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飛翔 ※未完

それは鳥の形をした凶器だった。
別に特段の用もなく、贔屓の作家が出展していた訳でもない、ただ商談と商談の間を埋めるためにふらりと訪れたギャラリーで。
その絵は異彩を放っていた。
今まさに羽ばたかんとするアカゲラ。
決して有名でもなければ特段に美しい訳でもない鳥だ。
それが、枝から飛び立とうとしている、絵。
言葉にすればそれだけなのに、心が引き裂かれるようだった。
絵の下には、仰木高耶、という画家の名が記されたプレートがある。
彼がどんな状況で何を思ってこの絵を描いたのか。
詳しいことなど知りようもないが、彼はきっとどこにも行けないのだろう、と思った。
不自由な自己、叶わないと知りながらそれでも思わず自由へと手を伸ばさずにはいられない。
そんな絵だ。
飛び立ったところで、このアカゲラに幸福が訪れるのかどうかはわからない。次の瞬間、猛禽の餌になるかもしれない。
それでもまっすぐに宙を見つめる目。
飛び立つためだけに力を蓄え、緊張する筋肉。
彼は飛び立ちたいのか。

「この絵を買いたい。それと、この仰木高耶という画家と連絡をとる手段はないか」

仰木高耶は長野の山奥にある、自宅兼アトリエにひとりで住んでいるらしい。
次の休日を待って車を飛ばした。
あれから調べたことによると、仰木高耶は新進気鋭の作家で、今画壇ではかなり注目されている存在のようだった。
その彼がなぜあれほど閉塞感に満ちた絵を描いたのだろう。
いや、あの絵を見て閉塞感を感じたのは俺だけらしかった。
厳しい自然の中で生きる小さな命を瑞々しく描き上げた、などと評価されているらしいが、俺にはとてもそんな風には思えなかった。
彼は飛び立ちたくて、飛び立てないでいる。
風切り羽を切られてしまったかのように。
その訳がどうしても知りたかった。

車を麓に停めると、後は軽い登山だ。
5月も後半ともなると、山の緑は息苦しささえ覚えるほどだった。
聞こえるのは葉ずれの音と鳥の声。
彼が描いたアカゲラも、どこかにいるのだろうか。

彼の家は中腹にあった。
「ごめんください。東京から来た直江です」
ややして、扉が開かれた。

どくん。

心臓が波打ったかのような感覚があった。

彼は無言のまま目を伏せ、扉を開けたまま、家の中へ戻っていこうとするので、慌ててついて入った。

今のはいったいなんだったのだろう。

「今はコーヒーは切らしていて熊笹茶しかないが構わないか」
「はい」
仰木高耶は二人分の湯飲みに茶を注ぐと戻ってきた。
「座れよ」
「失礼します」
腰を下ろすと、仰木高耶は相変わらず伏し目がちに、
「おまえ、何か持っているのか」
と意味のわからない質問をした。
手土産、とかそんなものを表しているのではない、という確信がなぜかあった。
「だいたいの客は玄関先でひっくり返るよ。おまえ、何ともないのか?」






















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