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家路 ※未完

 木っ端妖怪には、なにもない。精々、代わり映えのない交友が、日々を滑らすのみである。
 赤蛮奇は笑顔で歩く。穏やかな笑顔、落ち着いた歩調だ。柳のなかを歩けば、じきに、黴た母屋に辿り着く。今日も、相関図の細い糸を、縫うようにして生きていた。遠い地平に、陽は嚥まれ、山の端に、星が滲んだ。誰もがきっと、家路の最中だった。
 赤蛮奇は、里のことを考えた。脳裏では誰もが、里の家々を這うように歩いた。野菜や豆腐やらが入った、手提げを想った。隣歩く母の手に、腕を伸ばす幼子を想った。関係なさそうにあくびをする、犬を想った。子どもたちの、冒険の終わりを想った。様々な人間の、帰途を想った。
 面映いような笑みだった。友人たちと別れた際の、焼け付くような夕景が、嘘のような紺色だった。
 赤蛮奇には自覚があった。あってもなくても変わらない、呪いのような自覚があった。それは、ただそこにあるだけの代物で、大事にしているわけでも、忌々しいわけでもない、路傍の花と、さして変わったところはない。その分歩けば、いろんなものが目についた。
 道の脇には、いつもどおりの地蔵があった。枯れ木のように干からびた、故知らぬ傘があった。
 土には、深く埋まった変哲のない小石があった。濡れて乾いて動かない、蟻の捨てた巣があった。
 柳の枝には、汚れてくすんだ、布切れがあった。用途のわからぬ、ゴム毬があった。
 家路は、なんとはなしに、それら見つける時間だった。湧き上がる、得も言われぬ情動と、連れ添って歩く時間だった。
 失くなってしまったのは小石だった。土に埋まり、小さく表面をのぞかせていた、変哲のない小石。見落としてしまったのだろうか。されど、赤蛮奇はそれを探すことはせず、ただ曖昧に、帰途を辿った。
 母屋につけば、月明りが眩しかった。差し込む薄青は、赤蛮奇に、窓を開かせる。
 窓枠に肘を付き夜を舐めれば、星月は、どこまでも曖昧に溶けた。
 いままさに爆ぜた星を見つけられることもない。
 柔らかい、抱擁のような薄青が、どこまでも続く夜だった。

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