ジャンル:遊戯王ARC-V お題:僕と宴 制限時間:1時間 読者:56 人 文字数:1857字 お気に入り:0人

僕達は、上手くできない



※「泣くことも、笑うことも」の続編。ゆりゆと気味。統合後。殺伐。

僕は楽しそうに笑っている人が好き。
だって、楽しそうにしてるほどその後デュエルでぐちゃぐちゃに敗北を味わわせた顔が見ものだから!

鼻水を流してみっともなく泣き叫んで命乞いを始める奴。
顔を真っ赤を通り越してどす黒くさせて怒り狂う奴。
「冗談でしょ?」とでも言いたげに呆然と僕の顔を馬鹿みたいな顔で見つめる奴。
そんな連中の顔をじっくりと楽しんだ後、カードにしてあげる。
そして誰もいなくなった空間で思いっきり声をたてて笑ってやるんだ。僕だけの、独りぼっちの宴。
――その時だけ、僕は心から笑えるような気がしたんだ。

人をカードにするのは本当に楽しかったのか、誰かの心を踏みにじって心の底から笑えていたのか、今でもよくわからない。
遊矢に負けて吸収された僕は、真実を知る機会を永久に失ったからね。

その代わり、ずっと遊んでいられる最高の玩具といつでも一緒にいる権利を得た。
遊矢…彼とのデュエルは筆舌尽くしがたいほど最高だった。この子とずっと一緒にいられるなら、この先誰かをカードに出来なくなってもいいや。
そして溢れるような笑顔も泣き顔も敵意剥き出しの顔も本当に可愛い。いっぱい困らせて泣かせて怒らせた後、思いっきり甘やかしてあげたい。
そしてとろけるような笑顔を僕に見せて欲しいな。そのあとまたびーびー泣かせてやりたい。上げて落とすって感じで。
そう考えると僕は遊矢の泣き顔が好きなのかなぁ?

ユーゴ…彼は一度僕と一つになった。彼の荒れ狂うような感情が胸の中で渦巻いた時、震えるほど興奮したのを覚えている。
僕じゃない誰かが自分の中で暴れまわっているのを味わえるなんて、本当に素晴らしい経験をしたよ。もう一回したいくらい。
彼は泣くのも笑うのも得意だけど、僕が一番好きなのは怒っている顔。
透けるような白い肌が赤みを帯びて、あの綺麗な瞳が血管が切れそうなくらい血走っているのは……ゾッとするくらい美しかった。
あれが見れるなら一回くらい殺されたっていいや。痛いのは嫌いだからそれなりに反撃するけどね!

あいつ……あいつはよく分からない。
残りの一人でエクシーズ次元の、ユート。
だって、笑いもしない、怒りもしない、泣いてる所も見たことない。
いつもむすっと無表情で、遊矢と…あとたまにユーゴ話しかけているのを見かけるくらい。
その時の目はものすごーく優しくて、少しだけ口元が笑っている。
なんかぎこちなくてひきつっているようにもみえるけど。
ちなみに僕は話しかけられたことはない。無視されている。いないもの扱い。

――まあ当然か、僕はアカデミアの人間。ユート達エクシーズ次元の人間が何百回何千回殺しても足りないくらい憎い相手。
そんなのと四六時中一緒だもの。見たくもないよね。同じ空気を吸うのも気持ち悪いと思ってるんじゃない?

だったら直接僕にぶつけに来いよ。
黙ってないでさ、胸の中に溜まりっぱなしのドロドロをこっちに向けて欲しいな。
僕、良い子ぶって表面上ニコニコしている奴が一番嫌いなんだ。
遊矢もユーゴも、僕に様々な感情をぶつけに来てくれたよ。僕は当然全力でそれを迎え入れた。
だから君もおいでよ、ユート。
怒り、悲しみ、怯え、憎悪、嫌悪……殺意。全部ごちゃ混ぜにして僕を殺しにおいで。

その時の君の表情を見たい。だれも見たことのない、多分ユートの大切なオトモダチも見ていない良い顔をすると思うから。
僕を傷つけて愉しげに笑うかもしれない、凍りつきそうなほど冷たい目で見下ろすかも。
それともぼろぼろ涙を流しながら泣くのかな?
ああ、楽しみ!


――そういう気持ちで「君は笑うのが下手くそだ」ってからかったのに、なんだこの状況は。

僕は今、ユートと抱き締めあっていた。何も言わず。
彼の体温が僕の体全部に伝わってくる。背中に回された腕が痛い。あんまり締め付けないで欲しいんだけど。
そしてさっきから頭の中で繰り返されるユートの言葉「――君は、笑う真似が得意なんだな」。
なにそれ。僕のことを今まで無視してきた奴が、分かりきったような口で言わないでくれる!?
ムカついて仕方ないはずなのに、彼から離れることも、彼の程よく筋肉がついた背中から腕を外すことさえも出来なかった。
彼のどこまでも真っ直ぐな灰色の目を、見たくなかった。
ふと、目頭がつんと痛くなった気がする。
うm

僕は笑うことも、泣くことも真似ばかり。

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