ジャンル:刀剣乱舞 お題:アルパカの汗 制限時間:15分 読者:86 人 文字数:7577字 お気に入り:0人

薬研が出て行く理由:緊急外来本丸より ※未完

(アルパカは無理)




薬研が本丸から出る理由


♢♦︎♢♦︎♢


俺っちを顕現した大将は『見習い』だった。
しかも、素人もいいとこで勤勉さの欠片も持ち合わせていない高官のお嬢さんというやつだ。

「よぉ大将、俺っちは…」
「へえ~カワイイ!こうやってイケメンそろえるんだ~!」
鈴を転がすような声色と大きな目をまたたかせ、握った拳はあごにそえ興味津津に俺っちを眺めている。その様は、まるで雲間から下界をながめる天女のようだと思えた。頭に飾る名も知らない大輪が彼女を花の精霊の如く飾っているのだ。これはもう美しさで国を回していけるような逸材なのかもしれねえな。
だが天女は気まぐれで、すぐに俺っちに興味を失ったのか傍にある資材を掴んで紅に染まった口端をクッと持ち上げる。
「じゃ~あ~…もっとコレ入れたらもっとイケメンがくるのよね!?」
炉に狙いを定めた時の眼は鋭い光のようだった、と思う。振りかぶった彼女の手には摑めるだけの資材が。近くに控えていた刀剣男士(多分太刀の誰かだったと思う)が大慌てで止めていた。
「お待ちください!見習い様に許された鍛造は一回だけのお約束です!」
「え~?ケチじゃな~い?」
取り上げた刀剣男士はすぐさま見習いから資材を隠すため片しに行った。それをつまらなそうに見送る彼女の後姿に、タイミングを逃した俺っちはどう名乗りを上げようか言いよどんでいた。見習いとして初めて打ち出した刀が俺っちなら初期鍛刀というやつだからな。これから長い付き合いになる大将だってのに出会い頭にかわいい顔をむくれさせたまま居させるのはしのび無いぜ。

…そう思ったなら、もっと早く声をかけていれば良かったんだ。そうしたら…違う未来があったかもしれないのにな…。

「…ッはぁ!ッタク…あのブスがなんか余計なコトしてくるから遅くなっちゃったじゃない」
彼女は鈴を転がすような声で悪態をつくと、胸の間から懐紙を取り出し炉に向う。何事か気づいた鍛刀妖精たちが立ちふさがるがそれに構うことなく彼らの頭越しに何かの粉末を火にくべた。
「…今のは」
「ん~?ナカヨクする為のク・ス・リ。秘密よ?」
「ぁ、あぁ」
やじりもないのに射抜かれた。そう思わずには居られない。
この動悸を不思議に思いながらこの日の残りを本丸中の刀剣男士に愛想を振りまく彼女と共に過ごし、翌日、急展開で彼女は捕らえられた。
未達成ではあったものの計画された本丸乗っ取りと、非合法で手に入れた薬物の所持違反とそれを使用した現行犯の映像。他諸々のやらかした余罪も突っ込まれ、二度と娑婆には出られなくなったらしい。

俺っちは単独で隔離されたのち、歴史修正主義者との戦いに協力してもらえないかと改めて打診された。
怖々、恐る恐るという表情が見て取れる。時の政府の者と名乗る輩達は、人間の所業を許せるのであればと条件をつけてくるが、俺っち自身に実害という火の粉がまるでかかってこなかったのだ。
そもそも刀剣男士として顕現されるのは、歴史修正主義者の討伐という大局のためだろう?許すも何も、手を貸さずに還るほどの感想も持っていないしな。
「俺っちはどこでも構わないぜ」
こうして俺っち、薬研藤四郎が一口は新しい本丸、通称“緊急外来本丸”へ移籍することとなった。


♢♦︎♢♦︎♢♦︎


到着、緊急外来本丸。


(流石は病院と表現されるだけある、か…)
新たな本丸の門をくぐってから敷地や建物を一周見学する間に沢山の客を見た。
介抱されるものが簡易寝台で寝かされていたり、付添いのものが不安げにあちこちにいたり。外来と言うからには他所の審神者や刀剣男士たちなんだろうな。みな大人しく治療を受けている。
まるで小綺麗目な野戦病院って感じか。脳裏に思い出される戦場は土埃舞う粗雑な空間だが、同じ戦う士がゴロゴロいると言うのにここはひどく衛生的だ。
にしても、政府に改めて聞いた本丸運営方法の中では大将から受ける手入れってものもあったはずだが…
大将はその疑問にたどり着く頃合いを分かっているのか、俺っちが口に出す前に淀みなく応える。
「例えば彼らの主が思わぬ事故にあってすぐに手入れが出来ない時、体勢を立て直す余力が足りない時、そんな時にこの外来が使われる」
ただ現時点では、許可が下りている本丸からだけしか来院することができない半会員制のような状態らしい。大将の少々表情の読みにくい横顔に悔恨の色が一瞬だけ浮かぶ。しかしそれはすぐに消えてまっすぐ前を見据えながら室内へと歩みを進める。外科の同田貫正国と小竜景光、麻酔科の和泉守兼定、内科の大典太光世に、小児科は後藤藤四郎だと施設案内がてら各科の責任者をつらつらと説明され、最後に薬局に案内された。
そこで見たのは、四方の壁を埋め尽くす薬剤の棚と、それぞれに分担して仕事をこなす複数の薬研藤四郎たちだった。


緊急外来本丸はこれまで何振りもの移籍する刀剣男士の受け皿になってきたと言う。目の前にいる薬研たちもそうだ。
通例では審神者が本丸を運営するにあたって『被り』という現象を気にする場合が多いらしい。確かに刀はそもそも一点物であることが普通だからな。けど外来本丸を切り盛りする大将は通例に含まれない。
持ち得る知識が違えば同じ刀剣男士であろうと別人格だと断定し、医局員として使える存在であればすでに同名の先人がいようと登用するのだと言う。そのせいかお陰か薬局には薬にまつわる知識を持ちやすい薬研藤四郎がこれだけ集まったのだと。

ここに案内されたということは既に割り振りが決まっていたようだな。到着した早々に役割りが当てられているとは驚かせてくれる。この本丸じゃ最前線で戦うというより後方支援を担っているんだろう。戦いに出ないことにぶつくさ言うつもりはない。形は違えど戦に従事するには違いないからな。
「ここが俺っちの新たな戦さ場って訳だな大将」
言って医院長である大将を見上げると、彼はかすかにうなずき白衣の襟を正し薬局内に向けて宣言した。
「新しく雇った薬研藤四郎だ」
長の言葉に俺っちを見定めようという薬研たちの視線が刺さる。
「聞け。この薬研は様々な刀剣男士と同量の幻惑系粉末を空間摂取していたが、効果や変化が現れなかった経歴の持ち主だ」

その言葉で、たった数日前のことが思い起こされる。
元の大将となった彼女がしでかしたことの一つが、薬物散布だった。
仲良くなる薬と称していたアレは、火にくべられ燻されると煙に乗って方々に広がり空間内にいる者の精神、主に淫蕩さを刺激させ多淫にふけるようになる効果があるものだった。
見習いを受け入れた本丸はあまり仕切りが多くなくこもりはしなかった分、鍛刀部屋の炎で燻された空気が本丸全体に広がった。顕現可能な刀剣男士が一通り揃っていた故に全ての刀種が被害を受けた。被害は一律ではなく摂取濃度によって落差があったが、ある者は幻覚、ある者は性欲を多かれ少なかれ刺激されしばらくの時間それぞれの苦痛を味わっただろう。しかしその法則に囚われない検査結果が出たのが俺っちだった。
大量の薬剤摂取させられた刀剣男士たちと、あられもなく淫蕩にとろけていく己の主のそばに居続けながら、共犯を疑われるほどに何の反応も出なかったんだ。

「ほう…耐性持ちか」
薬研の内の誰かがつぶやく。
「…いいんじゃねーか?」
「ああ、だな。大将が求めてた部門がやっと埋まるんだ」
「これでより手広く出来るってもんだぜ」
「覚悟しとけよ新人。薬剤調合科は一際厳しいぜ」
ニヤリと笑う薬研たちに、俺っちは口端をクッとあげて返してやった。
「上等だ」


♢♦︎♢♦︎♢


と言ったのを俺っちはひたすら後悔した。
俺っちは体質が特異なのであって知識に抜きん出る所がある訳じゃないからな…。
正直なところ新しい情報をひたすら詰め込んでいるが、さあすぐ活用しろと言われると応えるのはちと難しい。せめて諳んじることができるようになるまではと、カンペを挟みまくったバインダーを小脇に抱えてぼちぼち任され始めた調合などを進めている。
「…まあ結果はおいおい出せるようになろうぜってところか」
依頼を受けていた睡眠導入剤の薬包を和泉守兼定に検分され、こう言われた。つまり薬として不出来だったということだ。
「ん…すまねぇ」
「気にするこたぁねーよ。単なる腕試しだしな!」
「だからだろ;」
「ハハッ、他の連中にも仕掛けられたってぇ口か」
和泉守は軽快に笑ってだんだら羽織の代わりに白衣をひらめかすと、壁を埋め尽くす薬草の引き出しを無造作に開けていく。パラリ、サラサラと目分量で足して、ザッと一振り混ぜ合わすと満足げな顔でまた笑った。
「…今のでいいってのか」
調合終了と言わんばかりに薬包をしまい込む手元に、俺っちは思わず声が漏れる。
依頼された調合を寸分たがわず混ぜ合わせたのが気に入らず、明らかにバランス配分を崩した調合で満足される。じゃあ初めからその量で注文してくれや。と言わずとも思わずにいられない。
「薬研藤四郎のむくれ顔が見れるなんてなぁ。いい日だぜ!」
屈辱を煽る刀に俺っちはバインダーを握る手がギリギリと強まる。
「んん?!ちょっと和泉守さーん?」
そこへ駆け込んできたのは信濃藤四郎だった。カウンセラーしなの、と書いたチューリップの名札をつけた看護師風の白い服を着ている。
どしっと俺っちの頭に抱きついて和泉守を威嚇する信濃。
常日頃は懐に入りたいと言い続けるのが信濃という刀剣男士なのだが、ここの信濃は院内を巡る心理カウンセラーだ。薬局前を偶然通りかかったというのなら院内にある小児科で年若の審神者たちの話でも聞いてきた帰りなんだろう。そのノリのままなのか俺っちを小さな弟たちを扱うかのように包み込んで撫でてくる。
「まったく、薬研に何したの?こんなにしょげてさぁ。威張りちらすとまだ慣れてない薬研はちっちゃくなっちゃうでしょ!」
いや、今小さくなるとしたらお前の撫ですりこぎの所為だと思うが。
「別に?導入剤注文したの取りに来ただけだぜ」
「ふぅぅぅぅぅぅん。じゃあそういうことにしておくけど、いいの?」
「何がだよ」
「すぐに始めないと手術時間ずれ込んで、和泉守さんダブルブッキング状態になるって聞いたけど」
「っは!?」
「よッ!売れっ子麻酔医だね」
「ざけんな!そういう事は先に言えよ!」
あんがとよ!と言い逃げのていで走り去っていく和泉守を見送る俺っちは、しばらく信濃の思うままに撫でられつづけておいた。抵抗するとその分拘束時間が長引くのは既にここに来て数日のうちに学んでいる。
「ふー…」
「どうした?膝枕でもするか?」
軽くトンと腿を示してやれば信濃も一度は目を向けるが、緩やかに首を横に振って撫でさするのをやめない。
「ありがとー、スパダリ発言は禁止でぇ」
「そうかい」
最初ここに到着した日なんてまるきり赤ん坊扱いを受けたからなぁ。そりゃあ顕現したばかりで出陣もしてない刀剣男士だ。赤子も同然だろうが流石に抵抗したぜ。だが、信濃は構いたい病でも患ってるのかこうして時折唐突に構い倒してくる。そろそろ対処法の説明書きが欲しいところだ。
「勝手に息抜きさせてもらってるから気にしないでー」
「今日の事情くらい聞かしてもらいてぇな」
俺っちとしてはそろそろくまなく撫ですりされるのから解放されたいけどな。さっき和泉守が取り出した薬草をもう一度確認して書き残しておかねぇと忘れちまいそうだ。
「えー?もー分かったよ。んーっと…そう!おもり付きの小さい大将たち相手すると気が抜けないじゃない?今日なんて危うく抜刀騒ぎだったんだよ!」
「うお、まじか…」
小児科は特に戦場らしい。おもに審神者の近侍と、という意味で。
実際そういう事態になったときは岩融が登場するだけで大体制圧できるが、毎度とはいかない。泣かず騒がず落ち着いて診察からお帰りいただく為に後藤が小児科に配属させたのが信濃や心理セラピストの包丁藤四郎なのだそうだ。包丁の奴はまず菓子が溢れる四次元ポシェットを開いて黙らせるらしい。
だが、そんな愉快な職場で働いているはずの信濃には癒しが必要ときている。
「ハァァ薬研癒されるぅ!」
「そう言って他の俺っちのとこにゃ行かねーが他じゃぁいけねぇのか?」
「うんダメ」
キッ、と真剣な顔で拒否られた。
「息抜きするならこのダメっぽい薬研がいいんだよ〜」
おうこら聞きづてならんぞ。
睨みつけても信濃は微笑んで意にも介さず喋り続ける。
「だって薬研、プライド高いでしょ」
「プライド…」
「他の薬研たちは矜持あってもプライドなんて糞食らえでさ。大将の為なら何にだって身をやつす覚悟持っちゃってる奴ばっかなんだもん」
この外来本丸に来た理由は男士それぞれだが、薬研のみんなはそういうスタンスなのか。戦場最前線とはまた違った戦い方だがこの本丸の大将に拾ってもらった恩義に報いるためにも必要だと思ったんだろう。俺っちも感謝して返していかねえとな。天女のようなあの人の分まで…な。
「俺…心を置いてけぼりにする奴、嫌いなんだ」
「ん?」
「だから薬研はまだ間に合うよ!」
「何にだ!?」
結局信濃には腰にしがみつかれてろくに動けないまま時間を過ごした。



♢♦︎♢♦︎♢



数月も経てば、こなれてくるものがあるだろう。
かくゆう俺っちもスカウトのきっかけ通り、幻惑、魅了などの副作用を発生する香を中心に成分分析や調査、解毒剤などの調合を担当として任されるようになった。やはり調合実験などする上で効果に惑わされずに作業できるのが大きいな。この短期間で大将にもいくつか成果をあげることが出来て、まずまずの評価をもらってる。
だが、ただそれだけだ。
どうしてか、もったりとした腹の底に溜まるような感覚があるんだ。原因がなんなのか。わからねぇ。
気分転換の意味も込めて資材集めでちょこちょこと遠征に混ぜてもらっちゃあいるが、それは任務であって出先の薬草を持ち帰ることが俺っちにとっての特務であるのは忘れちゃいねぇ。だからこそスッキリしないのか何なのか。
ここ最近、よくわからない何かが腹の奥に積もっていくのを自覚し始めていた。



♢♦︎♢♦︎♢



この本丸で初めてのケースが発生した。ホスピス療養の委託だ。
通常なら進行性のある病状が発覚した場合、自本丸にいて療養するのが一番進行が遅まるとされているため、ホスピスケアの支援援助を行いながら最期までを全うさせる方法を勧めている。
「だが今回はそれが難しい」
大将の感情を殺した発言が全てを物語っている。患者は、…酷い話だが刀剣男士の勝手な出奔と敵の襲来と呪いの請け負いで何重にも苦渋を受け止め続ける定めを背負った幼い審神者。どうにか出来るなら大将が何が何でも救い出して生かす道を探していただろうがな。引き取り先もなく孤独な子供を預かることは、俺っちの大将にとって施せる唯一のこと。それを放り投げることはできなかったんだろう。
全体朝礼の時に発表された受け入れ決定に医療男士たちは多少は動揺したが、実状を聞いて全体一致で賛成することになった。
すぐさま同田貫の外科手術や小竜の整形手術に取り掛かり、大典太の判断により呪いを刺激しないよう痛みを和らげるためだけの施術を繰り返す。魂まで焼きついた呪いは剥がせるものではない。
幼い審神者の全てがゆっくりと消滅するまで当本丸が預かることになった。

薬局ではモルヒネの代わりになる薬の調合配分に薬研全員で取り掛かる。
「審神者の執務室が療養部屋になるんだったか」
「ああ、あそこは厳重な結界も可能だからな」
「患者の要望でもある。そう言われちゃあな」
「…いっそのこと、とはならねんだよなあのお人は」
「それが俺たちの大将だろ」
全員と言いつつ、俺っちはじっと黙って聞いているだけだ。手元は機械的にいつもの和泉守の注文の方の調合配分を混ぜ合わせている。
実は俺っちも幻覚による痛みを和らげる処方の提案しようと思ったが、提案書類提出の時点で薬研たちに止められたので今回の件には関われないんだよなぁ。
ま、そういう言い訳もあるが、日頃からなんとなく空いた多対一のこの距離感はいつものことだ。
薬局にこもった薬研たちは大将の心配をしている。当然だ。呪いと言うものを自分の本丸に置いておくことがどういうことか分からない訳がない。あまつさえ己の身を守るための設備を惜しげもなく患者に差し出すんだから。心配もひとしおだ。
間違えても俺っちのように軽率な’呪い(のろい)’へ’呪い(まじない)’を重ねがけするなんて暴挙的な提案はしないだろうよ…。
「ッ…!おい幻覚の!」
「お?………ッうお!?」
気がそれた一瞬で俺っちの手元の調合薬から不審な煙が漂っていた。
「窓開けろ!」
「換気だ!換気!」
「す、すまん!;」
「動くな広げるな!」
「うぉぉすまねぇ!;」
相変わらず俺っちの腕前はあがらねぇ。


♢♦︎♢♦︎♢


葬送は半日もかけずあっさりと行われた。結局生命力を失った魂がわずかに残り、呪いの痕とともに閉じ込められ永久を過ごす。
黒ずんだ石のようになった小さな体から生命反応が消えたことを確認し、お清めを済ませとある機関に託し厳重に封じてもらう。
静かな黙祷は長く、大将はことさら長く黙祷を送っていた。
それよりも多く時間がかかったのは小さな審神者が使っていた物を全てお焚き上げする事だ。本丸内に呪いとの縁を繋ぐものを残さないようにした。つまり大将の執務室もその内に入る。そもそも離れの形だったのが幸いしてその一帯全部を焼き討ちするようなことにはならなかったが、今後の大改装は必須だな。
大将は燃える火を眺めながら一筋の汗を垂らしていたが、その表情はやはり硬いままだ。握った拳だけが、多くを語らない大将の気持ちを代弁しているような気がした。


♢♦︎♢♦︎♢


「なぁ…信濃」
「なぁにぃ?」
仮眠をすると言って俺っちの膝に滑り込んできた信濃は、未だ位置が決まらないのかもぞもぞとしている。俺っちが調合結果をまとめてる最中に構わず突っ込んできたのだから、俺っちが居心地が決まるまで待つ必要はないだろうとモヤモヤしていたことを言ってみることにした。
「俺っち…このままここにいていいんかな」
「え?」



「鬱屈した日々を過ごしているでしょう?」
「解放されていいんだよ」







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