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屍と山頂

※アイ+マル


 剣を振るう動作というものは、元より身についていたものだった。元の世界で幾度となく振るった剣を、この世界に来てからも振るい続けている。というより、こちらの世界に来てからは、そうして剣を振るうことこそが主軸になっている。
 僕らは生きるために剣を振るうのではなく、戦い、競い、高め合うために剣を振るっているのだ。


「今日は随分と剣筋が鋭いな、マルス」
「そうかい? 自分では、あまり自覚はないけど」
「ああ。間違いない」
 しばし打ち合った後、アイクは感心を載せたような視線でマルスを見た。は、と息を吐き、額の汗を拭う仕草は、歴戦の戦士のようでもあり、気品を損なわない王族そのものでもあった。マルスはアイクの視線を受け、ゆるく瞬きをする。今日は確かに、迷いがあまりなかったような気がする。
「何か吹っ切れるようなことでもあったか?」
「吹っ切れる……どうだろう。元々、そう悩みがあった訳でもないし、……」
 言いかけて、はた、と止まる。
「……違うな。ねえ、アイク」
「ん」
「ここで剣を振るうのは、どういった感覚だい」
 真っ直ぐな空色の眼差しを受けたアイクもまた、真っ直ぐな海色の視線を以て応える。
「……正直なところ、楽しくて仕方がない。俺より強い奴が大勢いて、俺も強くなっていることを、日々実感している」
 それは、一切の迷いのない言葉だった。強くなるのがとにかく楽しい、戦うのが楽しい、と。そう告げる口ぶりは、ひどく正直なものだ。マルスは何度かその言葉を咀嚼し、なるほど、と一度頷いた。
 楽しい。
 その感情を持って剣を振るうことが、許された世界だ。
「マルスはどうなんだ」
「僕?」
 ファルシオンの柄に指を滑らせながら、マルスはそっと視線を下げた。

 剣を振るうということは、戦うということは、ひどく恐ろしく、使命的で、避けられないことだと思っていた。誰も傷つけたくはないというのに、勝利して大勢を救い、仲間や民を守り抜くには、剣を振るうしかなかった。
 人の身に切っ先が触れた時の感覚を、今でもありありと思い出せるし、その度に指先が震えもした。

 それは元の世界でのことだ。

 ここでは、剣を振るうことは。正当化されている。
 戦う為の剣。強くなる為の剣。
 たくさんの血を浴びながらも、この剣は、そうして純然な目的に辿り着いた。

「……まだ、わからないかな」
 アイクよりも多くの経験を積みながらも、マルスは未だ、答えを出せずにいた。迷いながら絞り出された言葉に、アイクは一度頷き、そうか、と相槌を打った。
「それでいいんじゃないか、お前は」
「そうかな」
「迷いながらでも、あれだけ鋭く剣が振れるんだ。十分だろ」
 剣を振るという事実に対して、迷ってしまうこと、優しさということ。それさえも、彼の剣を光らせるもののひとつだった。
 マルスは少し困ったように、眉を下げて微笑むばかりだった。強く、なりたかった。ここはとうに、屍の山ではないのだから。

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