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それでも君を思い出す

※ガスサン


「博士、起きてください、博士!」
「ん、ああ」

 博士、と自分を示す言葉にゆっくりと目を開いた。眩しさは感じない。自分を覗き込むその頭が丁度ライトを遮って影を作っていた。

「……おはよう、サンズ君」
「おはよう、じゃないですよ。今何時だと思ってるんですか」
「何時だろうねえ」
「もうお昼ですよ。……まったく、寝るんならちゃんとベッドで寝てください。ただでさえ徹夜続きだったんですから」

 怒ってます、と全身でアピールするかのように両手を腰に当てているその様は実に愛らしく、……ただ、この状況でそれを伝えても状況を悪化させるだけだと賢明にも気付いた私は、口を噤んだ。誰に似たのやら、続けられる小言を半分聞き流しつつ起き上がる。やはりソファで寝るものではない。凝り固まった身体を多少動かして解すと、目の前で変わらず可愛らしく怒っている恋人に手を伸ばした。

「ちょ、博士」
「ちゃんとベッドで寝るから、抱き枕になってくれるかい?」
「っ、……添い寝するだけですよ!」
「うんうん」

 添い寝で済むわけがないのに、そうやって言い訳しつつ私に身を任せるところが、非常に好ましかった。






 目を開いた。愛らしいあの子の影はない。ここには影すらない。広がるのはただの闇だ。
 ふ、と息を吐いた。いや、吐いたのだろうか。それすら分からない。
 夢現のつかの間に思い出すのは、あの子との他愛もない日常で。手を伸ばせば届きそうなその光景が、本当にあったことなのか、それとも私の頭が作り出したただの幻なのか、それすら分からない。

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