ジャンル:東方Project お題:許されざる想い 制限時間:30分 読者:63 人 文字数:1051字 お気に入り:0人

蚊が入って全滅 ※未完

 村紗水蜜は眠れない。丑三つ。眠る姿勢がみつからない。
 眠るのを諦めてしまえたなら、どれほど楽になることだろうか。戒律が在った。酒も在った。
 広い、畳張りの空間。それが、妙蓮寺に暮らす尼僧たちの寝床だった。部屋は暗い。湿気がある。しかし、月明かりもある。闇を湿らすような夏だった。
 困った檀家があった。暑中見舞いは酒だった。でかい、樽の酒だ。住職も、なかなかに困った人物だった。今日一日、酒樽は、この寝室で、夏の熱気に蒸されていた。ぬるくなっても、上等な酒だ。何故だろう、尼僧全員に、それがわかった。しかし当然、飲む者はいない。飲もうと考える、素振りすらも見せない。日中はみな、どこか遠くを笑顔で見つめ、業を終えた。
 そして、夜が来た。眠れない夜だ。
 水蜜にはわかっていた。誰もがきっと、狸になっている。寝息というものは、聞くものが聞けば、それが嘘か本当か、容易に判る。本当の寝息を装うのも容易だが、それを、五分続けられれば、何らかを受賞できるだろう。それほどまでに、持続的な狸寝入りは難しい。
 暗いとはいえ、月光はまばゆく青ざめている。眼と眼が合えば、気づかぬ者はいないだろう。かわりに、聴覚が過敏となる。みな、もぞもぞ、もぞもぞ、夜通し動く。夏の暑さも相まって、もぞもぞ、もぞもぞ、転がり続ける。きっと、邪念も寝返りの助けをしていた。
 もう酒のことは忘れ、眠ってしまおうと、何度も考えた。しかし、一人が布団の上に動けば、誰かの過敏な聴覚に、衣の擦れる音が刺さる。音が刺されば、寝苦しく動く。そのように、無限に続いた。
 それは水蜜にとって、自分に与えられた罰のように思えた。酒に対する邪念さえなければ。みなが眠ったのち、一人だけいい思いをしようなどと思わなければ。こうも、陥ることはなかったのではないか。水蜜は想像する。部屋の中、みなが狸というならば、それは決して自分ひとりに与えられた罰ではなく、みなに与えられた罰なのではないか。
 水蜜は想像する。仮に、このように考える者が自分一人でなく、みなが思っていたならば。誰か一人が口を切れば、地獄からの脱出を謳えば、寝苦しさから開放され、きぶんよく眠れるのではなかろうか。
 しかし、戒律を犯すのは恐ろしかった。水蜜は想像する。いまにも、誰かが口火を切ることを。反対に、誰も口を開かずに、朝の読経まで堪えきることを。どちらも、美しい青写真だった。
 寝返りをまたひとつうち、眠れない夜は続く。
 青ざめた月明かりの、湿気た夏の夜だった。

同じジャンルの似た条件の即興二次小説


ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:東方Project お題:暑い夜 制限時間:30分 読者:34 人 文字数:1121字 お気に入り:0人
あーわたしのなつはなんにもない。まるで、美術の成績が残酷ショーな生徒の描く絵画の課題だ。寝ても覚めてもサイキッカーなわたしだが、念動力で彩れる夏なぞありはしな 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
強い恋 ※未完
作者:匿名さん ジャンル:東方Project お題:強い恋 制限時間:30分 読者:23 人 文字数:780字 お気に入り:0人
強い恋は人を変える。なりふり構うこともなしだ。きっと、あいつは宇宙のように永い夜を経て、この世のものと思えないほど半端な絶望の朝を迎えているのだろう。それでも 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:大豆まめ ジャンル:東方Project お題:突然の母性 制限時間:30分 読者:55 人 文字数:1902字 お気に入り:0人
とっとっと。 あたいの後ろから、リズミカルな足音。無視して進む。ぐんぐん、旧都の雑踏の中を。 とっとっとっと。 それでも足音はついてくる。独特な足音。振り向か 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:ばかのひ ジャンル:東方Project お題:汚い味 制限時間:30分 読者:90 人 文字数:2285字 お気に入り:0人
さて、今日は第一回チキチキ紅魔館料理選手権大会の日です。 誰もが優勝特典の「レミリアお嬢様から受ける最高級セレブ肩たたき」の権利を受けるために必死に料理を研究 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:ITetsuYK ジャンル:東方Project お題:希望の正義 制限時間:30分 読者:71 人 文字数:1002字 お気に入り:0人
「失礼するわよ。」そう言って、私は落ち着くような部屋に入る。「あら、こんにちは。今日は何の用?」向こうには紅白の巫女さんが私を歓迎する。「大したようはないわよ。 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:あどそ ジャンル:東方Project お題:昨日の内側 制限時間:30分 読者:172 人 文字数:2249字 お気に入り:0人
昨日内側外側なんの内と外なんだ?三途の川・・・とか?境界があるもの。内訳。外側の人から見て。なんの?昨日の話になってくる。伝聞?語り口調か?「昨日は”内側”はど 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:東方Project お題:恋の外側 制限時間:30分 読者:239 人 文字数:686字 お気に入り:0人
「ねぇ?」「何かしら」そんな会話から、この物語は始まった 「好きな人いる?」そんなリミアの質問に「ぶーーーーーー」霊夢はお茶を吐き出す「なななによ急に」「そんな 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:東方Project お題:昔の職業 制限時間:30分 読者:309 人 文字数:924字 お気に入り:0人
「アリスはさ」 昼下がりだった。森の重い緑を抜けて窓に差し込む柔らかい光。それを浴びて光る金髪。紅茶のカップを半ば傾けたまま、ぼんやりした視線が目の前のテーブ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:東方Project お題:疲れた事故 制限時間:30分 読者:264 人 文字数:643字 お気に入り:0人
「愛しているわ」 「私もだぜ、アリス」全く笑ってしまうほど、それは道化のような定型文だった。ベッドに残るのは行為の後のけだるさではなく点々とシーツを汚す血痕だ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:苔地蔵 ジャンル:東方Project お題:疲れた宴 制限時間:30分 読者:316 人 文字数:1025字 お気に入り:0人
「はあ…なんであいつら好き放題やって片付けやら何やらは全部私一人にやらせるのかしら」私、博麗霊夢は辟易していた月に一回、何故か博麗神社で人妖問わずの大宴会が行わ 〈続きを読む〉

こだいの即興 二次小説


ユーザーアイコン
作者:こだい ジャンル:東方Project お題:遅い外側 制限時間:30分 読者:70 人 文字数:1727字 お気に入り:0人
多々良小傘の末端は鈍い。よく、手足をぶつけ、お茶をこぼす。相関の有無は不明だが、頭もぶつける。 どうしてこうも鈍いのか。疑問に思うことはあれど、深く考えたこと 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:こだい ジャンル:東方Project お題:8月の運命 制限時間:30分 読者:66 人 文字数:1367字 お気に入り:0人
視界の端に蝉が映る。ただの蝉じゃない。死んだ蝉だ。 わちきはこいつがどうも嫌いで、とても気になった。見つけるが早いか、注視する。歩み寄る。 試してみたいことが 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
家路 ※未完
作者:こだい ジャンル:東方Project お題:せつない衝撃 制限時間:30分 読者:68 人 文字数:862字 お気に入り:0人
木っ端妖怪には、なにもない。精々、代わり映えのない交友が、日々を滑らすのみである。 赤蛮奇は笑顔で歩く。穏やかな笑顔、落ち着いた歩調だ。柳のなかを歩けば、じき 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:こだい ジャンル:東方Project お題:許されざる想い 制限時間:30分 読者:63 人 文字数:1051字 お気に入り:0人
村紗水蜜は眠れない。丑三つ。眠る姿勢がみつからない。 眠るのを諦めてしまえたなら、どれほど楽になることだろうか。戒律が在った。酒も在った。 広い、畳張りの空間 〈続きを読む〉