ジャンル:イナズマイレブンGO お題:灰色の悲劇 制限時間:1時間 読者:2308 人 文字数:1739字 お気に入り:0人
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灰色の悲劇。※死ネタ注意

灰色は嫌いだ。





「どうした、剣城」
気分でも悪いのか?

「いえ、」

平気です、と小さく首を振る。
それでもまだ心配そうにしている神童に、剣城は俯いていた顔を上げた。

――神童先輩に迷惑をかけるわけにはいかないだろ。

頭が痛い。暑いのは苦手だ。
全身に汗が伝い、気持ちが悪い。しかし、それを我慢して、無理矢理笑顔を作った。

「本当に何もないのか?」

「えぇ、問題ないです」

さぁ、早く行きましょう! 久しぶりのデートなんですから、と明るく言った。

「あ、あぁ。分かった」

早く早く、と言うように神童の手を引く。
そんな剣城に驚いたような神童だったが、すぐに笑顔になった。

よかった、何とか誤魔化せたようだ。

ほっと息を吐いたが、

「辛くなったらすぐ俺に言うんだぞ?」

「分かってますよ」不貞腐れた子どものように答えた。





デートはとても楽しかった。

小動物にメロメロになっていたり、俺だってイルカに乗れるぞ! と、ムキになって水槽に飛び込もうとした神童を止めるのは大変だった。
どれも、普段は冷静な神童の初めて見た別の表情で、自分だけが知っているというのが剣城には嬉しかった。

「全く、我慢しないで俺に教えろと言っただろう」

「……すみませんでした」

そんな中、暑さに負けぶっ倒れるとは何という失態だ。
抵抗できず、素直に公園のベンチに寝かされた剣城は己を呪った。

せっかくのデートだったのに、神童先輩も呆れただろうな…。

優しく介抱してくれる神童だが、実際はどう思っているのだろうか?
デートを台無しにした剣城をもう好きではなくなってしまったのかもしれない。

神童先輩にもし、フラれてしまったら…。きっと自分は生きていけないだろう。

身体も心も、気持ちが悪くて吐きそうだ。



「…神童、さん?」

「大丈夫、俺は剣城を嫌いになんてならないよ」

髪に、温かいものが触れた。
それが愛しの人の手だと気づき、つい涙を流してしまいそうになった。

「ありがとう、ございます…」
俺も神童先輩のことが大好きです。

最後の方は掠れてしまった。

「うん、分かってる」

けれど、神童はまた、優しく髪を撫でた。



「そうだ。何か飲み物買ってくるな」

剣城はそこで待っていろよ、そう言って走っていった神童を見送った。

(神童さんの背中、なんて頼もしいんだろう…)

背は自分の方が大きい筈だ。
しかし、「剣城を守る」と力強く言った神童は誰よりも格好良かった。

ちょっと前までは俺が泣かしてやってたのにな。

今じゃこの俺が泣かされる側かよ、先程のことを思い出して、急に恥ずかしさがこみ上げてきた。
顔に熱が集まる。暑さのせいじゃない。思っていたよりも自分は、彼に惚れていたのだ。

「(神童先輩が戻ってきたら、どんな顔をしたらいいんだ?)」

剣城は一人、両手で顔を覆った。



――だから、灰色は嫌いなんだ。



「遅いな…」
どこまで買いに行ったんだ?

あれから神童は、なかなか戻ってこない。
しばらくジッとしれいたら体調も大分回復したので、もしかしたら迷っているのかもと思い、探しに行こうとベンチを降りた。



「(いた…!)」

やはり、迷っていたようだ。
反対側の歩道に神童を見つけた。

「神童せんぱい……っ!」

「剣城…?」

もう大丈夫なのか? …心配そうに彼は。

「あぶないっ……!」

絶叫は、届かなかった。

キキィィィ―――…!
トラックが急ブレーキをかける。

…間に合わなかった。

「神童…さん…?」

女の人が甲高い悲鳴を上げた。
運転手がその血まみれの彼に近寄った。通行人が道路の真ん中へと輪を作り……。

「止めろ…、神童さんに近づくな…」

小さく震えた声は誰の耳にも届かなかった。

「嫌だぁぁぁぁ…!」

頭を鷲掴んで、その場に崩れた。

神童さん、神童さん、神童さん…。

もう彼は、返事をしない。
俺の元に、彼はもういない―――。





だから、灰色は嫌いなんだ。

(あの夏の日を思い出してしまうから)
























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