ジャンル:刀剣乱舞 刀さに お題:運命の情事 制限時間:30分 読者:38 人 文字数:1671字 お気に入り:1人
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嘘と言って(にかさに)



 いつかは抱かれたいとは思っていた。
 けどそれは空想のなかでしかなくて、殻を破ってはいけない物語だったのだ。
 通じ合うことはひどく恐ろしく、あなたのなかで、わたしの価値がつながって、存在してしまうから。
 一方通行でいつだってよかった。
 見返りはいらない。憧れて、焦がれて、己がその情動で息が出来るのであれば、それでよかった。

 わたしは姑息である。
 己の感情さえも生き汚く這いずることの糧にする。

 だから、触れられるよりも、触れていたかった。
 拒否をされればやめようと思っていた。
 きっと駄目だと言われればそこでやめて、次を探していたに違いない。
 それぐらい適当だったのだ。

 添い寝をお願いしたのも、彼じゃなければいけない絶対の理由はなかった。
 怒りそうにもたしなめそうにもなく、そして不運を少しばかり拭ってくれそうだという、独りよがり大満載の理由をつらねて縋っただけの相手に、たまたま青江が当てはまっただけのことである。
 よりにも寄って同じ布団で添い寝をしてほしいという倫理観を三段飛ばして放り投げたような願いを、青江はなめらかな声で承諾したのを覚えている。

 それに、何年ぶりかもわからない安堵を覚えたことも。

 
 最初の頃など、意識はしていなかった。
 男の身体を模しているのは頭のどこかでは理解できていたが、ひとの温度が欲しくて、触れていたくて必死だったのだ。
 青江の肌は、他の刀よりも冷たくて、頬を寄せるとぴたりと私の耳殻の温度を0.5度ほどさげた。
 その半音ばかりひくい肌の向こうで、心臓がリズムよく鳴っているのを聞くのが好きだった。


 とくん、とくん。


 寝間着にきてくるジャージのジッパーを勝手にさげて、素のままの肌にぺたりと耳をつけたのに、最初はさすがになにか戸惑うような声をあげていたが、ようやく安心できたのにうっかり目元を湿らせてしまったのがばれたのか、二日目からはなにも言われなくなって、どうぞ、と胸のジッパーを下げさせてくれたのには感謝しかない。

 刀剣男士のいのちも、からだも、”人間を模したもの”で人ではない。

 けれど私にとってそれはどうだってよかった。

 人の形をしていて、人とは思えないようなものは山ほど居る。

 そんなものに比べたら、彼らの身体が無機物で治ることや、想いを込めれば肉を得られることや、運動能力が飛び抜けていることエトセトラエトセトラ――――ほんの些末なことだった。

 心らしきものがあれば、ひとの温度があれば、それでよかったのだ。

 

 全部が全部、一方通行で、この刀が優しいから許されているのだと信じてやまなかった。

 今思えば、多分誰かを受け入れるなんて労力が規格外になってしまったことの言い訳なのだが。



 もう添い寝に甘えるのは悪いから、来なくも大丈夫だよ。本丸で噂になるのも煩わしいだろうし、といえば、まだ必要だろうから傍に置いておきなよ、困らないからという。

 男の身でこんなことをされても困るだろうから、いっそうのこと手を出してくれても構わないんだよ、とあさっての気の使い方をすると、日頃あれだけいかがわしい言い回しをしておきながら、それは駄目だという。

 よほど私のことが好きではないのだろうと思っていたし、こんな七面倒な女に好かれたところでなにになるのだろうと、まだ私は信じていた。

 気の良い刀で、むしろ心配なほどだった。
 
 これほどいいひとであるのならば、どこかでいつか幸せになってほしかった。

 だからそろそろ離れなくてはと、思っていたのに。



 どうして、いま、私のことを好きで、抱きたいというのか。

 口角をゆるりと蕩かして、はにかみながら眉をさげて、ゆっくりとつぶやくのか。

 なぜその瞳に私がうつっているのか理解ができないくせに、わたしはゆっくりと頷く。

 ずるい女なのだ。やめるならいまですよ、と告げたいのに、喉は動いてくれずに唇を受け入れるだけだ。




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