ジャンル:DD! お題:意外!それは百合 制限時間:30分 読者:107 人 文字数:1188字 お気に入り:1人

花を添えた午後休み

「ユリってさ、やっぱり百合の花が好きなのか?」
「……名前に入っているから?」
「うん。やっぱり名前に入ってるものって目につきやすいし、人からもよく貰ったりしない?」
「そうね。……確かに、マックスからよく貰うかな」
 そんな風に答えると、キリルは「やっぱそうかー」と言って笑った。つられて私も笑う。今は人が出払っていて、オフィスに二人きりだけれどなんだかここは笑顔が増えたように感じる。
「百合の花、香りも含めて私は好きだよ。でも、」
「でも?」
「花の中でも香りが強い方だし、花粉が飛びやすいでしょう?」
「うん」
「だから、お見舞いには向かないと思うな」
「え、いや、別にダグの見舞いに選ぶとかそういう事じゃ……」
 休憩のために淹れた紅茶をひとくち飲み込んで告げれば、キリルは分かり易く狼狽した。多分、この後に続く言葉はそれぞれの好きな花で、最後に彼の相棒がどんな花を好むのかという話題になるのだ。
「ダグさんの好きなものを訊きたかったんでしょう?」
「う……その通りです」
「多分ね、それは私よりキリルさんの方がよく知っているんじゃないかな」
 ダグラス・ビリンガム。階級は巡査部長。好物はあんパンとブラックコーヒー。誕生日は9月12日。血液型は……そういった、表面上のプロフィールならすぐに出てくる。多分、このオフィスの人間なら誰でも。けれど、彼が時折見せる柔らかい表情だとか相棒にだけ囁く小さな声の言葉の甘さだとか、そういったものを受け止め続けている人が持つ情報量には遠く及ばないのだ。
「あなたしか知らない彼の事、多分たくさんあるんだよ。ヒントはきっとその中にあるんじゃないかな」
「うーん……そっかなぁ……」
「難しく考える必要はないと思うよ。多分、キリルさんが選んだものがダグさんの好きな物だろうから」
「へ?」
「好きな人から貰う物は、それがお花でもチョコレートでもコーヒーでも、何だって嬉しいでしょう?」
「確かに、そうかも!」
 ガッツポーズを決めながらキリルが立ち上がったタイミングで、ディーナとケイがオフィスへと戻ってきた。「うるっせーぞバカリアゲ」の声と共に。
「ありがとな、ユリ!」
「どういたしまして」
 遅れて入ってきたマックスが首を傾げて歩み寄って来た。オフィス内にいつもの賑やかさが戻る。
「ユリ、何か良い事あった?」
「うん、あったよ。マックス」
 賑やかにトラヴィスのオフィスへと走っていった彼は、多分半休の申請でも出すのだろう。その真っ直ぐさに、多分病室の彼だけでなく皆が救われているのだ。
「キリルからね、しあわせのおすそ分けを貰ったの」
「そっか、良かったね」
 彼は一体どんな花を選ぶのだろうか。お見舞いから帰った後にでも訊いてみよう。明るい笑顔の彼がその想いを乗せて選ぶ花束の色を想像して、小さく笑みがこぼれるのだった。

同じジャンルの似た条件の即興二次小説


見つかりませんでした。

ろと@お原稿中の即興 二次小説


ユーザーアイコン
作者:ろと@お原稿中 ジャンル: お題:苦しみの男 制限時間:30分 読者:17 人 文字数:1469字 お気に入り:0人
「あ、この曲……」「切ないわよねぇ、誰だって好きな人の運命の人になりたいのに。それをこんなに綺麗に歌われちゃうとさ。傷心の時なんかは特に沁みるのよー……って、あ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:ろと@お原稿中 ジャンル: お題:走るしきたり 制限時間:30分 読者:22 人 文字数:1279字 お気に入り:0人
日曜昼、吾妻橋をのんびりと歩いている最中の事だった。「走って!」「は?」 どこか懐かしいロングヘア―の一稀が、ハイヒールのまま走って来たと思ったらこちらの右手 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
霊律 ※未完
作者:ろと@お原稿中 ジャンル:mp100 お題:くだらないサイト 制限時間:30分 読者:20 人 文字数:1685字 お気に入り:0人
学校帰りの通学路で見知った詐欺師と遭遇したのも、それが7月2日の午後5時だったのも、ただの偶然でしかなかった。今日は従業員がみんな休みだとか、幸いにも依頼が来 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:ろと@お原稿中 ジャンル: お題:当たり前の誰か 制限時間:30分 読者:21 人 文字数:1477字 お気に入り:0人
当たり前の日常なんてもの、実は存在しないんだってことを知ったのは中学生の時だった。今度こそ大切にしたいと思った繋がりを失いかけたり、それでも手を伸ばしたり。結 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:ろと@お原稿中 ジャンル: お題:オレだよオレ、美術館 制限時間:30分 読者:47 人 文字数:897字 お気に入り:0人
例えば知らない間に見知った店が閉店していたり、別の店に変わっていたり。建物ごと消えたり増えたり。それによって道路や街の景色さえ変わっていたり。時間が経つという 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:ろと@お原稿中 ジャンル: お題:暴かれた祝福 制限時間:30分 読者:26 人 文字数:1194字 お気に入り:0人
良くも悪くも無関心であることは、幸福なのか不幸なのか。良かったのか悪かったのか。今となっては分からないけれど。それでも、この想いが漏洩したその後でも友人でいら 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:ろと@お原稿中 ジャンル: お題:ぐちゃぐちゃのコンサルタント 制限時間:30分 読者:41 人 文字数:1160字 お気に入り:0人
隣でスマートフォンの画面を無表情に眺め時折画面をタップするその指先を、見るともなしに眺める。先程までの笑顔が嘘のように、凪いだ瞳はまるで無機物のようだ。「久慈 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:ろと@お原稿中 ジャンル:DD! お題:今日のゲストはクリスマス 制限時間:30分 読者:45 人 文字数:1149字 お気に入り:0人
『それでは! ここで一曲挟んでからお待ちかねのゲストが登場です! なんと、今日のゲストは……クリスマスといえば、この人なあのお方が登場です! お楽しみにぃ! で 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:ろと@お原稿中 ジャンル:DD! お題:混沌の町 制限時間:30分 読者:54 人 文字数:873字 お気に入り:0人
窓から見えるふたつの太陽が沈んでいき、夕日の赤色に夜の色が混じり始める時間帯。インクを幾つも混ぜ込んだような複雑な色合いの空が、存外に好きだった。「お客さん、 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:ろと@お原稿中 ジャンル:DD! お題:ワイルドなフォロワー 制限時間:30分 読者:60 人 文字数:1193字 お気に入り:0人
「取材、ですか?」「ええ、『街中で見付けた絶世の美女!』って特集なんですけどね。噂の美人店員を密着取材させて頂きたくって。いかがです? 全国放送なんで、良い宣伝 〈続きを読む〉