ジャンル:遊戯王ARC-V お題:腐った広告 制限時間:1時間 読者:143 人 文字数:1594字 お気に入り:0人

ゴミ溜めの街で、私達は

※シンクロ次元。リン視点。暗い。


ゴミがそこらに散らかっている掃き溜めの街、そしてゴミと同じくらいの存在価値しか与えられなかった私達に住むことを許された故郷、コモンズエリア。
ひび割れた壁を彩る卑猥なスプレーのグラフィティを覆い隠すように貼られた広告はこんなものだった。
『フレンドシップカップ参加者募集!』
『トップスとコモンズの真の和平を!』
美辞麗句が並べられた広告。そこに心なんてない。あのジャック・アトラスのように底辺から頂点に成り上がるシンデレラストーリーを本気で信じている人なんているのかしら?
その金髪の整った顔の男が大写しに胡散臭い広告を見るたびに、ビリビリに引き裂いてやりたい怒りに襲われる。私と同じように思っている人は何人か実行に移されているのも目撃した。その人は次の日から姿を見せなくなっちゃったけどね。

私は知っている。フレンドシップカップに期待と夢膨らませて参加したDホイーラーの末路を。
数年前のフレンドシップカップに参加した恋人が消息を絶ち、当時の仲間の一人が真実を明かしてくれたとバイト先の先輩が私にこっそり耳打ちした。
先輩は今、恋人の忘れ形見と共に彼の帰りを待っていると疲れが滲んだ笑みで私に教えてくれた。ゴミのように扱われてきた人達がゴミにまみれて幽閉されることを。
噂では数多くのデュエリストを叩きのめした怪物がこの歪んだ街の支配者に献上されたなんて話も耳にしたけど、真実はあやふや。
良くてトップスの欲と怠惰に弛んだ貴族様達の退屈しのぎとしてのコメディアンとして扱われるか、最悪の場合は……二度と日の光を浴びず一生を終える羽目になるかもしれない。
どっちにしろ、こんな胡散臭い催しなんて近づくものじゃない。

なのに、あのバカはまんまと引っ掛かった。
『リン!これはチャンスだ。これに参加して他のDホイーラーもキングも叩きのめして、成り上がってやろうぜ!』
ユーゴ、そんなの夢物語なのよ。私たちみたいな地を這って生きる存在が表舞台に出たところで未来なんてない。
この灰色の街で静かに暮らしていったほうが良いのよ!

なのに、ユーゴの言葉に心動かされる自分がいる。
ひょっとしたら望みを満足に叶えられない、生まれついての重石を強制的に背負わされる場所から離れられるかもしれない。ゴミなんかじゃなく、「人間の少女」として生きて良い権利を得られる?

でも、フレンドシップカップの勝者はただ一人。王冠を得る人間は二人はいらない。
分かっているのユーゴ?これにアンタと私が参加するってことは、最低でもユーゴと私のどちらかが地獄で一生を過ごすことになるのよ!

こんな所に住んでいるのに夢見がちな幼馴染の目を覚ましてやろうと、真実を洗いざらいぶちまけてやろうとも考えた。
なのにユーゴの顔を見ると、どうしても真実を話すことができない。彼が目を輝かせて二人で協力して完成させたDホイールのメンテナンスを行い、新しい戦術を試したいからと彼にデュエルに誘われる日々が続いた。打ち上げるチャンスはいくらでもあったはずなのに言葉は喉の奥につっかかえたままだった。

いつしか私はこう思うようになった。もし地獄行きを賭けて彼と戦う日が来ても全力で挑もう。そして王冠を頭に載せるものが自分であってもユーゴであっても恨みっこなしだ、と。
そのために私もデュエルの腕を磨こう。トップスの人達の娯楽の一部として扱われても良い。自分が強制労働所で地獄を味わうことになっても、ハリボテの女王としてこの街に君臨するのも悪くはないのではないか。
いつかこの歪んだ街をぶち壊す、その革命の日の為に。
でも、王冠はできれば彼に受け取って欲しいとも考えた。彼が地下に堕ちるのは見たくなかったから。

そして今日も私は魔女たちとともに彼のデュエル相手になる。未来の王を育てる為にも。

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