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おもち

シュンシュンと音を立ててやかんが湯気を吹く。
「直江」
呼びかけると、無言で肩を抱き寄せられた。
今時珍しい石油ストーブの赤い火に照らされた頬が熱い。
別に、寒いわけじゃない。こんなに近くに寄り添ってストーブにあたる必要などないのだが、黙って従う。
直江は、二人でいる時には常に触れていることを求める。何かをするではない、ただ近くに、例えば指先だけでも。
もちろんその先に至ることも多いのだが、なにより自分がそこにいることを確かめるように、温もりに触れたがるのだ。
その事が、愛される証だと嬉しくもあり、まだ直江の中で、オレは直江の前から去るものであるのだろうか……と切なくもある。己が男に与えてきた痛みの深さを思う。
「あ、膨れた!」
ストーブの上で、こんがりと色付いた餅が破れ、膨らむ。
「高耶さん、お先にどうぞ」
「サンキュ」
隣で柔らかく笑む男の心に、まだ硬い鎧があることを知っている。オレの罪だ。
いつか。いつか本当に白くて柔らかいところを見せて欲しい。
オレの隣で。


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