ジャンル:東方Project お題:8月の運命 制限時間:30分 読者:48 人 文字数:1367字 お気に入り:0人

名付けて蝉爆弾

 視界の端に蝉が映る。ただの蝉じゃない。死んだ蝉だ。
 わちきはこいつがどうも嫌いで、とても気になった。見つけるが早いか、注視する。歩み寄る。
 試してみたいことがある。こいつを、どうかそのまま保存したい。
 ほら! 近づけば、靴の裏が砂を滑るのとおんなじに、死骸が爆ぜて、音が鳴る!
 でも、わちきは花火を知っている。
 細い紐の、先端がこよりみたいに縮こまった、持ち手が栞の花火を知ってる。
 死骸の音は、それと一緒だ。いちばん最後に封切って、いちばん早く終わっちゃう。
 でも、あんまりに終わるのが早かったら、火を近づけて、もうちょっとだけ遊ぶことができる。
 どん! って地面を踏みつけるわけ!
 ほら! やっぱりね、すこしだけど、また爆ぜた。
 わちきは、これを保存したい。保管したい!
 いつまでも、好きなときに使えるように、とっときたい。
 なんでって、そんなの決まってる。人のこと、驚かすため。
 はじめて死骸が爆ぜたとき、びっくりしすぎて、死んじゃいそうって思ったんだもん。
 でも、急に近づきすぎると、爆ぜちゃうし。ゆっくりすぎると、湿気ちゃうし。
 正直、どうしたらいいかわからない。
 誰かに相談しようにも、もう日暮れだし、森の中だし、どうしようもない。
 そもそも、相談しようって、まっさきに浮かんだ早苗ちゃん。夏の間はなんか会えない。
 忙しいんだって。
 でも、早苗ちゃんに相談する気なんて、まったくないもん。
 だって、花火しようって言って、細い紐のやつってバレたら、来てくれないもん。絶対。
 来てくれたとしても、驚いてくれないだろうし、つまんない。絶対。
 もうほんと、どうしたらいいんだろう。死んだ蝉、こんなにたくさん落ちてるのに。
 こんなにたくさん落ちてても、わちきはそれを見ることしかできない。
 触ってみようにも、触ろうとしたら、あの、ぐるぐるの花火みたいに動き回るし。
 触れるやつは、湿気ちゃってるし。
 でも、気づかないふりして、歩くのも無理。またびっくりしちゃって、死んじゃうもん。
 だから、見つけたら近づいて、触ろうとして、触れなくて。
 それをずっと、繰り返す。
 家までの道は長いけど、そうするほかに、道はない。道だけに。あれ、かかってるかな。
 かかってるか、かかってないか不安なときは、たいてい、早苗ちゃんに怒られる。
 かかってませんよ。かかってませんからね。なにも、かかってないですからね。
 早苗ちゃん。夏の間は忙しいんだって。あーあ。
 だけど、よく考えたらもう秋だ。
 だって、蝉の死骸は、紐の花火とおんなじで、夏の終わりに鳴くんだもん。
 あれ。夏の終わりってことは、まだ夏なのかな。でも、いつから夏で、いつから秋なの?
 もうぜんぜん、なんにもわからない。
 とにかくわちきは、死骸を集めることにした。
 生きてても、死んでても、もうお構いなし!
 去年もその前も我慢したから、今年は絶対驚かせたい!
 わちきは知ってる。弾幕のこと。多ければ、多いほど、避けにくくなる。
 つまるところ、数。
 湿気ってても、あとちょっとでも、もう関係ない。
 わちきはたくさん拾い集めて、袋につめた。
 早苗ちゃんの悲鳴を咲かせるこの袋。

 命名は、もちろんわちき。

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