ジャンル:炎の蜃気楼 お題:右の哀れみ 必須要素:やかん 制限時間:30分 読者:142 人 文字数:456字 お気に入り:0人

おもち

シュンシュンと音を立ててやかんが湯気を吹く。
「直江」
呼びかけると、無言で肩を抱き寄せられた。
今時珍しい石油ストーブの赤い火に照らされた頬が熱い。
別に、寒いわけじゃない。こんなに近くに寄り添ってストーブにあたる必要などないのだが、黙って従う。
直江は、二人でいる時には常に触れていることを求める。何かをするではない、ただ近くに、例えば指先だけでも。
もちろんその先に至ることも多いのだが、なにより自分がそこにいることを確かめるように、温もりに触れたがるのだ。
その事が、愛される証だと嬉しくもあり、まだ直江の中で、オレは直江の前から去るものであるのだろうか……と切なくもある。己が男に与えてきた痛みの深さを思う。
「あ、膨れた!」
ストーブの上で、こんがりと色付いた餅が破れ、膨らむ。
「高耶さん、お先にどうぞ」
「サンキュ」
隣で柔らかく笑む男の心に、まだ硬い鎧があることを知っている。オレの罪だ。
いつか。いつか本当に白くて柔らかいところを見せて欲しい。
オレの隣で。


同じジャンルの似た条件の即興二次小説


ユーザーアイコン
作者:きぬ@通販はプロフ参照 ジャンル:炎の蜃気楼 お題:フニャフニャの机 必須要素:パーカー 制限時間:30分 読者:63 人 文字数:556字 お気に入り:0人
「宿毛砦長橘、入ります」答えを待たずに入室すると、高耶は眠っていた。恐らくは眠らずにあれこれと、組織が大きくなれば避けられない書類仕事を片付けるつもりだったのだ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
故郷へ ※未完
作者:きぬ@通販はプロフ参照 ジャンル:炎の蜃気楼 お題:群馬の監禁 必須要素:MD 制限時間:30分 読者:34 人 文字数:326字 お気に入り:0人
車に乗せられても高耶は行先を聞かなかった。車はずいぶん古いものらしく、MDプレイヤーが搭載されていて、男が無造作に散らばっていたうちのひとつを押し込むと、今はも 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:きぬ@通販はプロフ参照 ジャンル:炎の蜃気楼 お題:朝の孤独 必須要素:切符 制限時間:30分 読者:49 人 文字数:800字 お気に入り:0人
入場券を買った。始発の新幹線で名古屋に発つのは直江ひとりだ。いつも一緒に暮らしているのだし、別にそこまでして見送る必要なんてない。けれど小さな厚紙が何だか懐かし 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:きぬ@通販はプロフ参照 ジャンル:炎の蜃気楼 お題:綺麗なにわか雨 必須要素:海苔 制限時間:30分 読者:42 人 文字数:1069字 お気に入り:0人
明日の弁当の海苔がないことに気づいたのが、夕方の四時だった。別に弁当に必ず海苔を入れなければいけない決まりなどないけれど、明日は海苔弁にすることを前提におかずを 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
飛翔 ※未完
作者:きぬ@通販はプロフ参照 ジャンル:炎の蜃気楼 お題:鳥の凶器 必須要素:難解な設定 制限時間:30分 読者:63 人 文字数:1213字 お気に入り:0人
それは鳥の形をした凶器だった。別に特段の用もなく、贔屓の作家が出展していた訳でもない、ただ商談と商談の間を埋めるためにふらりと訪れたギャラリーで。その絵は異彩を 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:炎の蜃気楼 お題:小説家の床 必須要素:えへへ 制限時間:30分 読者:40 人 文字数:209字 お気に入り:0人
廊下と和室を仕切る襖を開けた途端、何も書かれていない原稿用紙が滑り落ちてきた。和室の床じゅう、手付かずの原稿用紙が散乱している。高耶は溜め息をこらえつつ、大股で 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
祖父の話 ※未完
作者:きぬ@通販はプロフ参照 ジャンル:炎の蜃気楼 お題:平和と祖父 必須要素:ペペロンチーノ 制限時間:30分 読者:88 人 文字数:769字 お気に入り:0人
じいちゃんは年寄りの癖に変なものが好きだ。例えばオレの得意料理のペペロンチーノとか。「じいちゃんさぁ」にんにくたっぷり、唐辛子もたっぷりのそれをフォークに巻き付 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
失恋パン ※未完
作者:きぬ@通販はプロフ参照 ジャンル:炎の蜃気楼 お題:どこかの失敗 必須要素: 制限時間:30分 読者:75 人 文字数:619字 お気に入り:0人
「失恋パン、0円」そんな札が目を惹いた。「どこかの段階で塩を入れすぎました。失恋の痛みを思い出したい方、どうぞ」なんだ失敗作か。そう思うと少し愛おしいような気が 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
イミテイト ※未完
作者:きぬ@通販はプロフ参照 ジャンル:炎の蜃気楼 お題:生きている会話 必須要素:アンドロイド 制限時間:30分 読者:55 人 文字数:965字 お気に入り:0人
それは、技術の粋を尽くして生み出されたアンドロイドだった。「ヒトに限りなく近づけること」それのみを追求してつくりだされた、人工生命体。そう、アンドロイドN-05 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:きぬ@通販はプロフ参照 ジャンル:炎の蜃気楼 お題:あいつと村 必須要素:2000字以上 制限時間:30分 読者:66 人 文字数:804字 お気に入り:0人
仕立ての良いスーツ、欧米人と見紛うような体躯、俳優のように整った顔、作法にかなった美しい所作。どこをとっても直江は都会が似合うはずなのに、こんな山奥の村に溶け込 〈続きを読む〉

あやの即興 二次小説


ユーザーアイコン
無題 ※未完
作者:あや ジャンル:炎の蜃気楼 お題:安全な小説の書き方 制限時間:15分 読者:85 人 文字数:448字 お気に入り:0人
「小説を書く上で、最も安全な方法を知っていますか」 深みのある艶やかな光沢の革張りの椅子にゆるりと座って、直江が問う。 だがそんなこと、単なる一学生であるオレに 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
まる ※未完
作者:あや ジャンル:炎の蜃気楼 お題:僕の嫌いな、と彼は言った 制限時間:30分 読者:98 人 文字数:610字 お気に入り:0人
ぶるり、と身震いをするのを感じ、浅い眠りから目が覚めた。「寒いですか」 俺の左腕を枕に仰向け寝ていた彼の身体を抱き寄せる。右手で腰から背中、腕と撫で上げた、肩 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
電話の向こう ※未完
作者:あや ジャンル:炎の蜃気楼 お題:高いネット 制限時間:30分 読者:109 人 文字数:907字 お気に入り:0人
驚きから覚めると、ふつふつと怒りが湧いてくる。 共に暮らして家計を管理している高耶だ。理由があれば臨時出費もやぶさかではないが、ものは通信費…一体だれに、何に 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:あや ジャンル:炎の蜃気楼 お題:右の哀れみ 必須要素:やかん 制限時間:30分 読者:142 人 文字数:456字 お気に入り:0人
シュンシュンと音を立ててやかんが湯気を吹く。「直江」 呼びかけると、無言で肩を抱き寄せられた。 今時珍しい石油ストーブの赤い火に照らされた頬が熱い。 別に、寒 〈続きを読む〉