ジャンル:血界戦線 お題:去年のガール 制限時間:1時間 読者:44 人 文字数:1229字 お気に入り:0人

歩いてきた少女 ※未完

まだ五歳のその子は、たどたどしい言葉で手に持ったぬいぐるみの話を聞かせてくれている。
「あのね、ミニーミニーがね、おちゃとおかしをたべてるとね、モータールがね、おちゃをこぼしちゃったの。だからあたしがふいてあげたの」
「そう、それはえらいね」
言葉を返す、頬に傷のある男は、女の子と視線を合わせるために腰をかがめ、にっこりと笑いかけた。
「お茶は入れ直してあげた?」
「うん」
女の子は胸を張った。
「モータールはおちゃとおかしがすきなの。あたらしいの、あげないとかわいそうでしょ」
「そうだね。ムーチャは優しいね」
「うふふ」
ムーチャという女の子は、四つの目を細めて嬉しそうに笑う。はにかむ小さな女の子の表情は人類に近く可愛らしい。異界への租界たるHLには人類を含む種々雑多な種族が入り乱れて暮らしている。
ゆえに、このような事件は日常茶飯事だった。
頬に傷のある男は、ゆっくり立ち上がる。そしてムーチャに手を伸ばした。
「ミニーミニーとモータールの話を」
云いながら、肩越しに後ろを見やる。
「あのおじさんにもしてあげるかな。おかあさんがいなくなったことと関係があるかもしれないからね」
「おかあさん…」
ムーチャは、そのとき初めて顔を曇らせた。
「おかあさんはどこにいったの」
「あのおじさんは、君のおかあさんを探してくれるよ」
男の手に、指が三本ある手を伸ばしてつなぎ、ムーチャはうながされるままに、歩み寄ってくるHLPDの警部に引き合わせる。
「その子が目撃者か」
「そのようだね」
片目を前髪で隠した警部は、男に険しい顔をしたあとに女の子には頬を和ませる。
「お菓子やるから、あっちにいこう」
「おかし?」
女の子は顔を明るく開いた。
「ああ。ここだと寒いだろ」
今ある場所は、かつてはアパートの一室だった。しかし中庭に面した壁が抜け、反対側の窓のガラスもすべて割れてしまっていた。
「うん」
女の子は、警部に手を引かれ部屋を出て行った。
「さて……」
男がため息をついたそのとき、隣の部屋から、ドアをかがんで通り抜けてくる赤毛の大男がこちらにやってくる。
「スティーブン」
「クラウス、そちらにはなにか残ってた?」
「いいや」
クラウスと呼ばれた赤毛の男は、ゆっくりとかぶりを振った。
「事故の痕跡だけだ。誰かが住んでいた形跡もない」
「…とすると」
頬に傷のあるその男───スティーブンは、顎に手をやる。
「ムーチャはどこからやってきたんだ?」
「HLDPの聴取を待つほうが得策かも知れない」
「うん」
異界からの不可思議な客は、常になにかしらの事件や災厄とともに現れる。ムーチャも、そんな事象のひとつなのかも知れない。
クラウスを結社長とする秘密結社「ライブラ」は、そのような事象がもたらす現世との均衡を崩すものどもと戦っている。
「ともかく、一度戻ろう」
「うむ」
二人は、そうして現場をあとにした。

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