ジャンル:キルミーベイベー お題:贖罪の蟻 制限時間:15分 読者:45 人 文字数:1116字 お気に入り:0人

ごめんね、ソーニャちゃん

嗚呼、私はやってしまった。
やってしまったのだ。
赤黒い血液に汚れた、自らの両手を見る。
どうして、どうしてこんなことをしてしまったのだろう。
目の前に倒れているのは、あの金髪の少女だ。
私のかつての友達。私の大切な友達だったもの。
それが、どうして、どうして?
記憶を遡る。
それは、つい数分前の事だった。
物静かな、誰もいない教室の中、彼女はわたしに言ったのだ。

「ごめん、やすな。」

「………急に組織から連絡が来て、来週、ロシアに帰ることになったんだ。」

「え…?」

頭が真っ白になった。ソーニャちゃんが帰る?ロシアに?私を置いて?
そんな。

「待ってよソーニャちゃん、ソーニャちゃんが居なかったら、私…」
「本当にごめん。こればっかりはどうしようもないんだ。」
「なんでよ…」
「なんでよ!!」
耳に届いていた音が、一気に歪むのを感じた。同時に、とてつもない吐き気が襲った。
キーンと続く耳鳴りは、さらにそれを酷くさせ、私は何も理解出来ぬまま、彼女のポケットに入っていたナイフを手に取った。
「やすな…?」
「ソーニャちゃんがいなかったら、私、私…っ!」
「やめろ、おい!」
「私、何にもできないよ!!なんで私を置いていこうとするの!?酷いよ、酷いよソーニャちゃん!」
「やすな、落ち着け…!私はそんなこと、」
「ソーニャちゃんなんて友達じゃない!組織の人に、組織の人に日本に残るってはっきり言えばよかったのに!私、1人になったら何にもできないの知ってるでしょ!?酷いよ!!!」
「やすな…!」
ソーニャちゃんの悲しそうな目が、私に向けられる。私は頭に血が上って、涙を流して、自分のことしか考えられないまま、ナイフを。
「ソーニャちゃんの馬鹿っ!!!!!」
彼女の胸に刺したんだ。

「ああ、あああ、…!!」
夕暮れが私を照らす。今思うと私はなんて馬鹿なことを。
自分でも、ソーニャちゃんがいなければ何も出来ないって分かっていたはずなのに。
突然、耳鳴りが消える。
全てを包み込むように、温かい夕焼けが私を照らし続ける。
私はぎゅう、と、自らの拳を握り、瞳を閉じた。
ソーニャちゃんがいなければ何も出来ない。何も。生きることすら出来ないんだ、私は。
それなら。
自らの手を夕焼けに伸ばす。
その姿は、ああまさに。
「贖罪の、蟻……なんちゃって。」
私は、先程手放した血塗れのナイフをもう一度握った。
そして、さっきと同じように、胸に突き立てた。
ソーニャちゃんのではなく、自分の胸に。
ソーニャちゃん、ごめんね。
こうすれば、許してくれるかな。
また会えるかな。
ごめんね。
ありがとう。
今、行くから。

終わり

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