ジャンル:ロビジュナ お題:小説の会話 制限時間:15分 読者:68 人 文字数:1434字 お気に入り:0人

【ロビジュナ】嘘だらけの恋人-2

「いや、」

俺が言いよどんでいると、アルジュナは少し俯き、眉を下げた。こんな時にどういう反応をすればいいのかと迷っているようでもあったし、裁きを待つ罪人のようでもあった。本当の罪人は俺だというのに、何故アルジュナがそんな顔をしなければならないのだろう。俺は自分自身の行動を棚に上げてそう思った。

「その、告白だけで、終わりじゃないから」

俺は何を口走っているのだろう。
冷たい汗が背中を伝って脊椎を滑る。冷えていく神経の数々が俺の罪悪感にアクセスしようと試みてくる。けれども俺は、アルジュナのその瞳が、侮蔑に歪むのを受け止めきれないと思った。俺がここで、そうですねと言って、賭けはもう完了しましたよやっぱりやめましたよと言ったところで、アルジュナは信じるのだろうか。こんな最低のことをした俺の言葉を、信じるのだろうか。
あの、夜空の下で見た笑顔は、俺に騙されていると知って尚のものだったのだろうか。それとも俺を、好きでもない男に時間を割いている哀れな男と思ったのだろうか。

「俺と、付き合ってくださいよ」

アルジュナの大きな両目が見開かれる。ぼろりと落ちてきてしまいそうな瞳。もしも落ちてきたとしたら、俺が受け止めて、一生大事にしまっておきたいと、そう思うくらいには純粋で純朴で、清廉な瞳。まるで朝靄の中に差し込む朝日を、そのまま形にしたような輝きがそこにある。俺の不貞を、憐れんでいる。

「私と、貴方が?」
「えぇ、そうですよ。アンタ、付き合ってる奴は居ないんでしょ?高嶺の花を手折った匹夫が居たって噂になるくらいでないと」

俺はわざとねちっこく言いながら、アルジュナとの距離を詰める。
手のひら一枚分程度の距離で、アルジュナの瞳を覗き込み、校舎の壁へと追い詰める。ひらりと落ちてきた瑞々しい葉が、俺達の間を通り抜けることもできず、アルジュナの肩に居座った。

「私は…」
「俺を哀れだと思うなら、頷いてくれたっていいじゃないっすか」

アルジュナの顎を掬い、視線を合わせていると、心の奥までを見透かされているかのようだった。アルジュナの瞳は世が世ならば、千里を見渡す英雄の目であったかもしれない。

「……分かりました」

まさか、頷くとは思ってもみなかった。
けれど、付き合おうと言ったのは俺で、頷いたのはアルジュナだった。

「じゃあ、今日から俺たちは恋人同士ということで」
「……はい」

わざとおどけてそう言えば、世界の終わりみたいに煮詰まった声が返ってくる。いつまで、とは言わなかった。アルジュナは俺がすぐに飽きるかと思っているだろうし、そもそも、賭けなど唾棄すべきものとも思っているだろうに。アルジュナは賭け事をとかく嫌うと聞いたことがある。だから、賭けの対象にされていると知ったならば、俺と縁を断つくらいはするだろう、と考えていた。けれど、今の俺は、降ってわいた幸運を手放さないことに躍起になっている。
よし、と俺はわざと声をあげ、アルジュナの手を取った。

「ケーキでも食べに行きましょうか」
「何故です?」
「祝い事にはケーキでしょ」

アルジュナは不思議そうな顔をしている。
俺は返事も聞かずに歩き出す。このまま裏門から出て行こうと。

「貴方、不思議なひとですね」

それには答えなかった。俺はアルジュナの手を引きながら、賭けに乗ろうとした自分のことを恥じていたし、アルジュナが俺の手を振り払わないことだけがただただ嬉しかった。

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