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【カルジュナ】バンドマンx一般人2

後に残されたカルナではあったが、はっと正気に戻った後に慌てて車に舞い戻り、あのタクシーを追え!と声を荒げたのだった。

「もう見えないよぉ~ムリムリ~!」
「アルジュナ卿のパンチすげー!」
「彼に何を言われたんだ?」

口々にカルナをあしらい、ジークフリートだけがカルナに疑問を投げかける。
いや、とカルナも口ごもる。カルナにしてみれば、最愛の恋人とのロマンス宣言をして戻ってきたというのに、実家に戻るという宣言の元に愛の拳を一発くらっただけなのだ。

「っていうかさ~思ったんだけどさ~」

アストルフォがくるくると三つ編みの先を指先で遊ばせながら口ごもる。
なんだ?とカルナが眼光鋭く続きを促すと、ひゃあ!と車のシートから一センチは飛び上がった。

「……怒ってた、んだよね?」
「……そう見えた」
「じゃあ、カルナがごめんなさいすることがあるってこと?」

それに心あたりが無くて困っているのだ、という表情を顔に貼り付けていたのだろう。隣のシャルルマーニュがカルナの肩を叩いて落ち着けと声をかけた。

「カルナ卿には思いつくあてがない、と」
「まったく」

カルナが思い起こすのは、昨日、ゲリラライブの成功を祈って、とカルナの好物のロールキャベツを鍋いっぱいに作ってくれたアルジュナの姿だ。明日に備えて早く寝なさいと言いつつも、ベッドの中ですり寄ってきた時の愛らしさと言ったら筆舌に尽くしがたい。アルジュナは決して好きだの愛だのと吹聴する輩ではなかったが、カルナと共に暮らすマンションのドアをくぐった瞬間、花が開くように空気が和らぐのだった。
何をするにも争ってばかりだった学生時代から比べれば、雲泥の差。月とスッポン。いや、天地がさかさまになった、とでもいうべきだろうか?

「あの、一つよろしいでしょうか!」

それまで聞き役に徹していた人物から挙手の声があがる。
ぴん、と伸びた背筋と同じくして伸びた手。マネージャー兼アシスタントとして皆のサポートをしている、ブラダマンテだ。

「はい、ブラダマンテ!」
「光栄です、シャルルマーニュ王!」

彼女の中ではシャルルマーニュは自分の王にあたるらしい。なんでも、最愛の恋人と引き合わせてくれたのがシャルルマーニュだったかららしく、アストルフォはその呼び名を面白がってシャルルマーニュをオウサマと呼ぶのだ。といっても、その恋人も転勤やらなんやらで不運な世界一周旅行に飛ばされてばかりのため、最後にブラダマンテと会ったのは指折り数えられるほど前だそうだ。
その愛の強さは俺達にも似たところがあるな、とカルナが思ったかどうかは割愛。

「アルジュナさんは、カルナさんから聞くに、とても真面目で誠実な方と聞きました。お間違いありませんか!」
「相違ない」
「では、アルジュナさんは、今日のゲリラライブでのトークについて、了承されていたのでしょうか!?」
「…………」
「…………」
「…………そういえば、話をしていなかったな」
「ワーーーーー!」
「ギャーーーー!!」
「絶対それだよぉ!」

ここに居る面々は、アルジュナが真面目どころか生真面目、馬鹿真面目であることを知っている。以前、カルナと付き合うと決めたときにも、「お前が、芸能界でやっていくときに、私が邪魔になるときがあるだろう」と涙を流していたことも。

「つまりつまり~?アルジュナに了承も取らないまま、恋人暴露の熱烈問題トークしちゃったってこと~!?」

目をぐるぐると回しながらアストルフォが叫ぶと、隣で青褪めたシャルルマーニュが、うん、と一つ頷く。そしてカルナの肩に、先ほどとは違う意味で手を置いた。

「カルナ卿――アンタが悪い!」

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