ジャンル:鬼滅の刃 お題:奇妙な何でも屋 制限時間:30分 読者:70 人 文字数:1013字 お気に入り:0人

宇髄天元が我妻善逸を女装させる話

カラ、コロ。
不思議な雰囲気を纏った男が高い下駄を鳴らしながら街を歩いていた。
男の引く屋台には『何でも屋』の上りが立っており、仕事道具なのだろう物が散乱していた。
見る限り不振極まりない男に、声をかける物好きがいた。
「そこの兄ちゃん。ちょっと頼まれてくれねぇか?」
その人物は大層な色男で、何でも屋の男はその足を止めかねた。
「……なんでしょう」
小さな声でボソボソと言葉を返せば、色男は整った顔で快活な笑みを浮かべ
「まァちょいと来てくれ」
と言った。

「コイツを女装、させられるか?」
色男──宇髄天元と名乗った──は、金髪の少年の腕をずいと引き、何でも屋に顔を見せる。
「……あぁ、お安い御用さ」
何でも屋はニタリと笑い、低く地を這うその声で応えた。
「ウチは金じゃなく物をお代で貰うんだが、モノはあるかい?」
商談に乗った何でも屋に、天元は満足気に笑いこれはどうだと七色に輝く水晶を見せた。
「ホウ、これはなかなか綺麗だねぇ。モノ自体も大きい……よし、交渉成立だ。満足のいく出来にならなくても文句は言うなよ?」
けけ、と笑う何でも屋に天元は僅かにはぐらかす様な笑みを浮かべた。

「さァ旦那、これでどうだい?」
何でも屋の仕事ぶりは目を見張るもので、少年然とした顔は花の少女の様に飾られ、着物も綺麗に着せられ、初めから少女であったような出来だった。
「おお、化けたじゃねェか」
宇随はそう言って快活な笑みを少年に向けた後、何でも屋に金代わりの水晶を手渡した。
「ありがとよ、見かけたらまた頼むぜ。」
そう残しその場を立ち去った宇随に、何でも屋はただ
「残念。その機会はもうなかろうて。」
と言ってどこからともなく現れた霞の中にその姿を眩ませた。



「しっかし、天狗の何でも屋とは珍しいものを見た」
宇随は少女の顔と相成った金髪の少年、善逸を横にそう零す。
無理矢理、しかも知らない人間に女装をさせられぎゃあぎゃあと文句を言っていた善逸が、ぴた、と口を閉じた。
「……え?」
彼は唖然としていた。天狗と言えば古くから恐怖の象徴だ。怖がりの彼が動きを止めるのは想像に難くない。
「なァんてな、冗談だ、冗談。
それよりお前、やっぱりいい顔に化けたな。」
動きを止めた善逸の顔を覗き込んだ宇随は満足気に頷く。
そんな事はどうでもいい、冗談で済むかと声を荒げまたぎゃあぎゃあと囀り出した善逸を横に宇随はまた歩き出した。

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