ジャンル:ロビジュナ お題:生きている黒板 制限時間:15分 読者:66 人 文字数:1534字 お気に入り:0人

【ロビジュナ】初めての夜

「何してるんです?」
「…………何も」

アルジュナが俺の部屋にやってきた。ガッタンゴットンと荒々しくひっくり返して掃除をしたばかりの俺の部屋にやってきた。両隣が空き部屋で助かった。
アルジュナは俺がどんなに内心で焦っているのかなど素知らぬ顔で「貴方の部屋はもっと煙草の匂いがするかと思いました」と言って、ベッドに腰掛けている。椅子の一つも無いのだから当たり前かもしれないが、それはあまり易々とするべき行動ではないと思う。

「これは何です?」
「……ポプリ」
「あぁ、以前下さいましたものね」

サクサクと進ませていく会話の主導権はもちろんアルジュナにある。俺だって口数が明らかに少ないわけでもなければ、口が回らないわけでもない。ただ、アルジュナの前では上手く喋れなくなるだけで。

俺とアルジュナは、まかり間違っても同じような英霊ではない。俺はただの一般義賊。アルジュナは煌く王子様。それがどんな魔術を使ったか、不思議な恋仲となって今に至る。ただ、俺が、アルジュナに引導を渡して欲しくて、芽生えた恋心に塩酸をかけて欲しくて告白したら、そこに赤面したアルジュナが居ただけ。
殺してください、と言うつもりだった口が、付き合いましょう、という言葉を吐いた。アルジュナは、俺の目を見てから、そっと頷いだ。
マスターには言っておかなければなりません、と生真面目に告げたアルジュナに、俺は逆らう術を持たなかった。全部が全部、アルジュナの言う通りで良かった。そうしなかったら、いつ別れると言われるかわかったもんじゃない。今はまだカルナが召喚されていないから、アルジュナは俺を特別の座に座らせることを許可したけれど、それだっていつお釈迦になるか分からない。お釈迦様でも神様でも、転がされる手のひらの上はいつだって寝心地は悪い。

並んでベッドに腰掛け、ちら、と横を見る。アルジュナの長い睫毛が涙袋に影を落としていて、俺はその、真夜中みたいなシルエットに釘付けになる。アルジュナは、今日、どうして俺の部屋に来たのだろう。「貴方の部屋に行ってみたいのですが」なんて澄ました顔で言ってきて、青少年みたいな純朴な俺の心を搔き乱している。
俺の作ったポプリを手の上で遊ばせているアルジュナの手をおもむろに取り、ぎゅうと握る。横並びに座っているから、顔を近付ければすぐにキスできる距離になる。

「アンタ、どういうつもりで来たかは知りませんけど、もっと警戒するべきじゃないっすか」

警戒して、毛を逆立てて、私は高貴な身分なのですよとふんぞり返ってくれている方がいい。そっちの方が、よっぽど気兼ねしない。困るのは、アルジュナが、まるで生娘のような瞳で睫毛を震わせているからだ。

「警戒、って」
「こんな夜更けに、念話まで飛ばして、男の部屋に来るなんて」
「でも、貴方は拒まなかったのに」
「拒むはずないでしょう」

だって俺はアンタが好きなんですよ、と言うと、アルジュナは瞳を見開き、そうっと視線を落とした。

「…………私だって、貴方が好きだということを、貴方こそ、分かってないのですね」

射抜かれた、と思った。
アルジュナの唇から放たれた、一本の矢が、俺の心を。
あぁ、この恋は、決して褒められるばかりのものではない。心が躍って歌を歌いたくなるようなものではないけれど、これからの全てが希望に塗り替えられるようなものでもないけれど。

「……ロビンフッド?」

それでも、アルジュナの瞳の奥に見えた夜空の瞬きは、未来を全て捧げてもいいと思えるくらいに美しかった。
この夜を、とびきりの夜にしてやりたいと思うくらい。俺はアルジュナの唇を奪いながら、うっすらとこれからの未来を信じていた。

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