ジャンル:コードギアス お題:2つの祝福 制限時間:1時間 読者:883 人 文字数:2216字 お気に入り:0人

すれ違う祝福

俺は誓った。もう、ナナリーを悲しませないと。あの日、確かに誓ったんだ。

ルルーシュ・ランペルージ。今はこれが俺の名だ。アッシュフォードに匿われ、今まで隠れて生きてきた。地位も、名誉も、誇りも捨てて。
いや、元々俺はそんなものは持っていない。あったのはただ、皇子。かの、シャルル・ジ・ブリタニアの子供であるというレッテルだけ。

そう、俺がこうして今生きていられるのも、あいつの力があってこそ。笑える。皇位を失ってさえも、俺はあいつの名に頼らなければならないとは。

気がつけば、笑みがこぼれていた。

「お兄様?どうされたんですか?」

ハッとして首をあげると、机の向かい側には、ナナリー・ランペルージが車椅子に座ったまま首を傾げていた。

今は食後のティータイムだった。お茶ももう冷めきっている。

「いや、何でもないよ、ナナリー」

俺は笑って答えた。するとナナリーは、よかった。と安堵のため息をついてから、少しためらうように言った。

「あの、お兄様。一つご提案があるのですが…」

ーーーーーーーー
僕はもうあの頃には戻れない。あの行動が僕を元には戻さない。あのころの三人にはもう、戻れないかもしれない。

僕がイレヴンだから、名誉ブリタニア人だからとか、そういう理由じゃなくて、人間として。もうあの優しい二人には触れられない。

このアッシュフォード学園はブリタニア人だけでなく、イレヴンの入学も認めている学校だ。だから、隔たりから引き起こされる事件も多い。

「スザク…」

幼馴染。そう形容したい友。ルルーシュが悲しい顔をして話しかけてきた。その顔の理由は分かっている。僕が手に握りしめている落書きのされた運動着のことだろう。

水道で擦っても簡単には落ちそうにない。

彼からしたら、目を背けたいことかもしれない。だけど、これが現実。受け止めなければならない境遇。僕はそう諦めていた。
ーー。
「ルルーシュ、学校では僕とかかわらない方がいい。名誉ブリタニア人と友達だと思われるよ」

屋上を吹き抜ける風が二人の頬をなでた。

「俺は別に、気にしない」
「君が気にしなくても、気にする人はいるんだよ。いいんだ。君が生きていてくれただけで、僕は満足だから」

そう言い残して、僕はその場を去った。

もう僕の手は、君と握手は出来るほど、綺麗では無いんだ。

ーーーーーーーーー。
あの日から2.3日は経過しただろう。相変わらず僕はルルーシュとは目を合わせずに過ごしていた。
最初の頃こそ、舌打ちをされる勢いだったが、最近ではだいぶ慣れたようで、全くのスルー状態。
これでいい。これでルルーシュは僕の汚れに気づかずに済む。それだけで十分だ。

授業終了後、いつも通りカバンに教科書類を詰め、帰るために席から立ち上がった。だが、そこにちょうどよく、ルルーシュも立ち上がり、暑苦しそうに襟首をつまみあげて、教室を出て行った。

普通の人が見ればただの日常だろう。だが、僕たちにとっては違うものだった。

ーーー。

「屋上で会おう、か」
「ああ。また使うことになろうとはな」

いつも通りの面白くなさそうな顔でルルーシュは言った。
「でもルルーシュ、」
「待て、お前が言おうとしていることは分かっている。今日呼び出したのはこれだ」

そう言って差し出したのは一枚の封筒。開くとそれは招待状であった。

「スザク。これはナナリーが企画したものだ。…来るよな?」

僕は君たちとはもう、一緒にはなれない。いられない。だって、もう僕はそんな資格などないのだから。

「…、ルルーシュ、僕は」

「スザクさん、どうか。どうか、お願いします」

声に驚き振り返ると、そこにはいつしかみた、車椅子の女の子がいた。盲目だが、なぜが力のある眼差しを感じた。

「し、しかし、僕にはそんな資格…」

「あります。だってあなたは、枢木スザクさんですもの」

澄んだ笑顔だった。僕は最近こんな笑顔を見ただろうか。謙った笑みばかりで、心からの笑みなど見た覚えなどないに等しい。
そんな心が、判断を鈍らせた。

ーーーーーー。

時折流れていく風が芝生を撫でて、草の香りを一気に舞い上がらせる。目の前に置かれている弁当の匂いもいっそう際立っている。

「うぅ…結局来てしまった」

「嫌なのか?」

「違うよ、ただ…僕は。僕にはそんな資格が無いと言ってるんだ」

下を向く僕の手にナナリーはそっと手を被せた。

「大丈夫ですよ、スザクさん。だってほら」

ナナリーは僕の手をそのままルルーシュの手の上に乗せた。

「こんなにもお二人の手は温かい。そして優しい香りがします。昔のように」

僕は、あの日から自分の手が血の匂いしかしなかった。あの日の父が、何より自分の手が嫌いだった。

そんな手を、ナナリーは優しい香りのする温かい手だと言った。

僕はーーーー。

ーーーーーーーーーーーー。
スザクがここまで頑なに俺たちを避けるのかは分からない。だが、今は昔のように手を重ねている。

そうだ。俺は皇帝の名の下に生きているのではない。俺はこんな日常が欲しくて、ナナリーを幸せにしたくて、黒の騎士団を造った。

そうだ、スザク。お前が近くにいてくれればなんの心配もない。俺は、安心してあいつの首を取りにいける。

俺はーーー。
ーーー。

「また


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