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鶏卵

 多々良小傘の末端は鈍い。よく、手足をぶつけ、お茶をこぼす。相関の有無は不明だが、頭もぶつける。
 どうしてこうも鈍いのか。疑問に思うことはあれど、深く考えたことはなかった。
 きっかけは、茶会に招かれたときのことだ。
 それは小傘の友人らしき風祝の提案で、茶会とは名ばかりの、ただの交遊だった。小傘は、そこでもお茶をこぼした。
 なぜ、こうも鈍いのか。なぜ、よりにもよって、畳の上にこぼすのか。早苗は畳に液体をこぼされることを、蛇蝎のごとく嫌っていた。
 小傘は瞬時に謝罪し、帰路をたどった。早苗は、なにも帰らせるつもりはなかったし、そこまで本気になって怒っているわけでもなかった。
 しかし、小傘を帰らせたのはたしかに早苗の習性だった。早苗は典型的な、やることをやってから遊ぶタイプの風祝で、畳のシミを放っておけない性格ということを、小傘はわかっていた。とすれば、どうなるだろう。しみ抜きを徹底すれば、それはけっこうな時間がかかる。小傘はその間、それっぽくしゅんとして、それっぽい間で謝罪を打たねばならぬ。けれども、小傘が恐れたのはそこではない。その、あとの空気を恐れたのだ。小傘は、早苗が本気で怒っているわけではないということもわかっていた。しかしだからといって、しみ抜きをする早苗の背後で、へらへらしているわけにもいかない。なので、しゅんとして、相槌のように謝罪を放つ。問題となってくるのは、早苗の気持ちだ。それほど怒ってもいないが、その際に繰り出される小傘の謝罪には正当性がある。謝らなくていいですよ、そこまで怒ってはいません。言ったところで、謝罪が止むことはありえない。自然と、いいですよ、いやでも、いいです、ごめんなさい、の、応報となる。そして、しみ抜きが終わってみればどうだろう。テーブルの上には冷めた茶と、乾いた茶菓子が転がるのみだ。小傘は瞬時にそこまでを予見し、即謝即帰宅の道を選んだ。
 そう、小傘は内面までもが鈍いということはない。むしろ、内面が先走り、突き抜けて、まわりに鈍いという印象を植え付けてしまう。
 しかし、末端は鈍い。手足をぶつける、頭をぶつける。お茶をこぼす。
 そこまで気弱なタイプではない小傘ではあったが、やはり、手足をぶつけるのも、頭をぶつけるのも、お茶をこぼすのも事実なので、ともすれば自分はほんとうに、鈍いのではないかと考え始めた。
 熟考。
 思考の海をさまよって、ついに漂着。それは言葉だ。
 小さいころ、頭をぶつけると、いろいろとにぶくなる。
 そういえば小傘は、そんな言葉をいたるところで耳にした。
 たしかに、ぶつかりまくりの傘生だったような気がしてくる。
 しかして、子供なら誰しも、頭のひとつやふたつ、ぶつけて、おとなになっていくものではないのだろうか。
 小傘は気まずさを抱えながらも、早苗の住まう神社へ向かった。
 「そりゃ、ぶつけましたけど。でも、そんなに大きな怪我はありませんでしたよ」
 なるほど。小傘はつぶやいた。なにが、なるほどか。早苗はさっぱりといった表情で、しみ抜きをしている。
 「じゃあ、あれかな。偶発的な事故で頭を大怪我したら、やっぱりいろいろ、にぶくなるかな」
 「したんですか?」
 うーん、してない。小傘は唸る。早苗は、やはりさっぱりといった表情で、しみ抜きをする。
 「でも、偶発的な事故じゃないけど、わちきはそれなりに、怪我してきたよ」
 「それは、気をつけるべきですね。末永く」
 小傘は考える。早苗はしみ抜きをする。
 「あー! わちき、閃いた!」
 「なんですか?」
 小傘はふんふんと頷きながら、早苗の背後、なにやら楽しげに言葉をまとめている様子だ。ここでそろそろ、早苗の表情に苛立ちが浮かぶ。
 「頭をぶつけたからにぶくなるんじゃなくて、にぶいから、頭をぶつけるんだよ。あれ、でも。これに気がつけるってことは、わちき、やっぱりにぶくないかも。じゃあ、どういうこと?」
 「なんでもいいですけど、せめていっかい、謝ってくれませんか。私、小傘さんのこぼしたお茶を拭いてるんです」
 「あ! ……ご、ごめんなさい」
 内面も、やはりにぶいかもしれない。

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