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朝日

 病を理由に審神者の職を退いたのは3年程前のことだ。病名はもう忘れてしまった。やたらめたら難しい漢字が連なっていて、恐らくこの病名が記されているカルテがあるのは世界中の病院を見てもここだけだろうなと思ったことだけは覚えている。

 どうやら体が少しずつ不自由になっていく病らしい。小難しい漢字が並んでいたくせに、割とありきたりな症状だと思った。力が入らなくなっていく四肢にはなにも感じなかったが、少しずつ暗くなっていく視界には絶望した。光を感じる神経が弱っていくという症状らしい。少しずつ少しずつ狭まっていく視界に、かつて近侍を勤めていた彼の姿を懸命に探した。いるはずもないのに。

 そうやってやがて眠るように死んでいくのだそうだ。両親からそれを聞かされたとき、既に私の目は見えていなかった。両親の声が聞こえる方に置いてある手の甲の辺りだろうか、かすかに温かい液体が落ちたように思えた。



「主」

 聞き慣れた声に私は目を開けた。目が開いていることを理解できたのは、彼の姿を視界に捉えていたからだ。彼は病室の銀枠に大きな足を乗せていた。緑色の戦装束を身に纏い、栗色のつんつんした髪が光に透けている。

「おつかれさん」

 そう、この朝日が来るのを、私はずっと待っていた。ぐっと体に力を込めると、筋肉が蠢いて脳まで信号を飛ばし、その命令で私は立ち上がることができた。命を繋ぎとめていた管も線も、もう私には必要ない。ただ、彼の声のする方にいけばいいのだ。

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