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5秒後に弟が扉をぶち破って乱入してくる


「…ま、待てメフィスト!やっぱり止めとく!」

ハッと我に返った燐が叫ぶ。だが時はすでに遅い。暴れようにも、燐はすでにメフィストの腕の中に捕らわれていた。
純粋な力比べならまだ燐にも勝ち目はもしかしたらあったかもしれないが、この間近な距離では身長差が障害となり満足に暴れられない。
ついでに言えば燐に抵抗しようという意思が宿ったのもつい3秒前なので、全てが圧倒的に後手となった燐には不利としか言えない状況だった。

「待ちません☆そしてその意見は却下です。ほら、燐?此方を向いて下さい。」

わざと思い知らせて追い詰めるように、ゆっくりじわじわと近づいてくるメフィスト。
逃げたくても逃げるに逃げられない燐は最後に残された抵抗の手段として、顔を背けて少しでも離れようと足掻く。ぐいっと手でメフィストの顔を押しのけてもみるが、さっぱり動かない。

「絶対、嫌だ…!!って、何をっ」

メフィストの方を見ずに抵抗を続けている燐は、自分の手のひらに感じた柔らかい感触にびっくりして背けていた顔を反射的にメフィストの方へと向ける。柔らかい触感はメフィストの唇だった。メフィストの顔を少しでも遠くに押しのけようとした燐の手にそっと口付けていたのだった。

「やっと、こっちを向いてくれましたね。」

にんまりと心底楽しそうに口元を歪ませたメフィスト。それを見てうっかり、背けていた顔をメフィストの方へと向けてしまった迂闊さを燐は思い知って慌てる。今度は逃げようとする前に、メフィストの左手で顎を掬われて、捉えられる。これで完全に逃げ道はなくなってしまった。

「なあ、メフィスト?冗談、だよな?」

「残念ながら、本気ですよ。いいじゃないですか、キスくらい。」

青ざめた燐は、すぐ間近にあるメフィストへ問いかける。こんなに近くでメフィストを見るのは初めてで、不覚にも黄緑色をした目が綺麗だなあ、睫毛も結構長いのか。なんて場違いなことを考えてしまう。

「メ、メフィ…っ!」

「目くらい、瞑ってみたらどうです?」

別にメフィストの言うことを聞くわけではないが、迫り来る未知の感覚にほんの少し怯えて、たじろいだ燐はぎゅうっと強く目を瞑る。そんな頑なな燐の目元へそっとメフィストはくちづけを落とした。唇にされるとばかり思っていた燐はビックリして目を開ける。
その瞬間を狙って、メフィストは、今度こそ燐の唇へ、己の唇を落とす。柔らかく、触れた唇は温かかった。

強奪は優しく甘く。

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