ジャンル:遊戯王ARC-V お題:愛と欲望の笑顔 制限時間:30分 読者:39 人 文字数:1215字 お気に入り:0人

泣くことも、笑うことも

※ユートとユーリ。統合後。暗め。

「君は笑うのが下手くそだねぇ、ユート」
ふと、ユーリに顔を覗きこまれそのまま鼻で嗤われた。
手をそっと頬に沿わせる。どこか強張ったような、自分の表情筋。
「これでも昔よりずっと上手くなった。前はもっと動かせなかったんだ」
そのまま自分の目の前の相手に向かい吐き捨てる。
「へぇ。誰のおかげで上手くなったのかな?まぁ大体検討はつくか」
「……」
ユーリはさっきから表情を変えない。赤みがかった紫の目を細め、両の口角をきゅっと上げたまま。
彼の表情で一番多い、その笑顔。
彼…ユーリはよく笑う。もっとも彼の場合は「笑う」というよりは「嗤う」と言った方が正しいが、と自分とよく似たその憎たらしくて仕方ない顔を見つめる。

――嫌な笑いかただ。見ていて心がざわめく。
静かな湖面に石を投げ込まれたような、感情の揺らめき。
これは自分と彼が瓜二つでありながらどこまでも交われない存在だからなのか、それとも憎い仇相手だからなのか。

「……君は笑うのが上手いな、ユーリ。見ていて不快なくらいに」
不快感を隠しきれずかなり嫌みったらしい言い方になる。
しまった、と思ったが言葉の弾丸は止められない。
しかし彼は俺の言葉など気にも止めなかったようだ。
片眉を上げて
「わー、褒めてくれてありがとう。とぉっても嬉しいよ。昔から笑うのは得意なんだ!」
嬉しさも微塵も感じない、所々トゲのある言い方で返された。

「笑うことは苦手でも、泣くくらいは得意じゃないの?ねぇユート?」
「泣くのはもっと苦手だ。俺が泣くのは……」
多分、大切な人達を喪った時。そう言おうとしたが言葉に詰まってしまう。
――もう、俺には誰かのために涙を流す資格なんてない。
「なに?どんな時?」
急かすユーリの言葉さえも腹立たしい。答える気にもなれずそのまま沈黙を貫いた。

暫しの沈黙の後、それを破ったのは場違いなほどの溜め息だった。
「はっ。君はどっちも上手くできないんだね」
さっきまでも愉しげな様子はさっと引き、そこには無表情のユーリがいた。
嘲笑っていた瞳は、今は黒々と底知れぬ闇を映し出している。
「つまんないの」
彼の感情を無くした言葉が、そのまま俺達以外誰もいない緩やかな監獄に響き渡った。

どこまでも何もない彼を見つめるうちに、ふと自分でも不可解な気分になってきた。
――今の、空虚な彼に近づいてみたい。

「……ユーリ、俺は先ほど『君は笑うのが上手い』と言ったが、それは間違いだった」
そのまま空っぽの彼に近づき、そっと頬を撫でた。
しっとりとして滑らかな手触り。自分の肌の質感との違いに、本当に元は同じ人間だったのか疑問が湧き出てくるほどだった。

「君は、笑う真似が得意なんだな」
ユーリは俺の手を払いのけず、そのまま受け入れていた。
そうして泣くことも、笑うことも上手くできない俺達は流されるように抱き締めあった。

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