ジャンル:遊戯王ARC-V お題:どこかの朝日 制限時間:1時間 読者:65 人 文字数:1927字 お気に入り:0人

ある少年の朝

※ユーリとデニスと朝。過去話。


カーテンが風に吹かれ静かに揺らめき、汚れのない朝の光が少年の顔を照らす。
丁寧に作り込まれた人形のように整った顔、微かに揺れる睫毛は影を落とすほど長い。
睫毛の震えは止み、徐々に瞼は上げられる。
そこから覗くのは赤みを帯びた紫色の瞳。彼の住む場所で最も尊く偉大な召喚方法のイメージカラーと同じ色の瞳だった。
「……もう朝?」
ユーリは一人、静まり返った広い自室でぽつりと呟いた。

ユーリの目覚めはとても悪い。
朝食を自室で摂っている時も整った顔を苦々しげにしかめ、眉の間にしわを寄せるほど。
「今日のパンの焼き具合、いまいち」
そして朝から食の好みにうるさい。今日はクロワッサンのサクサクさが足りないと一人愚痴をこぼした。
ちなみにこんがりと焼けていたら今度は「焼きすぎ。苦い」と言う。

朝食が終わったら次は暫しのブレイクタイム。昨日、図書館から借りてきたばかりのミステリーを片手に淹れたての紅茶を楽しむ。
「ふーん、まあまあ面白いじゃない。借りてきて良かったかも」
そして一口紅茶を飲む。ポットにはまだたっぷりとおかわりの分が残されている。
ユーリが住む場所にはTVが存在しない。新聞もなく、外の情報が一切入ってこない。
その上周囲を海に囲まれた場所でもあるため、物理的にも閉ざされた世界だ。
そこにあるのはデュエルのことだけ。デュエル、デュエル、デュエル!
そう、ここはデュエルアカデミア。デュエル戦士を育成し次元戦争に駆り立てていく総本山。
少年少女達は年相応の好奇心を封じ込められ、情報統制された管理社会で生かされ洗脳されていく。
それに順応し従順なアカデミアの戦士として生きていくのか、それとも反旗を翻すのか。
後者を選んだ生徒に未来は、ない。

ディスクに着信が入る。第一の事件が起きた直後という盛り上がりの場面で水を差され、ユーリは舌打ちを一つした。
しかし相手の名前を見た瞬間、表情をきっと引き締める。
自分本位できまぐれ、常に誰かを従える立場のユーリがここまで態度を改める相手はこの世界に…この次元に一人しかいない。
「……おはようございます、プロフェッサー」
耳元で紡がれていく壮年の男の声を聞きながら、彼はぼんやりと思った。
――もったいないけど紅茶のおかわりは今すぐ飲み干さなくちゃ、と。

読み途中のミステリーに暫しの別れを告げ、ユーリは身支度を整える。
彼を従わせることができる権力者、そして彼自身だけが身に纏うことを許された色。赤でも黄でも青でもない。
その事実は彼の自尊心をいっそう強いものとした。
ユーリは自分の瞳の色も、それと同じ色の特別製の制服も大好きだった。
初めてこの制服を与えられた日、鏡の前で紫を纏う自分の姿を何時間も見続けたくらいお気に入りである。


「Good morning,Joeri!……どうしたの?」
「おはようデニス。またキミかぁ、って思っていただけだよ」
登り始めた朝日よりも更に明るいテンションで話しかけてきたのは、オレンジ色の髪と右目の下の泣きほくろが特徴的な少年。
最近プロフェッサーの紹介で共同任務をするようになった海外からの留学生、デニス・マックフィールドであった。

「またって…つれないなぁ。だってボク達パートナーだもの。この前の共同任務も褒められたじゃない」
「まぁ良いんだけどね。キミは他の奴らよりも足手まといじゃないから」
デニスはユーリからの(彼なりの)褒め言葉にぱあっと顔を輝かせた。緑色の瞳までキラキラと煌めきだしてくる。
「ユーリから褒められるなんて嬉しい!もっと言って!」
「しつこい。行くよ」

今まで他人から遠ざけられ、親しい身近な存在を一人も持つことを許されなかったユーリにとって、デニスは異世界の住人であった。宇宙人のようだとも思った。
邪険にしてもぞんざいな扱いをしても、彼は他の生徒と違い全くめげずついてくる。
そして適度に邪魔でもなくそこそこ自分の役に立つそんな「ちょうどいい感じ」のデニスを側に置き続けている。

この関係の名前を、ユーリは知らない。

「ねぇユーリ、今日の任務はどんな感じだっけ?」
「はぁ?キミさぁ、プロフェッサーからの通信真面目に聞いてたの?」
「まだ起きたばかりで頭に入ってなかったんだよぉ……ユーリって結構マジメだよねぇ」
「茶化すのやめて。僕は読みかけの本も放り出して来たっていうのに」

「――で、今日は密偵任務?それとも……」
「ふふ、アカデミアの裏切り者達のアジトがわかったから全員始末してこいって」
「朝からハードだねぇ……」

そうして彼らの、ユーリの一日は始まる。

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