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純粋な真夜中【沖斎】

 ふと、目が覚めた。今夜は、庭で鳴いているらしい虫の声が、無性に耳につく。目を擦れば、隣ーーというか至近距離で、見慣れた童顔があどけない寝顔を曝け出していた。
 ぎゅうぎゅうと、無駄に強い力で抱きしめられている。喉の乾きを覚えたが、この腕から逃れるのは不可能だと斎藤は確信した。そして小さく息をつく。腰に感じる小さな違和感には、気が付かない振りをした。
 数刻前には自分を組み敷いて、表も裏もひっくり返して暴いて、心の奥底まで入り込んだ男が真夜中となった今ではこんなにも、まるで純粋な子供のような顔を晒しているのが不思議で仕方がない。この男はどこまでも純粋で、童子のようで、それでいて底が知れないのだ。
 最低限以上には筋肉すらついていない細い腕は、その見かけから想像出来ないほどしっかりと自分を抱きしめている。その呑気な寝顔に、どこか心がざわついた。自分よりも背が低く、体格だって華奢な男はその竹刀ダコだらけの掌で鉄の塊を握りしめ、物言わぬ人間を肉塊へと斬り捨てるのだ。
 刀を握れば美しい剣鬼へと化ける男が、今、自分を抱きしめているのがなんとも不思議で、どこか自然だった。
 さらさらの前髪を、はらりと払い除けてやる。墨のように真っ黒な瞳は、瞼の奥へと仕舞われている。
「はじめ、さぁん」
 むにゃむにゃと。まるで母を呼ぶ子供のように、その唇から寝言が洩れた。その甘い響きに、一瞬、心臓が大きく動いた気がした。
「も、むりです……ふふ、もう、食べられ…ない……」
 赤子のような寝言が零れて、斎藤は苦笑する。この沖田総司という男はこういう男だと、斎藤はとっくの昔に知っていた。知っていても、時々こうして気付かされる。
「……阿呆が」
 斎藤は小さくそう零し、沖田の腕を外すことなく、その腕の中でもう一度、微睡みに意識を委ねてしまうことに決めた。

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