ジャンル:謝罪探偵すまないさん お題:オチは風 制限時間:15分 読者:36 人 文字数:1286字 お気に入り:0人

【しゃざすま二次】春を捜しに!

「探偵さんはさがしものもとくいですか?」

アルジュナがそう言いながら探偵事務所を訪ねてきたのがついさっき。探偵さんはアルジュナにあたたかいココアを出して飲むように言います。アルジュナが、ありがとうございます、ときちんとお礼を言って飲み始めると、探偵さんは向かい合わせのソファに腰を下ろしました。

「探し物だけではないが、やれることはやろう。何か探して欲しいものがあるのかね?」
「はい!でもとっても難しいんです」
「ほう?」

探偵さんが言うと、アルジュナは背負っていたリュックサックを下ろし、中から図鑑を取り出します。そこには「はるのずかん」と書かれています。

「せんせいがこの本をくれたので、私、はるをさがしてみようと思ったんです。でもぜんぜん見つからなくて、こまっているんです」
「なるほど。春を見つけなければならないのか。それはどうして?」

探偵さんが聞くと、待ってましたとばかりにアルジュナの顔が輝きます。そうして春の図鑑をぱらぱらとめくり、開き癖のつきはじめたページを開いてふふふ、と笑いました。

「みてください、これ、さくらというお花なのです。とってもきれいですよね!おねえちゃんににあうと思うのです!」

ぱっとアルジュナの表情に、それこそ春風に誘われて踊る花びらのような明るさが差し込みます。

「私もアルジュニーも、村のそとのはるははじめてです」

探偵さんはふむ、と顎を撫でながらアルジュナの言葉の先を促します。

「だから、たくさんはるを見つけてみたいんです」

秋も、冬も、春も、それから夏も。季節を一回りして、そこに楽しいものを見つけたい。それを姉と共有したいといういじらしさに、探偵さんも首を振る選択肢はどこかへ飛んで行ってしまいます。

「君たちは本当に似ているな」
「?」
「つい先日、君のお姉さんもここにやってきたよ」
「えっ!」
「春にはこの近くの川べりの桜が満開になる。それを君と、弟と見たら、きっととても素晴らしいものになるだろうと伝えたんだ」
「さくら!これですか!?」

アルジュナが、開いたままの図鑑を指差して頬を上気させます。姉と自分が同じことを考えていたということに嬉しさを感じていたのでしょうし、更に言うのなれば、さくらが見れるかもしれないということも、アルジュナの嬉しさを倍増させています。

「そうだ。桜祭りはな、出店もある。お弁当を作って、一緒にでかけても楽しいだろう。お姉さんと…そうだな、おにぎりを作って、先生や助手の彼も誘ってみんなで行くといい」

探偵さんが言うと、益々アルジュナは瞳を煌かせ、とうとう立ち上がってリュックを背負い直します。

「ありがとうございます!私、お姉ちゃんのところにいきます!」
「お、おい」
「あっ!」

入り口まで戻ったところでアルジュナは振り向き、それこそ満開の花のように笑いました。

「たんていさんとよよぎさんも行きましょうね!」

年齢相応の純粋な願いに、探偵さんは毒気を抜かれ、テーブルに忘れていかれた図鑑のことも、しばらくたってから思い出したそうです。

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