ジャンル: お題:走るしきたり 制限時間:30分 読者:25 人 文字数:1279字 お気に入り:0人

トオカズ 最終回後のある日 ※未完

 日曜昼、吾妻橋をのんびりと歩いている最中の事だった。
「走って!」
「は?」
 どこか懐かしいロングヘア―の一稀が、ハイヒールのまま走って来たと思ったらこちらの右手をとってさらにスピードを上げて走っていったのだ。当然、手を引かれた俺も一緒に走る事になる。
「ふぅ、ここまで来れば大丈夫かな……」
「……お前、何してんだよ」
「ああ、この恰好? 懐かしいでしょ。昨日、春河がもう一度サラちゃんに会いたいって言ってたからさ。サプライズプレゼントとしてサラッと登場しようかと思ったんでぃーっしゅ」
 飛び込んだ欄干の下で穏やかに会話しながらも、一稀は背後を気にしていた。走っている間も後ろをチラチラと気にかけていたが、何やら訳ありなのか。
「いや……その恰好の理由は兎も角として。弟に見せるだけなら家で着替えれば良かっただろ。なんで駅前を全力疾走してるんだよ」
「春河は今日病院なんだよ。だから、帰って来たタイミングでサラッと帰宅アンド登場ってしたかったんだ。それで、いつものトイレで着替えてたんだけど……春河の前に、その……サラのファン? とかいうやつに見付かっちゃってさ。だから逃げてたんだ」
「成る程な」
 傍目から見て、アイドルのサラとこの一稀はよく似ているらしい。自分や燕太はあまり感じないが、握手会の時は替え玉に気付かれなかった程なのだ。矢逆一稀という人間を知らない人物であれば猶更、この一稀をサラ本人だと間違えてもおかしくはないだろう。「そろそろいなくなったかなー」と言いながら後ろを振り返る一稀は、いつも通りの矢逆一稀にしか見えないが。
「どうしよう。そろそろ春河も帰って来る時間なんだけどなぁ」
「アイドルファンのひとりやふたり無視すればいいだろ」
「良くないよ。それに、あの人達結構しつこかったから。下手に無視して、家までついてこられても厄介だし……」
「それは確かにそうだな」
 会話が終わるタイミングで、頭上に足音が響いた。「やっぱ見間違いだったのかなー」という声も聞こえてきてはいるので、おそらく暫くやり過ごせれば向こうが諦めるだろう。
「……その服、まだ持ってたんだな」
「ああ、これ? ちょっと小さくなったりしてるから、全部があの時のままって訳じゃないよ。新調したのもあるから。靴とか」
「わざわざ買ったのかよ……」
「いつか必要になるかなって思ってさ。準備だけはしておいたんだ」
 人生に於いて女装が必要になるタイミングなどそうそう訪れはしないと思うのだが。しかし一稀は大真面目な顔で「役に立って良かったよ」と続けている。
「そろそろ行ったかなぁ……あ、そうだ悠。写真撮ってよ」
「は?」
「ここだとちょっと光が少ないかな……まあでも駐車場なんかと同じくらいの光源だし、どうにかなるよね。はい」
 いつかの自撮りミッションとやらと同じように、スマートフォンを手渡される。アサクササラテレビのカバーがどこか懐かしい。言われるがままにシャッターを切れば、『パシャコン』という音が響いた。
「よし、これでオッケーかな。ありがとう、悠」

同じジャンルの似た条件の即興二次小説


見つかりませんでした。

ろと@お原稿中の即興 二次小説


ユーザーアイコン
テル律小噺 ※未完
作者:ろと@お原稿中 ジャンル:mp100 お題:疲れたカップル 制限時間:30分 読者:6 人 文字数:1466字 お気に入り:0人
「…………結構、厄介でしたね」「そうだね。まさか、あそこでああも沢山出てくるとはねぇ……」 まさに疲労困憊、満身創痍といった具合だった。僕らふたりとも。「こんな 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:ろと@お原稿中 ジャンル: お題:苦しみの男 制限時間:30分 読者:20 人 文字数:1469字 お気に入り:0人
「あ、この曲……」「切ないわよねぇ、誰だって好きな人の運命の人になりたいのに。それをこんなに綺麗に歌われちゃうとさ。傷心の時なんかは特に沁みるのよー……って、あ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:ろと@お原稿中 ジャンル: お題:走るしきたり 制限時間:30分 読者:25 人 文字数:1279字 お気に入り:0人
日曜昼、吾妻橋をのんびりと歩いている最中の事だった。「走って!」「は?」 どこか懐かしいロングヘア―の一稀が、ハイヒールのまま走って来たと思ったらこちらの右手 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
霊律 ※未完
作者:ろと@お原稿中 ジャンル:mp100 お題:くだらないサイト 制限時間:30分 読者:21 人 文字数:1685字 お気に入り:0人
学校帰りの通学路で見知った詐欺師と遭遇したのも、それが7月2日の午後5時だったのも、ただの偶然でしかなかった。今日は従業員がみんな休みだとか、幸いにも依頼が来 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:ろと@お原稿中 ジャンル: お題:当たり前の誰か 制限時間:30分 読者:22 人 文字数:1477字 お気に入り:0人
当たり前の日常なんてもの、実は存在しないんだってことを知ったのは中学生の時だった。今度こそ大切にしたいと思った繋がりを失いかけたり、それでも手を伸ばしたり。結 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:ろと@お原稿中 ジャンル: お題:オレだよオレ、美術館 制限時間:30分 読者:47 人 文字数:897字 お気に入り:0人
例えば知らない間に見知った店が閉店していたり、別の店に変わっていたり。建物ごと消えたり増えたり。それによって道路や街の景色さえ変わっていたり。時間が経つという 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:ろと@お原稿中 ジャンル: お題:暴かれた祝福 制限時間:30分 読者:26 人 文字数:1194字 お気に入り:0人
良くも悪くも無関心であることは、幸福なのか不幸なのか。良かったのか悪かったのか。今となっては分からないけれど。それでも、この想いが漏洩したその後でも友人でいら 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:ろと@お原稿中 ジャンル: お題:ぐちゃぐちゃのコンサルタント 制限時間:30分 読者:43 人 文字数:1160字 お気に入り:0人
隣でスマートフォンの画面を無表情に眺め時折画面をタップするその指先を、見るともなしに眺める。先程までの笑顔が嘘のように、凪いだ瞳はまるで無機物のようだ。「久慈 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:ろと@お原稿中 ジャンル:DD! お題:今日のゲストはクリスマス 制限時間:30分 読者:45 人 文字数:1149字 お気に入り:0人
『それでは! ここで一曲挟んでからお待ちかねのゲストが登場です! なんと、今日のゲストは……クリスマスといえば、この人なあのお方が登場です! お楽しみにぃ! で 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:ろと@お原稿中 ジャンル:DD! お題:混沌の町 制限時間:30分 読者:55 人 文字数:873字 お気に入り:0人
窓から見えるふたつの太陽が沈んでいき、夕日の赤色に夜の色が混じり始める時間帯。インクを幾つも混ぜ込んだような複雑な色合いの空が、存外に好きだった。「お客さん、 〈続きを読む〉