ジャンル:文豪ストレイドッグス お題:都会の祖母 必須要素:鶏肉 制限時間:30分 読者:13 人 文字数:1768字 お気に入り:0人
[削除]

幸せな死 太中

『家族』なんて言葉ほど、自分に無関係な言葉はない。
要らない。必要ない。その存在だっていらない。
だから、同僚が祖母のところへ帰るのだと嬉しそうに話したとき、首をかしげてしまった。
一緒に上京してきて、そのまま置いてきてしまったのだという。こんな大きな都会に一人っきりで暮らすなんて寂しいだろうから時々帰っているのだと、もう何十人もの人を殺めた手で荷造りをして、数えきれないほどの偽りを吐いた唇に無垢な笑顔を浮かべた。
そんな彼は、俺とは違う世界の、違う人種の者のようで。妙に違和感を感じた。感じたまま彼が旅立っていくのを見たから、その3日後に彼の生首を見ても、何も思わなかった。
彼は、老婆を守るように抱き締めて撃ち殺されていたのだという。それが彼の言っていた祖母だろう。血をわけあった家族と抱き合って、その人生を終える……
「羨ましい人生だね」
太宰は、そう言った。
「大切な人の温もりを感じながら死ぬことができるなんて、そんなに幸せなことはないだろうね」
「……手前が言うことか?」
「誰にも迷惑をかけない、清く美しい自殺。それが私の信念だからね。羨ましいとは思うけど、私とは無縁な話だよ」
そう言って、自分で持ち込んだ鶏肉で作った焼き鳥を食べ、それを肴に酒を呑んた。
いつの間に、俺の家の台所の使い方を覚えたのだろうか。
「でも」
ことり、と酒を置く。焼き鳥はなくなった。
「中也が寂しいなら、私の胸を貸すけれど」
目を瞬かせる。何を言っているんだ?寂しい?
太宰は、机の上の布巾で手を拭い、くすくすと笑った。
「いや、中也があんまり妬ましそうに語るものだから。少し羨ましかったんでしょ、温もりを感じながら死んでいった同僚くんのこと」
否定しようと口を開いたが、その前に太宰が大きく腕を広げて胸を差し出した。
「おいで、中也」
……寂しい、という感覚はわからない。家族の温もりもわからない。
でも、こいつの温もりは知っている。温もり、と言うほどのものではないが。あまり柔らかい肉がついていなくて、体温が低くて、酒と包帯の薬物的な匂いがする。
よく知っていた。何度も抱かれた胸だ。よく知っている。
その胸に顔を埋めて、ぽんぽん、とあやされるままに身体を預けた。
「家族……ねえ」
確かに私達とは無縁だよねえ、と、頭上で呟いた。悲観的でもなんでもない、いつものふざけた口調。
こいつにとって、家族とか恋人とかって何なのだろう。命をかけても守りたい者というのは、いるのだろうか。
「命、ねえ……」
命をかけて、なんて容易く言える言葉ではない。お互い、明日生きているかもわからない身だ。将来の約束なんてただの1つもできない。
それでも、太宰は言った。
「いるよ。きっと、守らせてもくれないだろうけど」
ていうか、私の手に負えるような人じゃないし、と、俺をぎゅっと更に強く抱き締めた。
相変わらず体温が低い。
俺は死ぬとき、何を感じているだろうか。一人で死ぬのか、はたまた誰かと折り重なって死ぬのか。
もしそうなったら、体温を感じているのは誰だろう。動かない身体は、誰に触れているのだろう。

低い体温と細い身体と酒と薬の匂い。これを、感じているだろうか。
そうなら、いいけど。叶うわけないけど。
でもきっと、彼の祖母は幸せだっただろう。広い都会であぶない仕事をしている孫の身を案じながら、日々を幸せに過ごしていただろう。
なら、俺は幸せだ。家族なんていなくても、この時間があるのなら。こいつがいるのなら。
きっと、こういうことだ。
「ん、中也眠い?」
「……ぅん……」
さらさらと髪を撫でられる。うとうと、瞼と頭が落ちてくる。
「寝ていいよ、中也」
「……ふぁ」
「おやすみ」
俺は、あらがわずに目を閉じた。
ずっと握っていた手の温度は、ぬるかった。

これがあるから、人は生きていけるのだろう。これのために、人は生きていくのだろう。
それじゃ、俺はこのために生きてみるか。
こいつのために、
大事な人のために、
命とかいろんなものを、賭けて。

おやすみ、太宰。

とりあえずは、幸せな夢でもみよう。
中也は、愛する人の胸の中で微笑んで目を閉じた。
太宰は、そんな中也の額に口づけを落として、おやすみ、と呟いた。

幸せな、夜の話。

同じジャンルの似た条件の即興二次小説


ユーザーアイコン
作者:西園寺燐@萌爆弾魔 ジャンル:文豪ストレイドッグス お題:重い結婚 制限時間:30分 読者:650 人 文字数:1387字 お気に入り:0人
――母さん、父さん止めて、僕死にたくない―――五月蠅い!化け物め!お前はさっさと出ていけ!!!!「はっ……はぁっ、はぁっ」厭な夢を見た。幼い頃の…厭な夢。繰り返 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
首領と幼女 ※未完
作者:黒崎蘭丸信者 ジャンル:文豪ストレイドッグス お題:君の娘 制限時間:30分 読者:800 人 文字数:946字 お気に入り:0人
或る日、首領が幼女を連れて来た。金髪で碧眼、フリルを盛りに盛った赤色のドレスを着て、不貞腐れた顔をしていた。「えぇと……首領?此の娘は首領の娘ですか?」「そうな 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:黒崎蘭丸信者 ジャンル:文豪ストレイドッグス お題:孤独な広告 必須要素:高校 制限時間:30分 読者:498 人 文字数:755字 お気に入り:0人
「あ、乱歩さん」「太宰じゃん。何してんの?」「貴方なら見なくても御分かりになるかと」「…そうだね」私――太宰治は、いつものように探偵社を抜け出し、何処で入水をし 〈続きを読む〉

匿名さんの即興 二次小説


ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:ゴールデンカムイ 金カム お題:失敗の時雨 制限時間:15分 読者:0 人 文字数:355字 お気に入り:0人
重く土のような匂いが先程までの喧騒を覆い隠す。強くはなく、しとしとと肌を湿らすような雨だ。簡単に言えば、任務に失敗した。眠れなくともその体を寝袋に入れておけばよ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:刀剣乱舞 お題:同性愛の絵画 制限時間:30分 読者:8 人 文字数:1057字 お気に入り:0人
「これは見てはいけないやつだ…」加州清光は僅かに震えながら呟いた。親切心だった。いつもなんだかんだ世話になっている初期刀殿がなにやら疲れた顔をしていて、主に聞け 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:吸血鬼すぐ死ぬ お題:くさい何でも屋 必須要素:ホモ 制限時間:15分 読者:17 人 文字数:1149字 お気に入り:0人
新横浜には少し変わった何でも屋がいる。『臭いものにはなんでも蓋をする』略して『くさい何でも屋』だ。正直、これには少し語弊があるかと思う。しかし、当の本人は気に 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:スーパーダンガンロンパ2 狛日 お題:穢された水 制限時間:15分 読者:4 人 文字数:607字 お気に入り:0人
「日向クン」名前を呼んでも返事がない名前を呼べば振り向いて眩しい笑顔で返事をしてくれる日向クンはいない絶望的だ。この世の中も、なにもかもキミがいないならどうでも 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:刀剣乱舞 お題:青い血液 制限時間:15分 読者:7 人 文字数:371字 お気に入り:0人
それは、突然訪れた。前置きも、脈絡もなく、本当に唐突に。 風の噂で聞いたことがある。なんらかの影響で普通ではない特徴を持って顕現してしまう刀がいるらしい。例え 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:スーパーダンガンロンパ2 狛日 お題:穏やかな笑顔 制限時間:2時間 読者:5 人 文字数:1262字 お気に入り:0人
「ねぇ、予備学科」学校帰りの途中で待ち伏せされていたこいつは人の顔を見ては予備学科、無能、凡人なんて言葉で罵倒してくる。「なんだよ」わざとっぽくうざそうにしてみ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:ぷよぷよ お題:最後の夜風 制限時間:4時間 読者:11 人 文字数:861字 お気に入り:0人
『お前が欲しい。』いつかその言葉を、心を、自分に向けて欲しいと。そう願ってしまったのはいつ頃からだろうか。=========================柄に 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:テニスの王子様 お題:マイナーな理由 制限時間:30分 読者:8 人 文字数:341字 お気に入り:0人
財前光は見つめ続ける。白石蔵ノ介と遠山金太郎の人生を一人の登場人物として見守り続ける。なぜならば、わかっているからだ。彼だけは唯一、双方の人生をそれなり適当に、 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:真・三國無双 お題:初めての人 制限時間:15分 読者:7 人 文字数:211字 お気に入り:0人
「満寵殿は防衛に精通しているとお聞きしておりまが…」「え?防衛に興味があるのかい?防衛とは…で、罠が…さらに…」またやっている、と鍛錬を終えて料理屋に向かってい 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:スーパーダンガンロンパ2 お題:恋の職業 制限時間:30分 読者:11 人 文字数:619字 お気に入り:0人
「いーちまーい、にーまい、さーんまいよーんまい、ごーまい、ふぅん、これだけか」広いベッドの上で金札をパラパラとばら蒔く「なーんか、ツマラナイなぁあ、同級生でも襲 〈続きを読む〉