスへと戻ってきた。「うるっせーぞバカリアゲ」の声と共に。
「ありがとな、ユリ!」
「どういたしまして」
 遅れて入ってきたマックスが首を傾げて歩み寄って来た。オフィス内にいつもの賑やかさが戻る。
「ユリ、何か良い事あった?」
「うん、あったよ。マックス」
 賑やかにトラヴィスのオフィスへと走っていった彼は、多分半休の申請でも出すのだろう。その真っ直ぐさに、多分病室の彼だけでなく皆が救われているのだ。
「キリルからね、しあわせのおすそ分けを貰ったの」
「そっか、良かったね」
 彼は一体どんな花を選ぶのだろうか。お見舞いから帰った後にでも訊いてみよう。明るい笑顔の彼がその想いを乗せて選ぶ花束の色を想像して、小さく笑みがこぼれるのだった。

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