等価交換の赤い雨(狛日)



※カゲロウデイズパロ。何かよく分からない並行世界(狛枝視点)。
一応グロ・流血描写注意

8月も半ばになってきた暑い日の午後。雲一つない快晴だ。
「やあ日向クン!こんなところで君に出会えるなんてボクはなんて幸運なんだろうね!」
「うげ、狛枝…」
公園で偶然目に入った特徴的なアンテナは間違いなくボクが大好きな彼のもの。嗚呼、なんて幸運なのだろう!
「お前いつもそんな長袖のコートで暑くないのかよ…見てるこっちが暑苦しい」
「まあね。日向クンは夏が嫌いなようだね」
「まあ…どちらかといえば嫌いだな。暑いのは苦手だし」
「あはは、雨でも降れば少しはマシになるかもしれないのにね。ところで、その猫はどうしたんだい?」
ボクはのようなゴミ虫が人類の希望たる日向クンと会話しているという幸福に興奮していて気づかなかったが、彼の腕には黒猫が抱かれていた。
「ああ、こいつ?さっき道端で拾ったんだけど、怪我しててさ。田中の所にでも連れていこうかと思って」
「それは大変だね。君も熱中症に気をつけてね」
それじゃ、と彼と別れようとした瞬間、
日向クンの腕からするりと抜け出した黒猫は、怪我をしているにも関わらず悠々と横断歩道へと進んで行く。
「あっ、おい、お前怪我してるんだから大人しくしてろ!待て!」
そういって猫を追いかける彼が飛び込んでしまったのは、赤に変わった信号機。
「日向くーー」
どんっ、ごき、ぐしゃっ、めりっ
嫌な音がボクの言葉をさえぎる。
血飛沫が雨のように降り注ぎ、彼の真っ白いシャツと顔を汚していく。まるで天気雨のようだ。
横断歩道に飛び込んだ瞬間、日向クンはトラックに撥ねられ、轢きずられた。
その事実を受け入れるのには時間を要した。
何故彼が倒れている?何故息をしていない?何故急激に体温が下がっていく?何故目を開けない?何故辺りが鉄錆の臭いで充満している?何故周りが騒がしい?
「ーー何故、彼は死んでいる?」
その問いを口にした瞬間、ボクに重い現実がのしかかる。
『日向創は死んだ』『日向創は死んだ』『日向創は死んだ』……。
そう繰り返す誰かの声が頭の中でリフレインする。
「う…うわあああああああああああ!!嘘だ!こんなの嘘だ!嘘だ嘘だ嘘だ嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘!悪い夢だ!!」
街路樹も街灯もガードレールも道端の百貨店も公園も全部夢のような嘘臭いものに見えてくる。
「ねえ…目を覚ましてよ…日向クン!!」
ボクの叫びとは裏腹に、彼はいつまで経っても瞼を開けてくれない。
道路の先に目をやると、ゆらゆらと揺れる陽炎が「嘘じゃないぞ」とボクを嗤っているような気がした。
これが君と偶然会えたという幸運の代償なら、ボクは自分の才能を恨みに恨んで自殺するだろう。
絶望に満ち溢れた昼下がり、頭をかき回すような煩い蝉の音を聞きながらボクの意識は途絶えた。



鳴り響くデジタル時計の音で目を覚ました。
ベッドから起き上がり、今は何時か確認すると「8/14 12:01」を表示しているディスプレイ。
「...こんな時間まで寝てたなんて絶望的だね」
そう呟き、身支度を整えて家を出る。
「さて、何処へ行こうか」
そんなことを考えながら歩いていると、公園で愛しい彼と出会う。見間違えるはずもない彼だ。
「やあ、日向クン」
声をかけるといつも通りの会話がなされる。彼が眉を顰め、ボクが自分を卑下して、彼がそれをなんともいえない顔で受け流す。嗚呼、なんて幸せなのだろう!
ーーでも、少し不思議だな。昨日見た夢を思い出した。あの最低最悪の悪夢。何となく嫌な予感がしたのでボクは彼に告げた。
「ねえ日向クン」
「何だ?」
「嫌な顔をしつつもボクの話に耳を傾けてくれる君はやっぱり最高だよ!…っと、そうじゃなくて。もう今日は家に帰ったほうがいいと思うよ」
「はぁ?何でだよ」
「ちょっと、嫌な予感がするから…」
夢を見たからだなんて言ったら笑って相手にされないのがオチだろうから、口が裂けても言えない。
「嫌な予感…?まあ別に、もう帰ろうかと思ってた所だけどな」
「それなら送っていくよ」
「俺のことを送って何が楽しいんだよ…」
そう言いながらも彼はほら行くぞ、と付き合ってくれる。だからボクは彼が大好きなんだ。
道を抜けると、なぜか周りの人は口をあんぐりと開けて上を見上げていた。
「みんなどうしたんだろうな?」
それが日向クンの最期の言葉だった。
ひゅうん、どすん、めりっ
轟音を響かせながら落下してきた鉄柱が彼を貫いて地面へ突き刺さる。
どこからか劈く悲鳴が木々の隙間で空回りして反響する。
悲鳴と血飛沫が天気雨のように降り注ぐ。
「ーーえ?」
これじゃあまるで昨日の悪夢じゃないか。これは現実だろう?
それを嘲笑うように陽炎が「夢じゃないぞ」とボクに囁く。
呼吸が苦しくなり、眩んでゆく視界に最後に映った彼の横顔は、笑っているようだった。



ーーそうやって何度世界が眩んでも、陽炎が嗤って彼を奪っていく。
ーー繰り返して何十年目だ?いや何百年、何千年目?
ーーこんなよくある使い古されたSF無限ループの物語なら、結末はきっと一つだけ。
ーー繰り返した夏の向こうに、君の笑顔と答えが見えた、ような気がした。
ボクの不幸と引き換えに君が幸せになれるのなら、未来へ進んでくれるのなら、ボクのやるべきことはたった一つ。
「ーーボクと勝負してくれるよね?」



「日向クン、危ない!」
「ーーッ狛枝!?」
日向クンを押しのけ、代わりに横断歩道へ飛び込む。
きいーっ、どすん、べき、ぐちゃり
瞬間、トラックにぶち当たる。嗚呼、そこかしこが痛いなあ。
血飛沫の色が彼の瞳と瞳に映るボクの体に乱反射する。
「こ、ま…えだ…!?」
心底驚愕していた彼の顔はやがて絶望に歪んでいく。
ーーそんな顔をしないでよ、君はみんなの希望なんだから。
そう声をかけようとしたものの、体じゅうの痛みに声を出せなかった。代わりに微笑みかければ、彼の瞳には涙が溜まって行く。綺麗だな、食べちゃいたい。と不謹慎なことを考えてしまった。こんなことを考えているなんて知られたらきっと殴られるんだろうな。
と、そこで文句ありげな陽炎に気づき、勝ち誇ったような顔で
「ざまあみろよ」
僕の勝ちだ、という意味をこめて忌々しい陽炎を最後の力を振り絞って嘲笑ったら、残念ながらそろそろお別れのようだ。
実によくある、平凡でとるに足りない夏の日のこと、そんな『何か』がここで終わりを告げた。



目を覚ました、8月14日のベッドの上。
少年はただ、
「また、駄目だったよ」
ーーごめんな、狛枝。
そう呟くと、ひとりで猫を抱きかかえながら涙を流した。








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